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映画・演劇のレビュー

桃園会『月ト象ノ庭、或いは宵の鳥、三羽』

2007-01-28 22:35:25 | 演劇
 3つの夢のようなお話。新作である第3話は、とても軽くて、これが深津さんのお芝居?と思わされる。旧作である1,2話も、重いように見えて、描き方がこれらも、とても軽い。この軽さは、深津作品の新しい変貌ではなく、重いものも、軽いものも変幻自在に見せていける、という彼のキャパシティーの広さ(それは決して器用さではない)を示したものであろう。

 まるで夢でも見てるように、彼らの《傷み》が描かれる。芝居を見ながら、居眠りする老人が客席に居たが、すこし、鼾にはドキドキさせられたが、眠くなる気持ちはとてもよくわかる。これはそんなにも心地よい芝居なのだ。だいたい舞台の上でも気持ち良さそうに寝てる人までいたのだから。(もちろん酔いつぶれて寝てるという役ですが)

 こんなにも素直なラブストーリー3本立なんていうのも深津作品としては、珍しいことではないか。それぞれのお話の中で、核となるのは、恋情であり、それを夢の中のような、時間、設定で描く。リアルから、徐々に荒唐無稽へとスライドさせていく。1話目は自宅で仲間と飲み会をして、酩酊した男女が酔いに任せて本音を見せてしまう、というさりげない話。2話目は、妻が出て行った家で、後に残された男が浴室に籠り生活する(まるでジャン・フィリップ・トゥーサンの『浴室』だ)。そこにやって来た友人夫婦との話。3話目は、4人の男女が同居するマンションに居候させてもらう男が、グループの中の一人に恋をする話。彼らは自分たちの事を宇宙人だと言う。そして、彼女は今日が1歳の誕生日で、彼らの星では1歳になると死ぬ。

 まるで夢の中に入っていくようにお話が流れていく。すべてが、テーブルに臥せって眠ってしまった男が見た夢、と言っても充分通用する。現実からスタートして、話を追う毎に、夢の奥に入り込むように、構成されている。心地よい夢を見ている気分にさせてくれる。こんなにストレートな桃園会ってのも初めてではないだろうか。

 とてもシンプルな舞台美術。唯一の装置であるパネルが1話毎に移動していく。最初の位置が、次では舞台の鼻先に来て、最後では、舞台奥、遠い所に行く。このなんでもない移動が夢の中の位相として、とても効果的だ。同じものが、近くなったり、遠くなったりすることで僕たちの意識もまた揺らめいていく。その揺らぎが芝居の中で見事表現されている。

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