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映画・演劇のレビュー

浪花グランドロマン『メイズ 隼ブラインド』

2008-06-23 22:45:05 | 演劇
 新アトリエ(船場ユシェット座)を使った実験公演。(チラシには試演会とある)4月に杮落としをしてさっそく今回の公演を打つというフットワークの軽さが素晴らしい。この作品はこれからのNGRの新しい可能性を端的に示す小佳作である。

 空間の使い方が前回よりも数段いい。新戦力を試すための公演のようだが、まず、50分ほどの中篇というなかなかふつうなら難しい尺数のものを提示できたのがいい。これはアトリエ公演だから許されたことだ。無理することなく普段は出来ないことをこなし、自分たちの方向性をあらゆる面から検討していく。そんな機会を持てるのはいい。ちょっとした思い付きからでも、1本の芝居を立ち上げられるのは、芝居が出来る空間を持つ劇団の強みであろう。これからも無理することなくやりたいときに、自由な形でこういう公演を続けて欲しい。

 さて、芝居の方だが、ストーリー自体は単純だ。オチのないオチも中篇ならではのやり方で上手い。この工場で何かが起きているが、そのことに働いている人たちは気付かない。錬金術という説明がなされるが、その謎も充分には解明されないまま、ゆるやかに幕を閉じる。理屈の通らない悪夢の様相を提示する。円環を描いて繰り返される無駄な労働。何か不穏なものを察知して取材にやって来る記者。舞台中央に設置された機械。その機械の化身である男。彼の無邪気さが女たちをどこに誘うのか。不安が残るラストは秀逸だ。

 全てを中途半端なままにして投げ出すように終わってしまうのは、これが長編のプロローグだからかもしれないが、これはこれでしっかり独立した作品として成立している気がする。この曖昧さが充分魅力的なのだ。

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