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映画・演劇のレビュー

超人予備校『トラにパンチ!』

2010-10-25 22:43:36 | 演劇
 今回の超人予備校はいつも以上に明確なストーリーラインがあり、そこに向けてストレートにドラマが収斂していくというスタイルだ。とても単純でわかりやすく、スポ根ものの王道を行くような展開である。だから、ラストはこの手のドラマのひとつのパターンである、主人公2人が初めて顔を合わせ闘うシーンとなる。タイトル通り『トラにパンチ!』だ。

 主人公はうだつの上がらないサラリーマン(上別府学)。妻がスポーツトレーナーと浮気しているのではないか、と疑い尾行すろところから話は始まる。だが、彼女はトラと闘うためのトレーニングをしているという。そこで彼女のため、一緒に戦うことになる。もうひとりの(1匹)主人公は、気の優しい虎のトラ次郎(豊田圭)。動物園に迷い込んできた猫にそそのかされ、自分は猫なのではないか、と思うことになる。飼育員の膝に乗って甘えるため、飛びかかり怪我をさせてしまう。彼ら2人のそれぞれの話を並行して見せながら、予定調和のラストに突入する。

 『ロッキー』を初めとするボクシング映画のワンパターンを踏むストーリー展開だ。しかも、そこにはなんのヒネリもない。こんなシンプルな芝居を作っていいのだろうか、と思うくらいだ。(もちろん作っていいと思うよ)驚くべき単純さ。それもまた、ミツルギさんらしい。ただ、今回は前作『うしばい』からのインターバルがあまりに短すぎた。お話をじっくり練っていく余裕もなかったのではないか。話自身はテンポよくは進むのだが、あまりにありきたりすぎて、ちょっとがっかりした。

 ひとつひとつのエピソードにしっかり、オチがあり、ショートコント集というスタイルの中で、一つのテーマのもと、1本の長編として練り上げていくといういつものタッチに較べると、今回はあまりに物足りない。単純さが力になり切れていないのがなんとも残念でならない。

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