夏の恒例、すかんぽ長屋の新作。作、演出は神原くまこ名義で、久々に神原さんの90分長編作品がうれしい。もちろん今の神原さんは無理はしないで、確実に自分のテリトリーで芝居を作っている。その余裕あるタッチが心地よい。お約束のストーリーだが、ほんの少しゆったり作ってあるから、のんびりと安心して見ることができる。走る走るにはならないのがいい。
いつもの主役、安太郎(島上とおる)は今回は脇に回る。主役は若いふたり。素浪人回向院修羅之介(上坂留叶)と花魁の灯火(山田百合香)。幼い頃別れ別れになっていた彼らが再会して、死を選ぶまでのドラマは普通なら「悲恋もの」になるけど、「心中もの」の変形バージョンで想いを貫く為にふたりは自死する。この世で添い遂げることが叶わないなら、死んで結ばれることを願うというパターン。それをすかんぽ長屋の面々がサポートするというパターン。お決まりの展開がテンポよく進み、クライマックスに突入していく。
最近の定番になっている信天翁よりは幾分広い舞台で斬り合いのシーンもふんだんに盛り込み、余裕で90分を走り抜ける。神原さんは多彩なキャストを軽く捌いて、ほんの少し自分の出番も織り込む。浅草寺、吉原、最後はもちろんすかんぽ長屋を舞台にお話をすっきり3場で構成するのも見事。
ちゃんとお約束を楽しむ90分。今回もしっかりたくさんの人が死ぬ。だけどハッピーエンド。