コーエン兄弟の映画を凌ぐ、なんていうのは信じないけど、こういうクライムサスペンスで、雪の中が舞台で、『ファーゴ』や『ブラッドシンプル』なんかを想起させる、という、宣伝する側の気分はわかる。でも、あまりに杜撰な計画に、見ていて、呆れるしかない。宣伝に乗せられて、淡い期待をして、こんなしょうもない映画を見てしまった自分を嘆く。でも、しかたないから、見続けるしかない。
主人公の男はただのバカである。バカがバカを重ねていくのを見守り続ける。もうたいがいにせいよ、と思う。実は、映画はそこからなのだ! 監督はジル・シュプレッヒャー。
この映画のラスト10分の大どんでん返しには驚かされる。そういうことだったのか、とそれまでの、すべてを、受け入れそうになる。しかし、待てよ、と思う。すべて、説明してる。落ちを説明で済ますのって、どうよ、と思う。いくら斬新なアイデアだとしても、それを言葉で示してどうするのか。それでは映画じゃない。しかも、あまりに都合よすぎる。主人公はそこまで、バカなのか? 彼がこんなにもバカだということを前提にして仕掛けてくるのは、納得いかない。話がうまく作られすぎている、ということだ。見事だ、とは思うけど、これでは、そこまで、で止まる。杜撰な計画までが、計算のうち、というのは、なんだかなぁ、である。