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映画・演劇のレビュー

『mid90s  ミッドナインティーズ』

2023-04-06 21:47:41 | 映画

90年代半ば、アメリカの辺境の町。兄から暴力を振われている13歳の少年がスケボーを通して町の不良たちと交流する。彼らはまだ幼い自分を仲間にしてくれ、いろんなことを教えてくれる。そんな彼らに心を開く。一人は同世代だけど、ほかのメンバー3人はかなり年上。映画の舞台を辺境の町と書いたが、ロサンゼルスらしい。16ミリフィルムで撮った荒々しい画像。ロスなのに画面は重くて暗い。

確かに映画自体も暗い映画だけど、こんな毎日の中で、幸福を噛み締める彼が愛おしい。手に入れたこの彼らとの時間を大事にしたい。大事だから、彼は厳しい母親にしられないように家に帰ると外での気配を完全に払拭する。今ある仲間たちとの関係を大切にしたい。だけどやがて母親に見つかる。
 
映画は主人公の少年だけではなく、彼を見守る青年期から大人になっていく3人もちゃんと見つめ、彼らの不安に寄り添っていく。13歳の少年を見る彼らの優しさは彼に自分たちの過去を重ね合わせているからなのだろう。スケボーで真っ直ぐの車道、その真ん中を走り抜けていく。両サイドは頻繁に車が走る。なんだか危ない。
 
ふたつの事故がお話の転機になる。最初はスケボーで屋根の上の建物の隙間をジャンプして穴に転落。次は車に乗っていて、酔っ払い運転の車が転倒。あの頃、危険と背中合わせの毎日は輝いていた。13歳のチビが背伸びして大人を演じた。90年代の幼い頃、傷ましい日々のスケッチ。
 

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