ベツレヘムを舞台にして、イスラエルとパレスチナ過激派の戦いを描く映画だ。こういう作品が当然作られる。この切実な問題に映画で答える。戦争ではなく、文化的なレジスタンスを試みる。もちろん、これはプロパガンダではない。一方的で政治的な映画は、観客の胸には届かない。そこにある真実に心打たれる。甘いだけの映画にはなるまい。なってはならない。設定にはいくらか、甘さはある。だが、こういう状況の中で、少年が何をよりどころにして、何を考えて、銃を持つのか、それこそが問題なのだ。
基本的には(そこが微妙な問題なのだが)少年の視点から、すべてが描かれる。それは間違っているかもしれない。大人でだって正確な判断はつかない。しかも、感情的にならざる得ない現実がある。目の前で人が死んで行くのだ。それを見て冷静でいられる人間なんか、僕は信じない。
複雑な政治状況を背景にして、少年の心のざわめくさまが描かれていく。映画はいくぶん派手で、わかりやすい。それはわかりにくい状況を背景にしたからの選択かもしれない。だが、僕はもっと少年に寄り添うほうがいいのではないか、と思う。少し物足りないのは、そういう点ゆえであろう。
イスラエル映画(ドイツ、ベルギーとの合作だが)なんて、なかなか見ることはできない。そういう意味でもこれは貴重な作品なのだが、表面上はアクション映画という体裁をとる。これもまた仕方ないことかもしれない。それでもここに描かれる出来事に衝撃を受ける。それだけでも見るに値する映画だと言える。
と、こんな風に書きながら、やはり僕はこの映画にあまり納得していないんだな、と思う。いろんなことがこれでは中途半端なのだ。