ドラマとしてのメリハリがない。描こうとしていることが中途半端で、観客にまで伝わりきらない。興味深いエピソードが満載だし、もう少し掘り下げたなら、きっとおもしろくなる。なのに、それをあっさり見せてしまうので、1本のドラマとして繫がらないのだ。残念な仕上がりだ。だが、最近の若手劇団の中ではかなりおもしろい集団なのではないか。今後がとても楽しみだ。
作、琳宏。演出、野倉良太。彼らは敢えてフラットな見せ方をとることで、この作品を立ち上げようとした。ここに描かれてある状況を、「傍観者として見ている僕ら」という距離感の中で描こうとした。だが、その結果、芝居が描こうとするものが、観客にまでは届かない。
宗教団体内部に於ける大量刺殺事件を通して、彼らは一体何を信じ、何に裏切られたのか、が描かれていくはずだった。
それをこの教団の様々な人たちの気持ちが、新しくここに入信した女と、彼女に導かれた雑誌記者の視点から描いていく。もちろんドラマはそんなにも単純ではなく、劇作家が書いた戯曲世界という外枠も用意され、その作家が見た妄想という形のもなっている。彼が執筆していると邪魔が入るというお決まりの展開もまた用意されている。入子型の構成だが、個々のエピソードは独立し、登場人物の主観になったりもして、視点は安定しない。
ドラマが核心に踏み込もうとするたびに、わざとはぐらかされて、話はリセットされ繰り返されていく。外部の人間には内部の事情なんてわからない、とでも言わんばかりだ。
事件を起こした女の内部に迫るわけでもない。空虚な演説を繰り返す教祖は繰り返し何度も誰とも知れない男に刺殺される。この教団には本当は何ひとつ信じるに足るものはない。
描こうとしたことも、その方法論も正しいが、それに見合うだけの技術がなかったから、芝居としてはもどかしい仕上がりとなった。個々の役者たちもなかなかいい。それだけにそれを活かしきれなかったのが惜しまれる。
作、琳宏。演出、野倉良太。彼らは敢えてフラットな見せ方をとることで、この作品を立ち上げようとした。ここに描かれてある状況を、「傍観者として見ている僕ら」という距離感の中で描こうとした。だが、その結果、芝居が描こうとするものが、観客にまでは届かない。
宗教団体内部に於ける大量刺殺事件を通して、彼らは一体何を信じ、何に裏切られたのか、が描かれていくはずだった。
それをこの教団の様々な人たちの気持ちが、新しくここに入信した女と、彼女に導かれた雑誌記者の視点から描いていく。もちろんドラマはそんなにも単純ではなく、劇作家が書いた戯曲世界という外枠も用意され、その作家が見た妄想という形のもなっている。彼が執筆していると邪魔が入るというお決まりの展開もまた用意されている。入子型の構成だが、個々のエピソードは独立し、登場人物の主観になったりもして、視点は安定しない。
ドラマが核心に踏み込もうとするたびに、わざとはぐらかされて、話はリセットされ繰り返されていく。外部の人間には内部の事情なんてわからない、とでも言わんばかりだ。
事件を起こした女の内部に迫るわけでもない。空虚な演説を繰り返す教祖は繰り返し何度も誰とも知れない男に刺殺される。この教団には本当は何ひとつ信じるに足るものはない。
描こうとしたことも、その方法論も正しいが、それに見合うだけの技術がなかったから、芝居としてはもどかしい仕上がりとなった。個々の役者たちもなかなかいい。それだけにそれを活かしきれなかったのが惜しまれる。