僕は初演も再演も見ているから、これで3度目になるので、免疫はできているけど、初めてこんな芝居を見せられた人は絶対戸惑うだろう。しかも、今回はスペシャル版で、芝居自体よりも、芝居の途中で劇場内に家を建ててしまうのだ。終わった後は再び壊して、更地にしてしまう。ウイングフィールドは、元はオーナーである福本さんの自宅だった。ビルの4階部分を住居としていたらしい。その当時の間取りを再現して、 . . . 本文を読む
丸尾丸一郎のオリジナル台本を得て、戒田竜治がそれを満月動物園の作品として仕上げる、とても豪華な作品。いつもの戒田さんとはひと味もふた味も違うテイストの作品にはなった。だが、それがあまり上手く機能していないことも事実だろう。
ミステリータッチで猟奇的な台本を、ロマンチックに仕上げたため、そこに齟齬が生じる。どちらにも徹しきれない中途半端さが作品を欲求不満なものにして . . . 本文を読む
モンスターが語る3つのお話と、その先にある少年の真実。4つの物語を通して、母の死という事実を受け入れられない少年の「心の旅」をファンタジーとして描く。これはもう一つの『みつばちのささやき』だ。あの映画の少女とモンスターの話が、少年とモンスターの話として置き換えられた。もちろん、お話自体はまるで別物なのだが、その底を流れる想いは重なる。どちらもスペイン映画という共通項は偶然ではないだ . . . 本文を読む
久々の横山拓也、作、演出作品。Iakuでは、演出は上田一軒に任せることが常だったので、それはそれでいいのだけれども、今回、横山さんが演出することで、どんなふうに上田演出と差をつけるのか、それが楽しみだった。その結果、だが、期待通りの新鮮さで、実に面白かった。
横山さんは上田さんよりも繊細だ。だから、壊れやすい。そんな危うさが作品の力になればいいが、なかなか微妙。今 . . . 本文を読む
この作品は、ストーリーに起伏がなく、お話に意外性もない。淡々と目の前の事実を積み重ねていくことで見えてくるものを描く。だから、これはとても難しい芝居だと思う。
障害を持つ子どもたちを収容する施設が舞台となる。そこにやってきたひとりの少年が、多重人格の少女と出会う。彼は人に触れられるのを恐怖する。そんな彼が彼女を守るため、自分から他者に(彼女に)心を開くことになる。 . . . 本文を読む
とてもよくできている。このバカバカしい設定を、安直に見せるのではなく、とことん徹底してやり尽くしているから、素直に楽しめる。あきれることなく、青春のキラキラを、これでもか、これでもか、とやりすぎるまで、やる。そんなふうにして、ちゃんとみせつけてくれるのが潔い。(この人たちは確信犯なのだ!)だから、見ていて腹が立たない。現実ではこんなこと、ありえない、と誰もが知っているし、突っ込みど . . . 本文を読む
これはかなり不思議な作品になった。3人芝居だけど、1人芝居のような感触。1人の人間を3人が演じるわけではない。だが、ここにいるのは、ひとりでそれが2人になり、再び1人になり、いなくなる。この場所が現実なのに現実ではないような。そしてこの悪夢のような現実の中で、死んでいく。
幻想的な空間で(舞台美術が凄い。衣装で作った空間なのだ)極限状態のサバイバルが展開する。食べ . . . 本文を読む
最近見て、ここには書いていない10本の映画
『美女と野獣』
公開から2ヶ月近く経つのに、まだ大ヒット中のディズニー映画をようやく見た。オリジナルのアニメ映画はあまり好きではない。数年前にはフランス映画でも見た。(これは、なかなか、よかった)そんなこんなで、今回、満を持してのディズニーによる実写映画化だ。2時間10分の大作になった。さすがディズニーだ。夢のある楽しい映画になった。 . . . 本文を読む
7人が7人とも、とてもいい。(僕が見たのはAチーム。Bチームとは3人のキャストが違う)この作品は台本がまず素晴らしいのだけど、それを生かすためには、役者のアンサンブルが命だ。この会話劇の成否はそこで決まる。Iakuのオリジナル版は絶妙のキャスティングだったが、劇団大阪も見事だった。個々の役者の力量が遺憾なく発揮され緊密な空版を作り上げた。演出の小原延之さんは彼らの関係性を上手く絡ま . . . 本文を読む
今日見た2本はどちらも老人問題を扱っていて、これらを続けて見たのはハードだった。自分も認知症気味の母を抱えて、彼女の現在と寄り添っているから、これは他人事ではない。
前者は喜劇というパッケージングで、ソフトに高齢化社会の諸問題を扱う。老齢に達した山田洋次が自分たちの問題として取り扱う。かなりきついことを描く。笑わせるのんきな映画のように見せながら、見ていられないく . . . 本文を読む
15年前の中学生の頃に還る大人たち。そこで時間が止まったまま。見た目は十分に大人なのに、そこを極端に強調するため、40代、50代の役者たちが30歳を演じている。そのいびつさが笑えるのだが、(特に森本研典さんの30歳は厳しい)彼らの真面目な子供芝居がとてもいい。だから、だんだんそんな彼らの世界に取り込まれていく。30代になろうとする彼らは、本当はまだ十分には大人になってはいない。
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今回は3つのキャラクターを演じる。メニューは日替わり。彼女の十八番を披露する。大阪公演、初日のメニューは、とろくさい新人の接客する姿を淡々と見せていくカフェの店員、スマホの使い方の指導をしつつ、外国人旅行者にバス乗り場へ誘うおせっかいな大阪のおばはん。そして、帰省した息子の朝ご飯を出すオカン。
いつものようにわかりやすいキャラクターをパターンで見せていくのに、彼女 . . . 本文を読む
この小さな小説は、(大きな小説という言い方もヘンだけど、これも実にヘン)この世界のかたすみで、ひっそりと息を潜めるように生きる、たったふたりの毎日を静かに切り取るだけ。行助とこよみ。足の不自由な行助が、パチンコ屋に寄生するように店を出す、美味しい鯛焼きを焼くこよみと出会う。
やがて、彼女は交通事故に遭い、昏睡状態になる。彼は毎日見舞いに通う。やがて、目覚めた彼女な . . . 本文を読む
父親が倒れてしまい、いきなり実家の苺の面倒を見なくてはならなくなったグラフィックデザイナーの長男が、これまで大嫌いで逃げてきた農業と向き合うことになり、連鎖反応で起こった、家族崩壊の危機にも直面し、そこから新しい家族のあり方、自分の生き方を見いだしていく。よくあるハートウォーミングなのだが、読んでいて、目が覚めるような新鮮な感動を受けた。
自分が信じてきたものに対 . . . 本文を読む
実は公開初日にこの映画を見ている。だからもう2週間になるのだ。とても素敵な映画だった。(なのに、見た、と言うことだけで満足して、書くを忘れていた!)
湯浅政明監督は4月の『夜は短し歩けよ乙女』に続いて、2作品連続のスマッシュヒットを飛ばしてくれた。特にこちらは、大作仕様で、堂々たる作品。宮崎アニメの傑作トトロとポニョをミックスさせたような作品で、さらにそこの破壊的 . . . 本文を読む