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映画・演劇のレビュー

LINX'S ~03 (ゼロサン)

2011-11-22 20:23:41 | 演劇
 初めてLINX'S を見る。もともとこういうイベントは苦手で、あまり食指はそそられなかったのだが、今回のラインナップには興味が持てた。それとこのイベントを企画立案した石田1967さんの情熱にもそそられた。なぜ、彼がこんなにも芝居に興味を抱き、芝居に駆り立てられるのか。その秘密が、このイベントを見ることで、少しは見えてくるのではないか、なんて思ったからだ。僕も芝居は大好きだが、なんだか今は流されるように見ている気がする。「ただ、好きだから」純粋にそれだけで情熱を傾けるほど若くはない。44歳の「普通のサラリーマン」がここまで小劇場に入れ込んで、演劇プロデューサーを目指すという生き方を選ぶ。そんな彼に賛同し、彼を支える人がいる。そこから産まれたこのイベントを目撃するのは、悪いことではないのではないか、と思ったのだ。

 まぁ、何もそこまで理屈っぽくならなくても、いい。偶然時間が出来た。なんとなく、見たかったから、行く。本当はそれだけだ。まぁ、アドシバとか、30×30(これは曜日の都合で行けなかったのだが)とか、あまり見たいとは思わなかった。短編の可能性を追求するのならいいが、なんだかただの企画物は見たくない。作り手の本気が伝わらなくては見る意味はない。イベントとしての安易な短編芝居は勘弁してもらいたい。今回のこの企画も、正直言うと「ただのお祭り騒ぎで自分たちだけで盛り上がるのなら嫌だな」と思った。そんな気もしないではないから、ちょっと不安でもあった。

 そして、心配はどんぴしゃで当たった。だが、それなのに、嫌ではなかった。不思議だ。これはお祭り騒ぎのイベントでしかない。だが、参加団体がそのことをちゃんと踏まえた上で、だからこそやれることをしている。そこがいいと思う。それはMayの取り組みに象徴される。まずここに来たお客さんを楽しませる。宴会芸すれすれのところで、きちんとプロの仕事を見せる。マダン劇の手法がそれを可能にする。手慣れたものだ。だが、それは観客を舐めた行為ではない。もてなす心だ。だから、気持ちがいい。野村侑志のオパンポンでのいつのもパフォーマンスが炸裂してもかまわない。参加した8団体はそれぞれ自分たちの個性をちゃんと見せている。ショーケースとして、悪くはない。長編作品の世界をそのまま20分に凝縮した伏兵コードと月曜劇団がすばらしい。初めて見た匿名劇壇はぜひ長編を見て見たいと思わされた。Aプロの4作品が断然面白い。(もちろんBプロも悪くはない)

 個々の作品についてはまた、後日書くつもりだが、今回は全体の構成について触れたい。僕が見た最終日はAプロ、Bプロともに3時間強の上演時間だった。これは普通じゃない。20分の芝居の4本立が、どうしてこんな長さになるのか。MCが冗長だったのは事実だが、それだけではない。段取りは悪くはないのに、こうなったのは、イベントを盛り上げるため、みんなが一生懸命になったからだ。その結果あらゆるサービス精神が、ビジネスライクには流れずに発揮され、それがこの長さにつながる。善意が徒になる。だが、それは悪いことではないだろう。見に来た観客はこの長さを楽しんでいる。それにしても凄まじいお祭り騒ぎだった。舞台の熱気に当てられてへとへとになる。見終えたときにはフラフラだった。

 たくさんの人たちに支えられこういうイベントを成功させ、石田さんは今まで以上に演劇にのめり込む。好きだから、好きなことをする。なんだか見ていてこちらまで幸せな気分にさせられた。石田さんの挑戦はこれからも続く。



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