Que ma vie est belle!

私とは、美しいもの、美味しいもの、楽しいものの集合体。

マゼール指揮「展覧会の絵」@ロイヤルフェスティバルホール、ロンドン

2009-12-04 00:00:00 | コンサート

ロリン・マゼール指揮、フィルハーモニア・オーケストラでコダーイ「ガランタ舞曲」、チャイコPf協奏曲、ムソルグスキー作曲ラヴェル編曲、組曲「展覧会の絵」を聴いた。

マゼール、上手い。あと3ヶ月で80歳だというのに。舞台袖から指揮台までを歩く様子は「大丈夫かな、この人?」なのだが、なぜか指揮が始まると、断然元気になる。多分、とても指揮すること、まとめることが好きなのだろう。主要楽器の入りは必ず指差しで指示。音を急に止めるところ、小さくするところの身振り、手振り-背中を見ていると曲が聴こえる。

指揮者とシェフは似ている、と思う(フランス語で指揮者はchef d'orchestreなので当たり前かもしれないが)。素材やレシピは同じでも、誰が作るかで出来上がる料理がかなり違うのと同様、音楽もオケや曲目が同じでも指揮者によって聴こえてくるものはまるで違う。シェフが塩の振り方一つ、熱の入れ方一つで、大変素晴らしい料理を作り上げるように、曲の構造の捉え方、それを明確にするための表現-クレッシェンド、デクレッシェンド、アクセントのつけ方-等、何ら特別なテクニックをオケに要求せずともポイントを抑えるだけで、こんなにもメリハリのある、また今まで聴いていた時には気がつかなかったような音楽を聴かせてくれる。これだから、何回演奏会に行って何度同じ曲を聴いても、少しも飽きることがないのだ。

ピアノソロはシモン・トルプチェスキ。30歳のマケドニア人ピアニスト。テクニックも素晴らしく、指が良く動く。大変大柄で、この曲やラフマニノフなど、体格勝負と思われる曲を容易に弾きこなせそうに思われる。先日のマツーエフなどと同様だ。注文と言えば、第1楽章のカデンツァがしっくり来なかったことと、第2楽章の入りの音をもう少しやわらかくしてもらえると良かった点だろうか-ちょっと尖り目の音で、びっくりしてしまった-ピアノの音が美しく聴こえるホールなだけに少し残念。

「展覧会の絵」。席は1階後方中央だったが、金管やパーカッション(特にシンバル)の聴こえが良くなかった。もっと華やかで厚みのある音が聴こえるかと期待していたのだが期待したほどの音の波が押し寄せることはなかった。それでもラヴェルのオーケストレーションの美しさは、まるでシャンパンの泡がはじけるような、美しい花火が舞うような、そんなイリュージョンを見せてくれた。

そうそう、マエストロ・マゼール、全ての曲を暗譜で指揮。Hさん、やっぱり暗譜は必要条件(十分条件ではない)のように思われますが、いかが?