スティーブン・スピルバーグが久々にファンタジーの世界に戻ってきた。しかも、原作はロアルド・ダールの児童文学だ。さらには今回初めてディズニーとタッグを組む。内容は単純で、これはおとぎ話や童話だ、と言っても問題ない。純粋に子供たちのための映画である。素直すぎるほどに素直な映画児童映画。
『E・T』から30数年。最近はSFすらやらず、シリアスな映画ばかりを作ってきたけど、彼の原点は子供たちの世界を描くことにある。大人向けの映画にもいつも子供の姿があった。『未知との遭遇』や『ポルターガイスト』から『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』、みんな中心には子供がいる。だいたい彼の映画に出てくる大人たち自体がもう子供そのものだったし。
冒頭、夜の孤児院。ひとりの少女が眠れない夜を過ごしている。そこに7メートルの巨人がやってくる。彼は彼女をさらって、巨人の世界へ連れて行く。最初は怖がっていたけど、すぐに慣れる。彼がいい人だとわかるからだ。そして、ふたりだけの物語が始まる。もしかして、この映画には彼ら2人しか出ないのではないか、と思うくらいに2人のシーンが長い。
しかし、そんなわけはない。外部から邪魔者はやってくる。それは『E・T』の時代から同じじゃないか。7人の邪悪な巨人たち。(彼らは少女をさらった巨人よりもずっと大きい)なんとかして、悪い巨人たちをやっつけたいと思う。そこで、彼女はなんと英国女王に助けを求めることにする。お願いすると、女王は軍隊を引き連れて巨人退治に出かける。
なんとも牧歌的な映画だ。単純明快。何の悪意もない。(まぁ、悪い奴はとことん悪いけど)孤独な少女は幸せになりました、という映画だ。あまりのひねりのなさに少し茫然とする。でも、今の時代にこんな善意の映画が作られることに意義がある。そう思うことにした。
スピルバーグの映画としては正直言うといささか物足りない。でも、こういう夢の世界を実現して、2時間のおとぎ話を見せる。子供たちにとって、これはきっと驚きになる。小さな子供が最初に見る映画として、悪くはないのではないか。でも、今の時代、小さな頃から刺激の強いアニメや映画に触れる機会がたくさんあるから、物心ついたその最初期に、この映画と出会う確率は残念ながらとても低い。