習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『南極料理人』

2010-05-02 19:42:51 | 映画
 あまりに淡々としすぎていて、眠くなってしまった。劇場で見たのならもうちょっと緊張感もあったのかもしれないが、DVDで見ると、この変化のなさは致命的だ。南極で過ごす400日程の日々のスケッチなのだが、まるでリアルには見えない。安手のコメディーレベルの出来だ。彼ら8人は、狭いセットの中で右往左往しているだけに見える。外の風景も広大な南極大陸の氷の世界、というよりも、きっと北海道あたりでロケした風景でしょ、という感じにしか見えない。

 ここには映画としての本物のリアルがない。ここまでリアリティーを感じさせない映画ってどうだろうか? わざとこういうタッチを選んだようにも思えるが、ではなぜそうしたのか。その理由は映画からは見えてこない。低予算の映画だから、そうなった、としか思えない。作り手が何か根本的な所で、見誤ってしまった、としか思えないのだ。確かにこれは実話をモデルにした話で、ここに描かれる観測隊の面々の個性的なエピソードも現実をベースにしたものに違いない。でも、こうして役者が演じた瞬間からバラエティー番組レベルのものとなってしまう。コミカルな処理がいけない、と言っているのではない。監督の意図のもとに役者が演じそれをきちんと作品としてまとめあげる能力がないから、こんなことになるのだ。崔洋一監督の『刑務所の中』と比較したらよくわかるはずだ。イメージと出来あがったものの間にある微妙な落差がこの作家の力量だ、というと少し厳しすぎるか。

 堺雅人、生瀬勝久を中心にする役者たちは決して悪くはないだけに、残念だ。堺の妻を演じた久々の西田尚美が、ワンポイントリリーフながら、とてもいい。日本映画界は彼女のような才能を埋もれさせてはならない。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 瀬尾まいこ『僕の明日を照ら... | トップ | 『息もできない』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。