ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2016J1リーグ2ndステージ第14節サンフレッチェ広島vsFC東京@エデスタ20161001

2016-10-02 15:52:16 | FC東京

ようやく秋晴れが訪れました。

晩夏の長旅の直後なので、今秋はお留守番でございます。

というわけで、今節はテレビ観戦記で失礼します。先週カープを観にいったばかりで記憶も鮮やかな広島。

いつものアウェイ広島戦らしい展開をゴラッソで締めくくっての快勝です。

東京は今日は最前線を変更です。シフトはおなじみ4-2-3-1。GKは秋元。CBはモリゲとまる。SBは室屋と徳永。ボランチは梶山と草民。WGは右に広貴左に翔哉。トップ下は慶悟。1トップは相太です。

広島は前節と同じ布陣です。シフトはこれまたおなじみ3-4-2-1。GKは卓人。3CBは右から塩谷、千葉、水本。ボランチは青山と丸谷。WBは右にミキッチ左に柏。2シャドウは右に茶島左に晃誠。1トップはウタカです。

いつの頃からか、ビッグアーチはいつも同じような試合展開を観るようになりました。ていうか、ぼくらは感じようがないのだけど、すべての対戦相手が、広島戦にデジャブを感じてるのかもしれませんね。理由は、広島が、とくにポイチ体制になってから、サッカーがまったくブレずに変わってないから。

エデスタでの対戦は、ロースコアになります。なぜか、味スタでは感覚が少し違うので、広島の闘いかただけに理由を見出すことはできないかもしれません。もっと文学的なことにも由縁を探りたくなります。本論ではないのでそれはどこで誰かの講釈で。

東京と広島は、互いにコンサバティブなサッカーです。コンサバティブというよりかは受動的と言ったほうが良いかもしれません。互いに守備がとても堅固です。なので、どちらかというと守り合いの展開になります。これがロースコアになる主たる理由だろうと思います。広島の闘いかたは今更ながらなので、さっそく展開を観てみましょう。

コンサバとは言え、いつも東京がイニシアチブを握ることが多いです。広島にしてみればもちろん本意ではないだろうと思います。今日もまた、広島は序盤から攻撃権を取ろうと前から積極的に追ってきます。東京もまた然りなので、序盤は中盤で激しい攻防が起こります。

これを征したのは、結局やっぱり東京です。理由は双方にあります。まず広島。広島は相手によって作戦をドラスティックに変えるようなことはけしてしません。近年でもっとも結果を残しているチームですから、王者らしく自分たちの姿勢を貫くことができる、Jリーグで唯一のチームですから。広島の攻撃のキーポイントはアタッカー三人の連携にあります。もちろん基本的にはサイドアタックのチームですから、攻撃の推進力という意味ではミキッチと柏が重要なタスクを担うのですけど、アタッキングサードでの決定的なシーンを演出するのは、あくまでもアタッカートリオです。おそらく広島は今、世代交代に取り組んでいる最中なのでしょう。仮に茶島ではなく寿人が入ったとしたら、トリオは全員三十代。ジャガーがいなくなって、一層顕著に思えるようになりました。茶島にしろ宮吉にしろ、コンディションが良ければスターターとして使ってもらい、かつ実際に活躍していますから、チームとしてコンペティティブな部分を犠牲にすることなく育成までできてしまうのですから、ポイチさんのコーチとしての才能は驚愕に値します。

とはいえ、こと東京戦に関しては、我々東京から見るとなぜこのチーム、とくにこのアタッカートリオでチャンピオンになれるのか不思議に思うほど機能しません。言い換えると、東京の守りかたに広島のアタッカーがぴったりフィットしてしまうのだと思います。広島のトリオは、けして個の動きも連携も単調ではないですから、守備をがっちり固めるタイプの守りかたではない東京に対してだけ機能不全になる理由は成り立ちません。まったく不思議としか言いようがありません。

ただ、東京は対広島の守備を選択します。広島のビルドアップの鍵であるサイドは、ある程度攻め込みを許します。具体的には、ミキッチにしろ柏にしろ、アタッキングサードで、ペナルティエリアに入るまでは、徳永、室屋に1on1を仕掛ける状況を作らせることを許容します。てか、そのように誘います。言い換えると、ペナルティエリア内はCBとボランチのスクエアな2+2のゾーンをしっかりと作ります。この枠のなかに広島のアタッカーを入れないことを優先します。このため、アタッカーだけでなくシュート力のあるWBから雨あられとシュートが放たれます。今日は東京の三倍、21本のシュートを打たれました。でもそのほとんどがペナルティエリア外からのシュートです。広島が結果を残している理由のひとつは、シュート意欲がとても高いことです。この特長はたぶんJリーグNo.1だと思います。シュートアテンプトが多ければ自ずとゴールも増えます。ただし、シュートを打つこと自体簡単なことではないのは、普段東京の試合を観ているぼくらは一番よくわかることです。広島のシュート意欲の高さを支える技術的な要素については、これもいつか誰かが解説してください。

結果的に可能性を感じた広島のシュートは、チーム最初となるウタカのシュートと、チーム最後となった寿人のボレーの二本だけ。つまり東京は、広島はシュートを打つチームだけれど、ペナルティエリア外からの精度はそれほど高くないという算段があったのでしょう。原因はWBにあると思います。ミキッチにしろ柏にしろもちろんシュート技術はとても高いのですけど、本来ミキッチはクロッサーですし柏もドリブラーですから、ミドルシューターではありません。そしてもう一点は、広島最強のミドルシューター、塩谷を抑えること。

この対塩谷防衛作戦こそ、東京がイニシアチブを握った東京側の理由です。東京は、塩谷の背後を執拗に狙います。ミキッチが高いポジションを取り、塩谷がそれに連動して上がると、広島得意の包囲網的な攻撃モードを形成できます。このシフトが、ひいてはアタッカー三人の連携の威力を増す遠因になります。東京は、言うなれば、一粒で二度美味しい作戦を左サイドで展開します。担ったのは、徳永、慶悟、翔哉。まず徳永が高めに位置取りミキッチを引き付けます。これで塩谷を裸にします。慶悟もしくは翔哉が塩谷をライン際の少し高めの位置にひっぱり上げます。これで塩谷の背後に広大なスペースができます。そこに仕掛けます。これを執拗に繰り返すことで、広島の攻撃の意欲をそぎ、守ること優先する選択を取らせることに成功します。

と、ここまでは東京の思い描いた通りの展開になります。おそらく東京は、シナリオがある程度想定通りに進むことは算段済みであったことでしょう。ただし、勝つためには、シナリオをもう一段上げる必要があります。広島の広島たるは、その強力な守備力ですから。広島は、東京と同じくゾーンとマンマークをバランスよく組み合わせたハイブリッドな守備を基調とします。とくに危険なスペースの予防は、J最高のクオリティがあります。ようするに広島の選手は、サッカー知能が非常に高いのでしょう。見えざるクオリティが、広島のピッチ上では表現されます。

以降、5+4の堅固な広島城の攻防戦です。そしてそれは、最後まで続きました。広島が引いて守るので、引っ張り出されるようなかたちで前のめりな展開になっていましたけど、広貴と翔哉が下がり目でパスをさばくことで、押してだめなら引いてみなとばかりに、あの手この手で東京が広島を崩そうとします。中盤が左右にパスを散らし、広島を揺さぶる攻めも見せますけど、これにも揺るぎません。こうして、今日もやっぱりいつもの展開にはまっていきました。

広島が引いたということもあるのでしょうけど、今日は翔哉の運動量が目立ちました。前線から中盤まで広範囲に動きまわり、フィニッシュに絡む仕事だけでなくチャンスメークも積極的にこなしていました。それだけでなく、結果的には90分間やり通していたのに驚きました。翔哉が中盤で仕事をすること自体は、フィニッシャーが一枚減るということですから賛否の意見が分かれると思います。実際に翔哉が翔哉ゾーンでシュートを放てたのは、ゴールを含めて三本だけ。試合を重ねるごとにマークが厳しくなり、シュートアテンプトを取れなくなってきています。中盤に下がることでマークをずらす意図もあったのかもしれません。後半は攻守に消えていることもあったので、正直他のアタッカーにリフレッシュするかと思いました。それでも最後まで使ったことは、結果を残した翔哉のみならず、篠田さんの今日最高の慧眼と言ってよいと思います。

それから、広貴の安定感には目を見張ります。広貴は、アタッキングサードでリスクテイクする場合でも、ほとんどボールロストをしません。広貴が前を向くと仕掛けがあることが分かっているので、ダブルチーム、ときにはトリプルチームで守ってくるのが常套ですけど、広貴はほとんどボールを奪われることがありません。ボールを置くタイミングと距離感が際立って上手くなっています。相手が届かなく、かつ広貴はコントロールできる場所にボールを置きます。その判断と技術のクオリティが神域に近いほど高まっています。これは試合を重ねるなかでしか培えない技術ですから、ますます磨きがかかってくるだろうと思います。

前半終了間際にアクシデントが起こります。徳永がミキッチのカバーの際に右膝を痛めて下がります。代わって拳人が同じく左SBに入ります。かなり負担のかかる曲がりかたをしていたので、とても心配です。まずミッドウィークは難しいだろうと思います。長期離脱になるような大事ではないことを祈ります。

前半は、やっぱりデジャブを見るような、毎度おなじみのスコアレスのまま終了。

後半頭から篠田さんがアジャストします。アジャストというか、前半は拳人がスクランブルで入ったので、仕切り直しというところでしょう。室屋と拳人を左右入れ替えます。いずれにしろ、徳永が下がった影響は作戦面で大きいものなりました。左サイドは東京の攻撃の始点になっていましたので、そのキーマンである徳永を失うと、つまりは攻撃全体のデザインがリセットされてしまうことになりました。室屋と拳人が良くないということではなく、攻撃をつかさどる各ピースの繊細さが、徳永が抜けたことではじめて確認できたと言ったほうが良いでしょう。こうして、東京の攻撃は、単調な中央突破のゴリ押しにならざるを得なくなってしまいます。

なので東京は、無理押しを避ける選択をします。拳人と室屋の位置を少し下げ、攻撃をカウンター基調に変更します。広島もあえてイニシアチブを無理矢理取りにいくことなく、重心を下げたままですので、互いにカウンターを出しあう展開に移行します。

そこでポイチさんが動きます。茶島に代えて宮吉を同じく右シャドウに投入します。茶島のコンディションを考慮したのだと思います。加えて、テクニシャンよりもアジリティの高いドリブラーが活きる展開と読んだのでしょう。それよりも、やはり茶島とともに、宮吉の経験の機会を作ることが最も強い動機だったと思います。

直後に篠田さんも動きます。相太に代えてバーンズをひさびさ投入します。相太と同じく1トップです。篠田さんはどちらかというとオプションの使いかたはコンサバティブで、セオリーを重視した王道スタイルです。最初はスピードと運動量のあるインスを投入して前線からかき回すことで攻守に機能することを期待しました。トップを代えるにしても、遼一から相太と同タイプを選ぶことが多く、基本的な作戦を維持することを優先していると思います。相太からバーンズは、テイストが異なります。篠田体制になってはじめての大きな作戦変更を伴う交代だと思います。

この作戦が、最終的な結果を伴うことを含め、機能します。バーンズは中央で構えるタイプではなくスペースメイカーです。広島の守備はフルゾーンではないので、スペースがないわけではありません。カウンターの出し合いの展開になると、ますますスペースメイクのチャンスが出てきます。バーンズが動くことで、セカンドアタッカーの慶悟、翔哉、広貴も仕掛けられるようになってきます。カウンターの威力がジワジワ高くなってきました。

続いてポイチさんが動きます。ウタカに代えて寿人を同じく1トップに投入します。ウタカはシュートを打てていたのですけど、前述の通り遠目で、言うなれば打たされていました。なので寿人への切り替えは、もちろんペナルティエリア内のスペースメイクからのシュートです。今日の広島に欠けていたラストピースが投入されます。とはいえ、カウンターモードの広島にもっとも欠けるのは、ジャガーがいた広島を知っているからこそ、スピードスターです。攻撃権を持つなかで活きる寿人がカウンター基調でどこまでペナルティエリアに入れるかが勝負の分かれ道の一つになります。

試合は最終盤に入っていきます。篠田さんが動きます。広貴に代えて羽生を同じく右WGに投入します。広貴のコンディションを考慮したのでしょう。攻守両面を見た、勝点1も視野にした落ち着いた作戦だと思います。浦和戦の反省が活きていますね。

ポイチさんも動きます。柏に代えて航平を同じく左WBに投入します。これも柏のコンディションを考慮したのだと思います。幾分航平のほうがクロッサーのテイストが高いので、中央の寿人へのチャンスボール供給に焦点を絞ったと言っていいと思います。

終了直前の3分間に、にわかに試合が動きはじめます。きっかけは二つ。ひとつは寿人のジャンピングボレー。もうひとつは翔哉が前半以来にひさびさに打ったシュート。ともに結果にはつながりませんでしたけど、広島にとっては、シュートを打てど遠目にしかず、ようやくペナルティエリア内で可能性のある強いシュートを打てたのが切り札寿人だったことが、勝利への意欲を高めることになったのだと思います。東京は、塩谷と千葉を中心としたマークに苦しみ、後半は少し存在感をなくしていた翔哉が、にわかにシュートアテンプトを貰えたこと、そして翔哉自身がシュートを打てたことが、各アタッカーの攻撃ルートのシナプスをつなげる刺激になったのでしょう。この、サッカーの神様が悪戯心を芽生えさせたかのような突然の鳴動に呼応するのは、寿人か翔哉か。そして、終了間際に答えが降臨します。

後半アディショナルタイム+2分。東京陣に入ったあたりのモリゲのスローインから。まる、モリゲ、梶山、羽生が右サイドでボールを回してチャンスを伺います。これに絡んできた草民からの戻しをモリゲが受け、サイドを変えます。まるに渡します。まるの前方、広島陣に入ったあたりで翔哉が左に流れています。まるは翔哉につけます。攻撃スイッチが押され、広島陣に入ります。翔哉は丸谷を引き付けてターン。アタッキングサードに入ります。翔哉は前線から下がってきたバーンズに、タベーラをメッセージして預けます。意図を察したバーンズは、千葉を背負ってタベーラ。バーンズは戻った丸谷と塩谷のちょうど中間に落とす絶妙なパスを翔哉に送ります。翔哉が受けたポジションは、まさに翔哉ゾーン。ルックアップして卓人を確認した翔哉は、右足を振り抜きました。ゴラッソ。広島0-1東京。

神の小粋な啓示の余韻が覚めぬまま、試合終了。広島0-1東京。

エースと呼ぶにはまだはやいと思っていました。もう良いですよね?。エース翔哉。東京は、翔哉にゴールさせることを攻撃の軸にすることになるでしょう。東京にチームとしての方向性をもたらしてくれる選手は、よっち以来。テイストはまったく異なりますけど、シュートパターンのクオリティと威力は、翔哉のほうが安定感があると思います。その分、チームを作り易いでしょう。それから、前述の通り90分間闘えるようになりました。フル出場はガンバ戦に続いて今年二回目。攻撃面での最大のひと仕事への期待はもとより、守備面でのフィットと貢献を評価してのことだと思います。これからいっそうマークが厳しくなるでしょうし、まだまだいつどこで翔哉にショートさせるのか、洗練させる課題はいっぱいあると思います。チームとしての取り組みに期待します。

ぼくらの興味は、チームの成熟するさまをつぶさに現場で観ることです。でも、それだけではありません。欲張りなぼくらはタイトルを強く欲します。さあ、新生ルヴァンカップ最初の戴冠への道、準決勝浦和戦シリーズがはじまります。蛮勇による敗戦から二試合で、心身の準備は整いました。みんなで決勝に行きましょう。