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映画・演劇のレビュー

ゲキバカ『ローヤの休日』

2011-04-04 21:38:25 | その他
 今時こういう暑苦しい芝居って、珍しいのではないか。作品自体も劇団名の通り、とてもわかりやすい。5人組の窃盗団が、犯行から警察に捕まるまでが描かれていくオープニングのダンスシーンは見事。そこから一気に本題に突入する。

 牢獄に入れられた主人公が、たったひとり悶々と過ごす時間が描かれる。独房の中に、やがて4人の仲間たちが現れる。幻である。彼らとの出会いから犯行当日までが回想シーンとして描かれる。それと同時に、彼らと共に脱獄を計画し、穴を掘り続けるシーンも描かれる。まぁ、4人が幻である以上この脱獄も現実ではないことは最初からわかっている。看守との淡い友情みたいなものもサイドストーリーとして描かれるが、全体があまりに単純すぎて、ドラマとしては少し単調だ。もう少し何らかの仕掛けが欲しい。

 家族との関係が何度か描かれるのだが、それが現在の彼とどうつながっていくのか、もう少し描き込んでもよかったのではないか。そこに彼が犯罪に走る原因があるとか、そんな単純なことを描くのではなく、閉ざされた空間で見る幻を通して、彼がこの人生をどう受け止め、何をしようとしてきたのかを語ることも可能だ、ということなのだ。

 そういうドラマが見え隠れしてもいい。この作品が描こうとしたものも、きっとそこにあるのだから、きちんと踏み込むべきところには、踏み込んで、徹底的に見せてもよかったと思う。作り手の熱い想いはしっかり伝わってくるだけにこのままではもったいない。なぜ、仲間を殺したのか。自殺するのはなぜか。そこが、胸に迫らないことには、男泣きが出来ない。見終わったときには、この単純な話なのに、恥ずかしいくらいに泣ける芝居にして欲しかった。


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