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映画・演劇のレビュー

Studio Linen 『LINE 線についての短編集』

2023-04-03 09:05:08 | 演劇

4月になった。新年度のスタートだ。同時に春演(大阪春の演劇まつり)も始まった。3年振りの本格開催。今回は久しぶりに若手劇団の参加もある。8劇団参加で7月まで。

今年のトップバッターは大阪芸大の映像学科在籍中のこの集団である。これが旗揚げで、学内の試演会から始めて、いきなりの埼玉、大阪ニ都市公演。当然だが手慣れてなく初々しい感じが、いい。芝居への先入観がなく、なんでもやろうという感じ。芝居の段取りは悪いけどそこは構わない。そんなのはいくらでもこれから修正できる。
 
今回は短編集でなんと10本。それぞれの狙いはわかる。でも、中途半端だから、まるで伝わってこない。気持ちばかりが先走って内容がわからない。(いや、わかるけど、伝わらない)10本で1時間50分。なかなかのボリューム。特につなぎの段取りが悪いが一応テンポよくは進む。ただ単調。自分たちもわかるから、5本でインターミッションあり。オープニングやエンディングはご愛嬌。
 
「線」をテーマにした連作なのに1本ごとの作品につながりがない。独立したお話でも共通するものがあり、最後まで見たら「何か」が見えてくるというスタイルがあってもよかったのではないか。観念的なお話の「観念」がどこにあるのかもわからない。思い付きを作品に高めるためには何らかの答えを用意するのも大事ではないか。でもそれはオチではない。「線」とは何か、作者の答えが欲しい。それと、各エピソードの長さ。もう少し短くしてもいいのではないか。説明不足なのに、やけにムダが多い。緩急が欲しい。
 
2本目(『境界線』)の劇場に遅れて入ってきたふたり連れの女の子たちが舞台上に上がってきて自己紹介を強いられるエピソードはかなり面白いが、怖さがないから、途中からダレてしまう。思い付いた発想を作品に仕立てていく段階でのひねりが欲しい。それはこの話だけではない。全体についても言えることだ。いつも同じパターンなのである。やりたいことが伝わりきらない。やりたい気持ちばかり先走って中身が伝わらない。怖さと笑いのバランスがうまくとれたならかなり面白い作品になったはずなのに残念だ。

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