これが映画のタイトルなのだけど、「これはちょっとなあ」と思う。あっさりしすぎてインパクトはない。あまり映画のタイトル向けではない。
ビートたけしの小説の映画化で、恋愛映画。地味だ。キャストも二宮和也と波瑠。タイトル通り、今どきケイタイを持たないアナログな女性と恋に落ちたアナログなデザイナー男性の話。
こんな夢のようなお話は現実にはないけど、映画ならある。しかも、映画ならではのリアルさで迫ってくる。都合のいい現実が映画ならありなのだ。こんなふうであるといいけどなぁ、という夢のような展開がここにはある。
サイドストーリーだが、親友ふたりとの3人組。彼らは主人公を裏切らない。彼を大事に思ってくれていつも一緒につるんでくれる。理想の友人。普通あり得ない。
不思議な彼女は自分のことを話さないけど、彼は彼女を信じる。騙されるなんて思わない。40前の大人の男が普通こんな恋愛は恥ずかしくてしないだろう。でも出来るならしたい。彼は純粋に相手を想う。
期待以上の作品で感心した。甘い映画だ。だが映画は夢だから心地よい世界を提示するのは理想。それを破綻なく、夢見心地のまま2時間見せたなら成功。
正直言うとあまり期待してなかった。それだけに心から見てよかったと思う。「ビートたけし原作で恋愛映画って、」と思っていた。だが北野武監督は初期の頃『あの夏いちばん静かな海』という恋愛映画も作っている。今では暴力映画ばかりの印象を受けるけど。
ここにはもどかしいくらいにいい人ばかりしか出てこない。不幸な事故はある。だけど、幸福なラストがある。だからこの心地よいラブストーリーを最後まで楽しむといい。これはそんな映画なのだ。