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映画・演劇のレビュー

『逆転裁判』

2012-02-29 20:07:30 | 映画
 時間の関係で(芝居が始まるまでの時間にぴったり合う映画はこれしかなかった)仕方なく見たのだが、これが歴史に残るぶっとび映画だった。バラィティショーでももう少しまともなことをしそうな気がする。常識のレベルを遥かに超越したいいかげんさ。こんなバカな話を大の大人が映画化していいのか。いくら三池崇史だからってこれはあんまりではないか、と思う。だが、彼は「ドーンとこい!」で、これを引き受ける。冗談ではなく本気でこのバカバカしさの極致を行く世界を実写映画化する。原作は人気ゲームらしいが、ドラマとして立ちあげることは不可能な設定だ。この映画を見る限りはこんなのはありえない。主人公たちのコスプレも笑うしかない。まともな役者なら引き受けないだろう。なのに、ちゃんとした役者が真面目に演じている。ふざけると収拾がつかなくなる代物だ。慎重にならざるえない。

 映画は本気でとことんふざけている。主人公の弁護士「なるほど」くんは鉄腕アトムのような髪型で、その他すべての人たちがそれぞれ非常識にもほどがあるようないでたちで登場する。

設定がいいかげん、見せ方もいいかげん、話もいいかげんと3拍子そろっている。だから、何も見るべきものは何もない。いや、そうではない。見所はこのどこまでもバカバカしいだけのふざけた映画をちゃんと作るという使命感に燃えた三池崇史の情熱か。何を与えられてもやり切ってしまうそのバイタリティーにはいつも脱帽させられる。ほんまにようやるわ、と思う。しかも嬉々として楽しんでいる。ふざけているのではなく、真剣なのだ。

昨年の三谷幸喜の『すてきな金縛り』も大概ふざけた法廷映画だったが、これはその比ではない。大ヒットした映画だが、あれも酷かった。幽霊に証言させるなんておバカな設定で、最後まで引っ張るのだから、それはそれで凄いと言えば凄いのだが。

 さて、これである。この映画には3日間で判決を下すという予審裁判(でしたっけ?)なんていう設定も不要だ。なんでもありの世界だから、そんなルールなんて御座なりにされる。このバカな話でとことん遊んでやろうというのが、三池のスタンス。ふざけるのではなく、徹底してふざけた映画を本気で作るのが目的だ。観客を楽しませるためなら、何でもやるという覚悟である。でも、そこには悲壮感はない。彼にはそんなものはないからだ。だらだらだらだら2時間15分ようやる。踊る阿呆に見る阿呆、である。こんなもの、真面目に見ずに、ただバカずら下げて楽しまなくてはしゃぁない。

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