習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

東野圭吾『パラドックス13』

2009-06-08 22:53:55 | その他
 こういうSFエンタテインメントってよくある。スケールも大きいし、お話もドキドキさせられる。500ページにも及ぶ大長編なのに、けっこう一気に読ませてしまう。さすが東野圭吾だ。

 北村薫の傑作『タ-ン』と同じパターンなのだけど、後半はスケールアップしていき、壮大なドラマとなる。ウイル・スミスが主演した『アイ・アム・レジェンド』も同じパターンだった。でも、あの映画はストーリーが後半腰砕けした。ゾンビものなんかになったっておもしろくもなんともない。

 世界観の提示と、それがどこまで行き着くのか、という構造が大事だ。それをただのゾンビとの戦いにしたりするような頭の悪いものにしては元も子もない。あれだけ凄いビジュアルを用意したのに、ほんとにバカな映画だった。その点、東野圭吾はストーリーテラーだ。よく考えてある。

 しかし、これもいつものことなのだが、話をまとめていく過程で、作品世界が狭くなるのが気になる。破綻を恐れて十分な作品世界を作れないまま収束する。その傾向は続けて読んだ『流星の絆』でも同じ。スタート地点ではかなりおもしろいのに、結末に至る過程でどんどんお話が減速してくる。つまらないとはいわないが、これだけの分量を読ませておいて、この程度の結末では納得いかないだろ。固い絆で結ばれた3兄妹の話とかいうのもなんだかなぁ、と思うけど、両親の死の謎解きがあれではしょぼすぎるし、詐欺にしても、あんなに上手くいくのか?読み終えてかなりへこんだ。これはないと思う。リアリティーゼロ。クドカンによるTVドラマ版はこの原作とは全然違う不思議な話になっていたらしいが。

 さて、今回は『パラドックス13』の話のはずだったのが、まるでそれを置き去りにしてしまったまま終わる。別に話すことはないからだ。けっこう面白いし、悪くはない。これを映画にでもしたら確かに面白いだろう。少なくとも『アイ・アム・レジェンド』よりは面白い映画になるだろう。まぁ兄と弟との確執なんてのも彼らしいし、悪くはないはずだ。だが、何度考えてもどうして世界観がこんなにもしょぼいのだろう。これではダメだ。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『BABY BABY BABY! ―ベイビ... | トップ | プロジェクトKUTO-10 『後ろ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。