習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『白夜』

2012-05-24 19:53:04 | 映画
 小林政広監督がこんな恋愛映画を撮るなんて、どういう心境の変化なのか。頼まれたから仕方なく撮ったのか。しかも、低予算でとても安易に作られてある。ロベール・ブレッソンの同名傑作映画を視野に入れているのは、当然の話だろうが、ここまで素人映画のように下手に作ったのはなぜか。

 しかも、それでおもしろければそれだけでいいのだが、まるでつまらないから、どうしたらいいか、と思う。途中で見るのをやめようか、と思ったが80分ほどの映画だし、何か最後にあるかも、なんて思って我慢したが何もなかった。EXILEの眞木大輔と、吉瀬美智子が主演する。登場人物はこの2人だけ。リヨンが舞台で、橋の上で出会って10時間。そこに2人の男女の濃密な時間が描けたのならいいのだが、まるで何もない。どうなってるんだ、この映画は。

 異国でたまたま出会った見知らぬ2人の日本人。ここは別に特別な観光スポットではないようだ。たまたまそこを通りがかった男と、たまたまここを待ち合わせに選んだ女。ただ、そこが外国で、懐かしさからちょっかいを出す男と、ひとり思いつめたように感傷にふける女。ドキュメント風に、長まわし、手持ちカメラで、撮られる2人のやりとりには、なんの意味もない。この2人のドラマを描くのではなく、カメラを持って、ただその瞬間を撮影しただけ。こんなのは人に見せるようなものではない。写した人が、自分たちだけで楽しむプライベートフィルムでしかない。

 海外の、観光地ではない場所をフラフラ歩くのは好きだ。そこで生活している人たちの目線で過ごす時間は、まるで現実感がなく、別の人生を生きている気分にさせられる。普通ならこんな場所にいるはずがない。でも、たまたまそこにいて、たまたまそんな時間を過ごす。そこにはなんの意味もない。そんなふうにして、過ごす時間は、僕を不思議な感覚にいざなう。それは海外である必要はない。日本でも同じだ。知らない町の知らない場所。なぜ自分がそこにいなければならないのかさえ、定かではない。偶然としか、いいようがない。それは旅行ですらない場合もある。クラブの試合で行った町で、試合が終わった後、散歩するなんてことは、よくあることで、時間があれば、近くの駅から一つ先の駅まで目的もなくフラフラする。そうすることで、いろんな出会うはずのない風景と出会えるのが楽しい。

 この映画も、せめてそんな風景でも見せてくれたなら、よかったのになぁ、と思う。この映画には、まるでお話を語る気がないのなら、それくらいしてくれてもいいじゃないか、と思った。リヨンなんて行ったことないし、そこを2人と一緒にフラフラ散歩するだけの映画でよかった。なのに、2人はどこにも行かずに橋の上で、いつまでもいる。それじゃぁ、つまらない。「ちょっと一緒に観光でもしないか?」と男に誘われて、ここを離れるシーンはあるが、それだけで、どこに行ったのか、描かれない。せっかく「ようやく話が始まる!」と期待したのに、がっかりだ。しかも、最後。あれはなんですか? 自殺ですか。なんで? 意味ないし。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『RAILWAYS』 | トップ | 『街角的小王子』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。