オリゴ党25周年記念企画の最後を飾るのは、なんとプロデュース公演である。演出をいつもの岩橋さんからあまのあきこにバトンタッチして、オリゴ党の代表作でもある『グラスナイフ』を再演する。しかも、キャストは劇団員ではなく外部の女性たちを中心にして構成する。劇団員の男性陣はいつもの芝居で、脇にまわる。女性陣は客演に混じる。ただし、中心となるのは若手劇団員である田中樹だ。これは女の子たちのお話。
ダンスシーンも交えて若い女の子たちによる華やかな舞台を見せる。劇場に入ったところから芝居は始まっているような、いないような、そんな緩さがやはりオリゴ党らしい。開演後も、それがずっと続いていく。どこから始まり、どこへたどり着くのか。よくわからない。それと同じように、劇中劇であるTVドラマの撮影もなかなか進まない。
岩橋氏お得意の世界観をあまのあきこは踏襲する。だが、彼女はより理知的だ。これはある種のファンタジー作品なのだが、そこには甘さはない。しかも、ちゃんと華やかなのに、とても淡々としていて、はしゃぐことなく、狭い世界に於ける女の子たちの関係性を、冷静に観測していくみたいなタッチで描くのだ。そこが岩橋演出との違いだろう。あまのさんは劇団の特色をちゃんと理解してそこを損なうことなく、自分の色を混ぜていく。女の子たちは周囲の大人たちに対してちゃんと距離を置いている。彼女たちのほうが大人だ。子供を上から目線で見下すようなバカな大人をちゃんと見ている。そんな両者の関係を冷徹に見せていく。
彼女たちを見守る立場にある大人たち(男たち)のへんにはしゃいだテンションとの落差が面白い。このドラマの監督やプロデューサー、原作者、スタッフという男たちはやがて、女の子たちの世界に取り込まれていくことになるのだが、それによって何かが変わるのかといえば、実はまるで変わらない。彼女たちに愚かな男たちは飲み込まれていく。あるいは、棄てられる。
グラスナイフのひやりとする冷たさが作品全体を貫く。女たちの中心にいる田中樹がとてもいい。彼女は凜とした佇まいで、でも、女王様然とするのではなく、危ういところで、この場の支配を続ける。芝居全体の緊張感、トーンを形成し、持続、セーブする。どこにたどりつくわけでもない2時間は静かなまま帰着する。「ことば」を巡るお話なのだが、言葉じゃないところで、重いものを残してくれる。