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映画・演劇のレビュー

レトルト内閣『倦怠アヴァンチュール』

2013-02-07 21:07:38 | 映画
 今回のレトルト内閣は6年前に上演された人気作品をリニューアルさせたものらしい。僕は初演を見ていないから、今回が初見。今のレトルトの作風のスタートラインとなった記念碑的作品だということだ。だが、ここ数年の新作を見続けてきた目で、この作品を見ると、少し物足りない。

 スタイルは今と同じなのだが、作品の底が浅すぎる。こけにされたオカマたちの復讐物語、という構造なのだが、お話がそこで止まっている。もちろん、単純なストーリーラインをいかして、視覚的に楽しく、シンプルなセットなのに、とてもゴージャスで、空間をうまく使い、派手で、華やかに見せていく。その辺は今の彼らならお手の物だろう。舞台はいつものように、スピード感に溢れ、ラストまで一気に見せきる。さすがだ。だが、先にも書いたようにそれだけでは物足りない。

 ドラマの奥行きのなさは致命的だ。シンプルなストーリーラインを一気に見せるという明快なコンセプトを生かしきるためには、このくらいのドラマで十分なのかもしれないが、そこにレトルト内閣らしいダークな部分を隠し味程度にでも、いいから、スパイスとして振りかけてもらいたかった。

 5人のオカマたちのバックボーンをさらりと持ち込み、彼らがここに執着することに共感できる、という程度でも、この作品の印象はずいぶん変わった気がする。かのうとおっさんの2人に9役をやらせて、全編に2人が隠れている、というようなマニアックな隠し味よりも、もっと本質的なところに、ほんの少しでいいからメスを入れてもらいたかった。よくできた作品だし、素直でわかりやすくていいんだけど、あまりに単純すぎて、これではもったいない。

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