習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『127時間』

2011-06-24 22:12:43 | 映画
お正月マレーシアに遊び行ったとき、偶然映画館でこの映画の予告編を見た。驚いたね。だって、とてもじゃないけど、まともな映画には見えなかったからだ。それは、日本ヴァージョンのような感動を売りにしたものとはまるで違い、なんだか訳のわからないとんでもない代物に見えた。あの衝撃は忘れない。その時見た映画よりも、この予告の方がずっと印象に残っている。冗談のような映画に見えた。まぁ、実物を見てもそんな感じなのだが、予備知識なしの異国での最初の予告編でのインパクトは大きい。言葉もわからないし、何が起きたのかもわからない。いきなり始まったので、最初はこれが予告編であることすら、わからなかったほどだ。

 あの衝撃の出会いから6カ月。ようやく、日本でも、公開されることになり、今週からロードショーがスタートした。と、いうことでようやく、本編を目撃したのだが、やはり凄い映画だった。

 あの壮大な風景にも驚くし、そこを主人公が自由気ままに走り回るのにも驚く。あの誰もいない巨大な空間を、まるで自分の家の庭かなんかのように自由に闊歩するのだ。女の子2人を案内して、岩と岩の狭間を行き、その隙間で手を離して、滑り落ちるところなんか、何度見ても(予告編でやっている)信じられない。ドボーンと水面の落ちる瞬間の興奮。その後、ひとりになって、いきなり事故に遭う。岩が落ちてきて手を挟んで身動きがとれなくなる。そこで、メーンタイトルが出る。そこまで約20分くらいか。94分というとても短い映画なのに、このバランス! さすが、ダニー・ボイルだ。予定調和の映画にはしない。まるで、実験映画か、自主映画のような、フットワークの軽さである。ただ、ちょっと単純すぎて、1本の映画としては、物足りない。

 手を切断するシーンはあまりに残酷で目を覆いたくなるが、あそこを曖昧にしたなら、この映画全体が嘘になるから、あれでいい。スプラッター並の描写である。感動の実話の映画化とか、そういう感じではなく、作り手はドキュメンタリー映画のような感触を狙う。そこでもちゃんと成功している。傑作ではないが、こういう意外性のある映画が、たまにあれば刺激的だ。


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