習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

吉田篤弘『おやすみ、東京』

2021-04-03 17:08:30 | その他

実は3月、20冊以上本を読んでいる。毎日、1冊以上のペースで読み続けたことになる。しかも、いずれも面白い本ばかりでここに簡単な感想を書きたいのだけど、どこから手を付けたらいいかわからないまま、まるで書いていない。それは映画も同じだ。アマゾンやネットフリックスで20本くらい見ているのだけど、一切書いていない。なんだかもったいない。

さて、今読んでいるのはこの本だ。昨日の夜から読み始めた。久々の吉田篤弘で、寝る前のベッドの中で読み始めて、どんどん読んでしまって、もったいないから半分で止めた。夜中の1時から明け方までの時間が舞台となる短編連作スタイルの長編だ。複数の主人公たちが織り成す東京の真夜中の物語。主人公はエピソードごとに変わるけど、時間はいつも午前1時から始まる。主人公たちはいろんなところで出会ったり、すれ違ったりする。夜中の一瞬の邂逅。ひとりひとりにはそれぞれの事情があり、夜中の街に立つ。

真夜中の東京。普通の人たちはもう寝ている時間。そうじゃなくても自宅のベッドや布団にくるまれて、まどろんでいたり、夢の中にいる。だけど、この小説の主人公たちはそうじゃない。仕事をしている。あるいはそんな時間なのにフラフラしている。でもそれは、まるで夢の中で過ごしているような時間だ。東京にはもちろん何度も行ったことがある。さすがに午前1時にフラフラ歩いたことはないけど、自分の知らない夜の街を歩いているときの少し心細い感じには心当たりがある。いつだって、どこにいたって東京ではそんな気分になる。勝手知ったる大阪では感じることのない自分の知らない場所。それは東京でしか味わえない気分だ。ほかの街とはどこかが違う気がする。

途中でやめたのは読み終えるのが惜しかったからだ。ずっとこの夜が続いてくれたならいい。そう思いながらひとつひとつのエピソードを読んでいた。だから半分を過ぎた時「今夜はここでやめよう」と思い本を閉じて眠りに就いた。夢になかで小説の続きを見ていたかもしれない。

で、残りは次の日の夜に取っておこうと思ったのに、翌朝の電車の中でついつい読み始めてしまった。やれやれ。自宅に帰ってきてから今こうしてこれを書きながらも、残りを読みたいと思っている。でも、残り3篇は今夜の午前1時まで取って置こう。

 


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