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映画・演劇のレビュー

『フェアウエル』

2021-10-15 08:45:29 | 映画

オークワフィナ主演のアメリカ映画。彼女は先日見た『シャン・チー テン・リングスの伝説』の印象が強烈なので、彼女が出てくるだけで、釘付けにされる。もしあの映画を見てなかったら、この映画に対する印象は変わったはずだ。せめて、昨年劇場公開時にこれを先に見ていればよかった。それくらいに『シャン・チー』の彼女は主人公のシャン・チーなんかよりずっと印象的だったのである。それって(僕にとっては)渥美清がどの映画に出ても寅さんに見える、というくらいのレベルなのである。

だからこの繊細な孫娘役をこんなにも見事に演じても(それどころか、渥美清と同じように、うまく演じれば演じるほど)映画の描こうとする世界から浮き出てしまう。なんだかとても残念だった。でも、映画は素晴らしい。シリアスではなくコミカル。だけど、胸に痛い。

ニューヨークに暮らすビリー(オークワフィナ)は、大好きな祖母が末期がんで余命数週間の宣告を受けたと知り、ショックで立ち直れない。親族は祖母の余命宣告を本人には隠すことにした。だから、感情がストレートの表に出てしまうビリーを祖母に会わせるのは難しいと両親は判断する。中国での目前に迫った従弟の結婚式に欠席するように言う。でも、無理。彼女は両親より遅れて祖母のところに行く。

中国の結婚式は盛大で親族、友人、その他諸々凄まじい招待客を集めて延々と繰り広げられる。映画の後半はそんな式場でのお話で、それがドキュメンタリータッチで延々と描かれ、圧巻だ。晴れの場で、目前に迫る祖母との別れを胸に秘めて過ごす時間が丁寧に描かれていく。みんなのところにいて、幸せな顔をして(だって、結婚式である)過ごすことが、こんなにもつらい。

アン・リーの『ウエディング・バンケット』に匹敵する秀作だ。でも、何度も言うけど、オークワフィナはケイティにしか見えない。

 


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