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映画・演劇のレビュー

テラヤマ博『星の王子さま』再見

2008-03-07 12:38:19 | 演劇
 初日から12日を経て、6ステージ目での上演を再見した。この日はアイホールでの公演(『hunter』)を終了させた平林之英さんも舞台に参加しての上演になっていた。ラストシ-ンで、主人公(蔵元真見)が歌う場面に平林さんも登場する。

 もう一度見てよかったなと思う。あの学芸会的上演だった初日とは比べものにならないくらいに作品はよくなっていた。この12日間で、役者たちは自分たちの芝居に自信を深めてきたということも大きく影響している。ロングラン公演は公演回数を重ねるごとによくなっていく場合が多い。この芝居が、というか今回のこの3本がすべてそうであろうが、オーディションで選出された即興混成チームであることもあり、尻上がりにチームワークがよくなっていくのは当然のことだと思う。演出面でも、かなり手直しがなされており、まとまりのいい作品に仕上がってきた。

 だが、だからといって初日はダメで、この日がよかったと断言しているわけではない。初日の日にあったあの「やけくそのような、緊張感」は、またと味わうことの出来ない雰囲気であったことも事実なのだ。ライブでしか味わえない醍醐味があの日の上演にはあった。完成度が上がることと引き換えに失うものもある。そんなことはわかりきった事実だろう。

 大塚さんの提示した「見えないものを見る」というテーマは、このロングラン上演の中で少しずつ姿を変えて進化していっている。芝居の台本とか、演出プランが大幅に変わったわけではない。しかし、上演を重ねていくことで新しいものが見えてくる。役者たちのアンサンブルもとてもよくなってきて、見やすい芝居になってきているのも嬉しい。初日のアフタートーク時に「学芸会並みの芝居」と喋ってしまったが、撤回します。みなさんよくやっている。

 ラストで客電が点き、舞台のバラシが始まる中、取り残されていく主人公を描く場面が上手く機能していたのもいい。あの展開は寺山がよくやることなのだが、嵌ったら観客に衝撃を与えることが可能だ。高校生の頃初めて『田園に死す』のラストを見た時震えたのを今でも鮮明に覚えている。

 
 

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