習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『青の帰り道』

2020-02-20 18:58:36 | 映画

昨年の公開時、とても見たいと思った映画だ。この手の青春映画はもう満腹だ、と思いつつも、でも、まだまだ新しい風景がそこにあるのではないか、と期待してしまう。わがままだし、きっと贅沢なのだ。うんざりするほど、高校生を描いた青春映画は作られてきている。でも続々と作られる。それだけ需要があるのだ。もっと、もっとそこに何かを見たいと思う。

男女7人の高校生たちの恋愛ものだろうと、思いながらも、まっすぐな一本道を自転車で走る彼らの姿をとらえたポスターに心魅かれた。実はこの映画、高校生が主人公ではない。彼らが群馬のド田舎の高校を卒業したあとの日々が描かれる。最高に楽しかった高校世活を終えた後の傷だらけの5年間が綴られるのだ。そしてエピローグとしてさらにその5年後が追加される。都合10年間の軌跡だ。18歳から28歳という時間。

2008年から始まり、高校を卒業したあとの10年間が描かれる。ここに描かれる7人のたどった日々はある意味ではただの紋切り型でパターンでしかない。だけど、誰もがこんなふうな痛みを抱えて生きたはずだ。目新しいことなんかないし、つまらない、と言ってもいい。自分だけが特別、と思うけど、みんな同じようなもの。共感する、とは言えないくらいにお話はくさい。もう少し、お決まりの展開から逸脱するようなエピソードがあったっていいではないか、といささかうんざりしながら見ていたのだが、もしかしたらそんなこと、作り手のほうが十分にわかったうえでしているのではないか。

特別なんかじゃないけど、自分たちにとってはかけがえのないもの。そんなあたりまえをこの映画は堂々と2時間見せてくれる。そこにはある種、冷めて視線すら感じた。藤井道人監督は感傷過多になりがちなこの設定と距離を保ちながら、冷静に彼らを見守った。こんなにも嘘くさいのに、悪くはない映画だ。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ヲタクに恋は難しい』 | トップ | Plant M『ラズベリーシャウト』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。