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映画・演劇のレビュー

ハネオロシ『失笑(笑)』

2017-12-19 21:49:52 | 演劇

 

2時間50分の大作。(途中休憩10分含む)正統的2部構成で、1部のラストで、ここからお話が始まる、みたいな煽りもある。サーカス団の話と現実世界が交錯して、二つの世界に同じ人物がいて、それを主人公のユカリ(本当ならこの役もダブルで演じる予定だったらしい)以外は別人が演じる。並行世界が重なり合い、一つの世界を形作る。

 

これだけの大作を若いスタッフ、キャストが見事に作り上げたことに感動した。ちゃんと世界観を確立させている。自分たちのスタイルを持ち、見せたいものも明確だ。技術的にも問題はない。数年前にウイングカップで見た作品(たぶん旗揚げ公演だったはず)は、確かに勢いは感じたさせたけど、荒削りで、まだまだ作品の体を成していなかったのに、これは実に面白いし、芝居として安定感もある。この数年間で急成長を遂げたようだ。それって、なんだか嬉しい。若手で勢いのある劇団を発見したという喜びがある。

 

お話がまず、異形のモノたちによる、けれん味たっぷりの世界を堂々と展開しているのもいい。さらには、犯罪者を主人公にした心の闇を描く作品なのだが、主人公を中途半端にはしないのもいい。彼の心の中にある悪夢をサーカス団の話を通してファンタジーとして昇華する。それが現実のドラマとリンクしていき、ラストに至る。彼の内面を説明するのではなく、ただその狂気を見せる。姉とのお話も、(僕としては)もう少し突っ込んでもらえた方が面白いのだが、敢えて突き放したような見せ方で終わる。そこに作り手の覚悟すら感じる。だらだら長くするのではなく、そこには3時間に手の届く作品にする意味がちゃんとあるのもいい。

 

内容としては、ちょっとクロムモリブデンのような芝居なのだけど、青木さんのような才気は感じない。それよりも、ただのエンタメに近い。でも、このダークファンタジー自体は悪くない。この作品以降、彼らがどういう展開を見せるのか、興味深い。大きく化ける可能性もある。


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