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映画・演劇のレビュー

『悪夢探偵』

2007-01-17 22:32:00 | 映画
 「ああ、いやだ、いやだ」を口癖にして、人の夢の中の入り、事件を解決していく悪夢探偵>というストーリーラインはいかにも、という定番を踏んでいる。塚本晋也監督は自分流のエンタテインメントを目指した本作で、単純なスト-リーと分かりやすさで勝負をしようとしている。

 しかし、話自体は単純だが、本人が考えるほどには分かりやすい映画になっていない。単純というのなら、彼の劇場デビュー作『鉄男』だって充分単純だった。その単純な話を手に汗握るストーリーへと展開していかないところに、塚本晋也の面白さと、限界がある。

 今回だってハリウッド映画のように、善悪を明確にして、ド派手なSFXを駆使して見せたなら、1級のエンタテインメントになったかもしれない。だけど彼は敢えてそれをしない。

 映画は、人間の内側へ、内側へと沈み込んでいく。ラストの犯人であるO(塚本晋也自身が演じる)と悪夢探偵こと影沼(松田龍平)の対決だって、どちらが善で、どちらが倒されるべき悪なのかが、よく分からなくなっていく。多分に観念的な映像処理もおもしろいが観客を混乱させるかもしれない。

 だいたい主人公である霧島刑事(hitomi)も含めて3人ともが、心にトラウマを抱えていて、それによって悪夢に捕らわれているのだから、救いようがない。

 彼女の悪夢の中に入り、2人は対決する。彼らはまるで傷を舐めあうようにお互いと向き合う。ここにカタルシスを求めようとしても、それは不可能というものだ。死んでしまいたい人間を死の世界に導いていくO[ゼロ]という男はほんとうは優しい男ではないかと思えてくるくらいだ。

 いつも憂鬱そうな顔をして下を向いている影沼と、暗い表情で淡々と事件と向き合う霧島。この2人を主人公にしたエンタテインメントを作るという塚本晋也って、やっぱりハリウッド映画向きの作家ではないなと思った。そして、だからこそ彼の映画が好きなのだが。

 導入部の原田芳雄が死んでしまうエピソードから、一気にこのダークトーンの作品世界に引き込まれ、安藤政信が殺されてしまうシーンで緊張が頂点に達する。見せ場の作り方はとても上手いし、エンタメの王道を行く映画になっている。ハリウッドがリメイク権を争う理由もよく分かる映画だ。そして、これのリメイク版の監督を塚本晋也は絶対にオファーされても引き受けない(笑)。

 どうでもいいことかもしれないが、先日公開された『パプリカ』と話がやけに似ているのが少し気になる。

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