「咲田とばこ 劇団ラストステージ」と、チラシの隅に、黒背景に黒字で極力目立たないように書かれてあるのを発見したとき、そのいじらしいほどのひっそり具合に、驚く。(最初は気付かず、見逃していた)なんだが、はせさんらしい。
今回は咲田さんがタイトルロールで、主演。でも、敢えて華々しく彼女に活躍してもらう、わけではない。いつもと変わりなく、でも、今回キャスト数を絞ったぶん、彼女だけでなく、みんなが生き生きしている。(でも、そのせいで、ダブルキャストになっている。僕が見たのは咲田さんの妹役が中杉さんのバージョン)
とても楽しい作品に仕上がっている。いったい何が起こっているのか、先が読めない展開なのに、とてものんびりしていて、ドキドキしない。(でも、そこが魅力、ってなんだか不思議でしょ)よくわからないことを心から楽しめる芝居になっているって凄いことだ。
主人公の右近の持つ不思議な力が、どこにも行き着かないのがいい。ストーリーはある。謎も解明する。エスパー同士の対決もある。(姉と妹の)しかし、それがバトルではなく、久しく会わないでいた姉妹の再会となり、妹の死を看取る話になってしまう。くすっと笑えるシーンがたくさんあり、難しい芝居ではないけれども、謎だらけで、それがきちんとわかるところも、わからないままのところも、なんだかバランスよく散りばめられてある。
咲田さんのラストステージにふさわしい、いかにもジャブジャブらしい作品になった。作品全体の力の抜け方がとても気持ちよく、さらにはラストで爽やかに旅立っていく(妹のお葬式なんだけど)姿もとてもいい。