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映画・演劇のレビュー

『デイ・ブレイカー』

2012-01-02 14:06:13 | 映画
 バンパイアが全人口の95%を占め、彼らが支配する世界である地球。人間は絶滅種と化していた。彼らは人間を保護する政策を打ち出す。しかし、人間は、彼らの奴隷にはならない。そんなのはまっぴらごめんだ。だから、バンパイアから隠れて生きる。人間であることの尊厳を失いたくはない。これは『猿の惑星』のバンパイア・ヴァージョンである。

 バンパイアは、人間の血液が無くなれば滅びる。血がなくては生きられないから、もし人間が絶滅したら、自分たちも滅びる運命なのだ。本来なら、もっと早く保護政策興じなくてはならなかったはずなのに、後手にまわった。共存共栄する道を取るべきだったはずだ。彼らは人工血液を作るために必死になっているけど、なかなかうまくはいかない。

 この映画が描くこんな背景はとてもわかりやすくて、おもしろい。後はこの設定を生かして、いかにエンタテインメントとして、組み立てるか、ということに尽きるのだが、実はこの後の展開も含めて、話自体はとても上手いのに、なぜか盛りあがらない。ラストの処理も含めて、ドラマの組み立て方には何の問題もないのだが、見せ方が拙いからだ。ストーリーが充分に広がらないまま収束していく。これではなんか「おもしろいあらすじ」を見ている気分なのだ。要するにせっかくの世界観が生かせなかったということだ。とても惜しい。

 ビジュアルがB級感覚なので、ドラマ以上の驚きがない。オーストラリア映画であることが、そんな結果を生んだのか。いや、そんなことはないはずだ。要は台本と演出の問題で、、わかりやす過ぎて図式的になり過ぎるのがダメなのだ。その結果安っぽくなる。もっと個々の人間を描かなくては、映画として成立しない。人間と、バンパイアとの関係性を政治的な問題、社会構造、彼らの抱く未来像も含めて、この作品世界を精緻に組み立てれたなら、傑作になりえたかもしれない。主人公であるバンパイアの人工血液の研究者イーサン・ホークと、バンパイアから人間に戻った男、ウィレム・デフォーの設定も、あまりに都合よくまとまり過ぎる。

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