これは惜しい映画だ。アイデアはいいし、アプローチの仕方も悪くない。だが、映画はあまりに空疎な作品に仕上がってしまった。作り手のせっかくの拘りがちゃんと伝わってこないからだ。さまざまなエピソードへのへんなこだわりはなく、サラッとしたタッチえ描くのはいいけど、それが生かされていない。技術が伴わないから映画に乗れなかった。あまりに素人くさい。役者たちも残念だが、下手。監督に力量がないからこうなる。役者を活かせない。だから映画も弾まない。
10年という時間の重みが描けないから、説得力がない。10年後の結婚式が感動的にはならないようではこれを作った意味がない。10年間ずっと好きだったという気持ちが伝わらない。ただ軽いだけの男にしか見えない。青木柚は下手な役者じゃないから、これは監督の責任。これを作りたいという熱い想いはわかるし、僕だってこれを見てちゃんと感動したい。監督自身の自伝的作品らしいけど、彼が彼女をどれだけ本気で好きだったのか、その「好き100%」が伝わるとこれはいい映画になったのかもしれない。流れるように10年を描くのも悪くない。それだけにポイントポイントでもう少しエッジが効いていたならと惜しまれる。これではただ流れるだけ。坂元裕二の『花束みたいな恋をした』のような映画になる可能性だってあったのに残念だ。監督は川北ゆめき。脚本はいまおかしんじ。