ネットフリックスの配信で公開されたアニメ映画だが、本来なら劇場公開されたはずのちょっとした大作映画なのだ。丁寧に作られた作品だし、後半、猫の世界にいくところのスペクタクルなんて劇場でこそ、という感じだ。タイトルからは小さな作品のような印象だが、なんのなんの、大きなスクリーンに映えるそんな作品だ。山崎貴監督の『DESTINY 鎌倉ものがたり』と似ている。
ひとりの少女のある少年への想いがエスカレートしていくさまが描かれる。というか、彼女は一方的に彼にアタックする。そのさまはなんだか痛々しいし、でも、潔い。どれほど袖にされようとも挫けることはない。どこからこんな自信が生まれるのか、と驚くばかり。いや、あきれる。彼女の周囲のクラスメートたちも同様。でも、彼女にはめげない理由がある。実は、彼女はひそかに猫になって、彼のもとに通っているのだ。猫の彼女は彼のお気に入り。という、ファンタジー映画だ。
人間でいるより、猫のままのほうがいい、と思う心に付け込んで、彼女に猫になれる仮面を与えた猫店主は、彼女から人間でいる権利を奪う。そこから生じる冒険が映画の後半戦だ。まぁ、よくあるパターンだ。でも丁寧に作られているから、気持ちよくお話にのれる。最近では、あの原恵一監督の『バースデー・ワンダーランド』がこれとよく似たパターンだったが、なんと、こちらのほうが断然よくできている。(まぁ、僕の主観だけど)
アニメ映画は、とくにどれだけ気持ちよくその作品世界にのれるかが評価のポイントとなる。(たぶん)突飛な行動や、痛い描写の連続なのだけど、めげない彼女を見ているうちに、彼女と一緒に周囲も巻き込み(当然、彼女を相手にしなかった彼氏も)冒険の旅に出る。凄い映画だった、なんていうタイプの作品ではないのだけど、実にすがすがしい気分にさせられる。お気に入りの一作。