残念だが全く乗れなかった。水谷豊監督の前作『轢き逃げ 最高の最悪な日』はとてもいい映画だったので、期待したのだが、今回は監督の優しさが裏目に出て、甘いばかりの映画になってしまったようだ。お話の作りが緩すぎて突っ込みどころ満載だ。個々のキャラクターが嘘くさいから役者たちがそれなりに頑張っていてもそれだけでは追いつかない。台本段階の問題を役者の力量でフォローできるわけもない。でも、水谷豊監督はいい人だからみんなやれるだけの努力はしている。涙ぐましい。演奏だって頑張ったはずだ。僕は音楽のことはまるでわからないからこの映画の演奏シーンがどれだけの出来なのかは評価できないけど、きっとそこもよく頑張っていることだろう。
地方のアマチュア管弦楽団が諸事情から解散せざる得なくなる。そのラストコンサートまでの日々を描く。お話自体は悪くはないけど、目新しいこともない。この手のハートウォーミングの成否はやはり脚本と演出だろう。だから、水谷豊の手腕が試されることになる。今回で3作目である。彼の真価が問われるところだ。なのに、肝心の細部がまるでダメダメでこれではどれだけ素敵な演奏を見せようとも映画にはならない。
冒頭から嘘くささ満載。わざとそういうふうに作っているのかと最初は思ったけど、途中からさすがにそうではないとあきらめる。楽団員同士の内紛とか、あげくが、有名指揮者とのコラボで終わるという展開では納得いかない。思い出作りではなく、ラストでは、自分たちにとって音楽とはなんだったのかをそれぞれが見出すという展開が必要だろう。こんな大団円はありえない。