原作小説を読んだときに、「これはまるで舞台劇のようだな」と思った。で、調べるとやはり小劇場演劇のノベライズ。それを今度は映画にする。正直言ってこれは難しいと思った。リアリズムの映画ではこの作品世界を支えきれない。そのままやれば空々しい映画にしかならないはずだ。嘘くさいお話は演劇というフォーマットの中でなら機能するが、映画という現実世界をベースにする世界では、乗り切れないものになることは必至のことだ。案の定、最初から全編嘘くささ満開の映画になる。
過去に戻れる喫茶店なんていうバカバカしい設定はリアルの文体の中では成立しない。だけど、これはファンタジーとしても機能しない。この映画は、外の世界と隔絶した空間としてここを設定しきれないからだ。過去に戻れるというあり得ないできごとを納得させるだけのお話としての仕掛けがここにはない。ルールを(しかも、結構面倒くさい)を説明されてもそんなことで納得できるはずもない。なのに、さも当然のように案内人である有村架純は講釈をたれる。「ないわぁ」と引いてしまう。
冒頭から乗れない。しかも、常連客たちが最初に紹介され、順番に彼らが過去に戻るという串団子方式の展開は映画向けではない。単調で、飽きさせる。ここにはドキドキがない。四話からなるオムニバススタイルなのだが、(だから、四回泣かされるとかいう宣伝をしていたけど)お話がフラットで映画向けではない。まだTVならこれはこれで宣伝を挟みながらのんびり見てられたかもしれない。
ここには映画であることの、衝撃や驚きがないのだ。こぢんまりとしたTVサイズの安易なお話に終始する。わかりやすいし、丁寧に作られているから安心して見ていられるけど、そんなものを、僕たちは映画館で求めない。2時間がとても退屈だった。久しぶりで映画を見てがっかりした。