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映画・演劇のレビュー

『幕が上がる』

2015-03-01 21:04:06 | 映画
自信がなかったから、演劇部の顧問はしなかった。「運動部の方がいいから、」とか言いながら実はそれはいい訳。芝居を見るのは好きだったけど、するもんじゃない、と思う。そう思っていた。でも、それもただ自信がなかっただけ。

この映画を見ながら、やっぱり演劇部の顧問って、凄いよ、と改めて思った。もちろん、この映画の黒木華演じる先生が、ではない。その時僕は自分が知っているたくさんの先生たちを思い浮かべている。(今まで、たくさんの「現実の」素敵な先生たちを見てきているからね。)

黒木華演じる新任の教師が、演劇部の子たちと関わる。あの最初の場面を見ながらドキドキした。あれは、22歳の頃の僕だ。

教師になった最初の年、顧問じゃないけど、少しだけ演劇部の子と関わった。文化祭の劇を見て、「あんなのは、芝居じゃない!」と言った。「つかこうへいの芝居を見ろ!」とか言って必死になって子供たちに檄を飛ばしていた。自分がちょっと芝居好きで、小劇場を見ていることで、上から目線で子供たちに偉そうなことを言っていた。あの頃の僕はただのバカだった。でも、まだ僕は22歳の子供だったのだ。そんなことを、今の今まで忘れていた。でも、この映画を見ながら、そんな昔のことまで思い出して顔を赤らめてしまった。この映画には、そんなこんなのいろんなことを思い知らされる。

そして、何よりも、演劇をやっている高校生たちって素敵だと思った。彼らがなぜ芝居なんていう割に合わないものに必死になっているのか。僕には理解できない。だから、彼らを尊敬する。この映画の高校生たちはどこにでもいる演劇部員だ。彼女たちの姿が愛おしい。

演劇部の顧問はしないけど、なぜか、今も、いつも遠くから高校演劇部の子たちを見ている。(今でも、数年に1回は、ついついコンクールの審査も引き受けてしまうし、)いっぱいいっぱい思うことならある。この映画は、そんなあれやこれやまで、思い出させてくれる。

ここには高校生の時間に何をどうするべきか、のすべてがつまっている。忘れていた大切なもののすべてがここにはある。芝居が好きだから、舞台の上に立っていたいから。ただそれだけでいい。理由はいらない。将来とか、夢とか、そして目の前にある受験とか。大切なものならいっぱいある。しかし、それだけじゃない。

高校生にしかできないことをする。そのためのアシストをしたい、とずっと昔から、そして今も思っている。でも、いつのまにか、毎日の生活の中で、心が弱くなり、ルーティーンワークと化してしまっていたこと、この映画はそれを思い出させてくれた。もう一度初心に戻れ、と自分に檄を飛ばす。これは何よりもまず、今の自分のための映画だった。この映画を作ってくれた本広克行監督に感謝。

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1 コメント

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Unknown (観劇人間K)
2015-03-12 01:49:22
ある人(演劇好きで演劇関係の会社まで作った人w)に勧められて来週火曜日に観ようと思っている作品。いや観る。ヒロセさんはどう書かれているかと覗いてみました。そうか~そうやったんですね。なるほどナルホド。そういう御経験が(笑)それで高校演劇も観られてるのかと。映画楽しみです。ところでこのブログ一つ残念なことが。意図が有られたら別ですが読書も好きなヒロセさんらしくないミスではないかと考えます。「檄を飛ばす」は誤用されてません?
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