とても面白かった。これは新しい家族の在り方を提示してくれる。そしてそれは「こういうのもいいんじゃないか」という感じの安っぽい提案ではない。こんな可能性の中にこそ、これからの自分たちの在り方が確かにあるのか、なんて思わされた。もう目から鱗だ。芝居を見ながらいろんなことを考えさせられる。同時に、芝居自身はとても快調にお話をどんどん進めていく。良質のシチュエーションコメディでも見ている気分でストーリーを追いかけることになる。笑いながら見ていられるのに、しかもこんなに軽やかなのに、描かれるものはとても深い。ストーリーを追うことで、ひとつの提案が成される。中年に達したふたりの女性が主人公だ。彼女たちが結婚する。結婚を通して老後の安心を手に入れる。愛しているから結婚する、というのとは少し話が違うのだ。
まるでモデルルームのような明るいリビングを舞台にして、同棲を始めた恋人同士のところに、娘だとか、弟の夫婦だとか、近所の人とかがやってきて、大騒ぎになる。だってこれは実は同性同士の結婚(女同士)ってどうなのか、というお話なのだ。身内はそれを認められるか、というお話。しかも、そこにはセックスは介入しないというのも新鮮だ。男だとか、女だとか関係なく、自分の好きな「誰か」と一緒にいられたならいい。そして、そこには結婚という制度があり、それを利用する。制度に守られることによる安心もある。老後のひとりぼっちは、孤独だからそれを解消したい。でも、それが結婚って、どうよ、という話だ。
誰がいっしょにいてくれるのか。一緒に暮らしてくれるのは家族しかないじゃないか。じゃぁ、家族になるため結婚という制度を利用する。そこには法律で守られることのメリットもある。どんなふうにして、どういう人生の終わり方をするのか。これは同性愛ではなく、同性同士の結婚という基本設定から始まる。だが、これはアイデア勝負の際物ではない。とても自然体で彼女たちの心情から始まる。こういう状況ならどうなるのだろうか、という興味でお話に引き込まれる。とても上手い。