筒井ともみによる女たちの食を巡る寓話。こういうファンタジーがあればいい。そこは疲れた体を癒してくれる優しい場所。そこでは「おしいい」が待っている。気の置けない仲間との楽しい時間。世代も違うけど、おいしいものが大好きな女たちが集まり、みんなで食べる。飲む。喋る。仕事をして、恋もして、人生を謳歌している。でも、ひとりではなんだか寂しいから、みんなでおしいいものを食べる。そうすると、なんだか元気になる。食というコミュニケーションを通して、生きていることが愛おしくなる。そんな映画だ。
いつものメンバーが集まってどうでもいいような話をする。これはうだうだ飲んで管をまきベロベロになるだらしない男たちの映画ではない。お酒よりまずおいしものを食べること。女たちは食べることの魅力をよく知っている。
8人の女たちが描かれる。中心にいるのは小泉今日子。彼女のところに集まる4人の女たちの話なのだが、その周辺にいる女たちも含めて8人。さらにはそのまた周辺にいる男たちも。この小さな世界のかたすみでの出来事が描かれていくのだ。お話自体はたわいもない。大きなドラマはない。ほとんどドラマらしいドラマもない。それぞれがその生活圏で起きたちょっとした出来事が描かれるだけ。それこそ食事の間の話つなぎでしかない。ここで一番大切なことは、みんなで楽しく食べること。それだけ。でも、それだけをちゃんと2時間ほどの映画にしちゃった。
それってなんだか凄い。たわいもないスケッチが積み重ねられていく。どこで始まっても構わないし、どこで終わったって構わない。どうせこの後も同じような毎日が続くだけなのだから。そして、生きていく。やがて、老いてしまうだろう。それが人生なのだ。それでいい。
なんだか少し寂しい気分になる。食べた後、夜の散歩をするシーンがある。夜道を歩く彼女たちの姿を追う。幸せな気分だけど、ちょっと淋しい。それって何なんだろうか。よくわからないけど、映画を見終えた後も同じような気分になった。幸せなのにさびしい。それって、食べるという行為のせいなのだろうか。食べてしまったらもう残らないからか。