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ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2019J1リーグ第14節FC東京vs大分トリニータ@味スタ20190601

2019-06-02 14:13:55 | FC東京

今年もそろそろ梅雨時をむかえます。

長かった連戦も今日でひと区切りです。選手、スタッフはもとよりですけど、応援するぼくらもひと息いれたいですね。

そしてシーズン前半戦のデーゲームも今日で最後。前節は暑気に悩まされたけど、炎天下からは離れることができます。

連戦最後は、注目の大分。上位を伺う好成績のみならず、昇格チームでありながら特異なサッカーが気になり、今年の観戦の目玉のひとつです。You'll Never Walk Alone♪

噂通りの、好感がもてる良いチームでしたけど、横綱相撲でねじ伏せました。

東京はヒョンスが依然サスペンションです。シフトはダイヤモンドの4-4-2。GKは彰洋。CBはモリゲと剛。SBは成と諒也。CMは拳人と洋次郎。メイヤは右に建英左に慶悟。2トップはディエゴと謙佑です。

大分もほぼ前節と同じ布陣です。シフトは3-4-2-1。GKは高木。3CBは右から岩田、鈴木、庄司。WBは右に今日は星左に松本。CMは島川と長谷川。2シャドウは右に小塚左にオナイウ。1トップは藤本です。

監督と選手でしたら師弟対決なのでしょうけど、監督とコーチの場合はなんていうんでしょうね。年齢と業績からみて、やっぱり師弟対決でしょうか。

いまさら大分のリーグカップ優勝イヤーからの歴史を振り替える気はありませんけど、長く苦難の時間を過ごしてきました。J3まで経験したのが逆によかったのか、片野坂さんとの出会いからシンデレラストーリーをたどり、今年J1に復活しました。片野坂さんとの出会いは、単なるシンデレラストーリーではなく、一個の非常に個性的なサッカースタイルの確立を果たしました。監督とともに急浮上するチームは数多あれど、スタイルを確立しえた幸福なエンゲージは、おそらく片野坂大分だけだと思います。

地方クラブのJ1昇格は、それ自体が美化されてしまっていて、アプローチが問われることはほとんどありません。でも正直いって、J1クラスとエレベーターチームのサッカーの質のギャップが、ここ数年開いてきているのが気になります。昇格クラブにはそれぞれの有り様がありますからこのことを深ぼるつもりはないのですけど、少なくとも大分は、低予算でも地方でも、ハンデを越えて質のよいサッカーができることを証明してくれています。願わくば、大分発のムーブメントが全国に広がってくれるますように。

片野坂さんのメソッドを聞いてみたいほど興味がありますけど、ここはあくまでも素人の観戦記ですから、目撃の範囲で片野坂大分をみていきたいと思います。片野坂さんは現役時代も多くの監督を経験してますけど、やはりコーチとしての経験をみると、ミシャと健太さんがもっとも影響を受けたのだろうと思います。ミシャイズムはシフトに現れていますし、健太イズムも個の能力を重視していることで伺えます。でも監督としての片野坂さんは、そのどちらとも違う、独自の世界観を作りあげています。

近年は、攻撃にかける時間を短くする、ショートカウンターが主流です。そのためのアプローチとしてフォアチェックがトレンドになっていて、パワーとスピードが技術に優る傾向にあります。片野坂さんもセグメントするとカウンタースタイルですけど、アプローチは必ずしもフォアチェックに頼りません。むしろ、リトリートを前提とします。藤本をはじめとする華やかな攻撃力に着目されますけど、実は守備がとても堅調で、この試合の前の総失点は一桁台でした。それを実現しているのがリトリートスタイルです。あえてフォアチェックのリスクを回避することで、ゾーンに対するケアを充実させます。興味深いのは、3バックシステムに有りがちな守備時の5バック化はなく、守備陣形は3+6です。フォアチェックではないですけど、サイドの守備の仕掛けは積極的です。おそらく東京のロングフィードを警戒するとともに、SBの位置を下げる意図でしょう。

ゾーンがコンパクトですから、東京はなかなかペナルティエリアに入ることができません。さすがディエゴ、建英、慶悟のポスト力でバイタルエリアを使うところまでは行けるのですけど、その先はなかなか形を作れません。前半は、何度か謙佑がCBの間を取れていました。でもそれをチームとして活用するには至りませんでした。東京の積極的なシュートアテンプトはペナルティエリア外からのチャレンジのため、大分守備網に脅威を与えるに足るものではありません。3ゴール入りましたけど、すべてセットプレーがきっかけですので、大分を流れのなかでは結局崩せなかったといえます。

なお、セットプレーといえば、大分のフルゾーンディフェンスも特異ですね。たしか他には仙台でしたか。オンプレー、セットプレーともにフルゾーンなのは大分だけでしょう。メディアには、奇策の意図を聞いてみていただきたいです。

このように守備で、形はミシャスタイルを彷彿とさせつつもリトリートは健太スタイルと、ここでも両師匠のおもかげを残しつつ、独自進化させた個性を発揮しています。でもそれ以上に個性的なのは攻撃です。注目はやはり藤本。藤本は寿人とプレースタイルが似ているようですね。てっきり高アジリティ系のアタッカーだろうと思いこんでいたのですけど、実際は、ゴール前一撃必殺の純然たるストライカーなのだろうと思います。

大分は、藤本が最終局面で勝負するシーンから逆算して攻撃を組み立てます。このために藤本を消すのですけど、お膳立てに個性があります。いわば3シャドウ。ポステコグルーマリノスを彷彿とさせる、高く位置取る高木を加えたビルドアップのなか、オナイウと小塚に加えて、右WBの星も絞ってポジショニングします。ミシャスタイルのシャドウはポスト役でもリズム作りと、セカンドアタッカーの役割が特長でしたけど、片野坂スタイルでは、もっと個の能力を全面に出した、チャンスメーカーを担います。オナイウはスペースメイクとドリブル。小塚は広範囲なカバー力。星は右エリアのスペースメイクにたけていて、三人の動き出しのタイミングが後方からのフィードを引き出し、一気にアタッキングサードを目指すというのが、片野坂大分のカウンターアイデンティティです。

大分の躍進を引っ張っているのは、ここからだと思います。アタッキングサードに入る時点まではシャドウの仕事ですけど、オナイウ、小塚、星は、きっちりチャンスに繋げるクオリティを持っています。おそらく、迷わず大胆に仕掛けることを意識付けされているからだろうと思います。なかでももっとも可能性を感じるのはオナイウ。もっと線の細い選手だった記憶があるのですけど、大分でのオナイウは、ゴールに向かう貪欲な圧力を感じさせる好選手に進化しています。

ただ今日の大分は、仕掛けは見せ場を作るのですけど、最終局面の勝負にまで持ち込めません。結果的に藤本がほとんど目立たなかったのは大分自身の藤本を消す作戦に由来していることですけど、東京守備陣が、藤本が仕事をすべき場面で藤本を消えたままにしていたのもまた要因です。大分のアタッカーは静から動の変態を基軸とするようで、あまり運動量は高くはなく、藤本はとくに動きません。そのなかでも一瞬のスペースギャップを作る能力は、まだまだ藤本は寿人の領域にはいたってないようです。

ちょっと横路にそれますけど、おもしろい試合になる条件があると思っています。それは守備が上手いことと、プレーが過度に途切れないことです。もしかすると本質は同じことを意味しているのかもしれません。この二つは、観戦の安心感とリズムを生み出します。もとより東京はこの条件を満たしているのですけど、試合がおもしろくなるためには相手も同質でないと成立しない。上位との対戦が高クオリティになるのはこのためだと思っています。大分は、昇格チームながらこのカテゴリーに入るチームです。無駄なハードコンタクトがなく、かつインプレー時間が長いので、時間があっという間に感じます。

互いに見せ場を作りつつ、なかなか有効な攻撃ができないなと思っていたら、試合はセットプレーから動きます。

30分。大分陣深くの成のスローインから。成、ディエゴ、建英に対し、庄司、島川、松本の3on3がはじまります。仕掛けは建英でした。ボールをゴールライン際に運んでペナルティエリアを狙います。松本がマッチアップしますけど、チームルールで建英にはダブルチームをかけることになっていたのでしょう。島川がフォローにいきます。ディエゴがゴール前に入ったので庄司もラインに戻ります。これで成がフリーになっていました。大分のミスです。建英は成に渡します。この時ゴール前は、慶悟に鈴木、謙佑に岩田、ファアの諒也に星がついています。でも中央やや下がり気味にいた拳人がフリーでした。ルックアップした成はこれを確認して、拳人にクロス。小塚がニアでカットしようとしますけど時すでに遅し。成のクロスは安全圏を飛びます。拳人は少しファアに流れ、なんなく合わせました。東京1-0大分。

今日の東京のハイライトはここから。東京は、おそらく意図的に、フルコートでハイプレスを仕掛けます。通常先制するとリトリートするのですけど、今日はあえて、大分の逆襲機会を削ぐために、ハイプレスをかけたのだと思います。これが見事に奏功して、先制後もリズムを維持することに成功しました。そして、またまたセットプレーから追加点が生まれます。

39分。諒也の左CKから。星がクリアしたボールを建英が拾います。建英はまだカオス状態のゴール前にパス。これはオナイウにカットされます。オナイウは前方を右サイドに流れる岩田にパスしますけど、これを慶悟がカット。イーブンボールを建英が拾い、寄せてきた小塚を振り切ってドリブルスタート。一気にカウンターが発動します。建英はそのままペナルティエリアに入り、落ち着いてルックアップ。複数の選択肢のなか、選んだのはシュートでした。左足を振り抜きます。鈴木の股抜きを狙ったシュートは、鈴木の足に当たり、コースが変わります。高木のグラブの先をかすめて、ゴール左隅に突き刺さりました。ゴラッソ。東京2-0大分。

東京の好調は、もちろん技術やフィジカル、あるいは作戦の有効性によるものですけど、試合運びのメリハリも過去にはなかったことですから理由の一翼だろうと思います。この点では大分との違いは顕著です。大分はカウンターを狙ってアタッカー、とくに藤本とオナイウが守備に参加しないことも多いのに対し、東京のディシプリンは、もはやレゾンデートルになっている謙佑のみならず、ディエゴと建英にすら、行き届いています。これは今年に限ったことではありません。選手、スタッフのみならず、ぼくらサポにいたるまで、東京の絶対的な価値観です。前半はリードして終了。

後半の入りかたも今日は万全でした。よく言われる二点リードの怖さは単なる精神論なのですけど、サッカーが勢いに影響されるスポーツであることも事実。それゆえ今日は、慎重なまでに流れのコントロールにチーム全体で気を使ったのでしょう。その顕著が、先制直後と後半のスタートだったと思います。

東京のフォアチェックと、そこからのトランジションの好循環を止められなくなったため、片野坂さんが動きます。二枚同時代えです。星に代えて後藤を同じく右WBに投入します。

島川に代えてティティパンを同じくCMに投入します。とりあえず中盤のパワーを上げて、東京の好循環を止めること。さらには前線で基点になってボールを動かせる選手を増やす意図だと思います。

この作戦が奏功したわけではありませんけど、試合の流れが共鳴します。

59分。高木のパスを受けた鈴木のロングフィードをオナイウが落とします。これを小塚が受け、キープ。この時前線では、一度中央に寄ったオナイウが、拳人が小塚のチェックにいった後にスペースができたのを見て、入ります。小塚はオナイウにつけます。オナイウは右足でボールを置き、たぶんシュートと決めていたのでしょう。ターンしながら左足を振り抜きました。寄せていた剛はノーチャンスでした。ゴラッソ。東京2-1大分。

追い上げられたのですけど、オナイウのシュートが良すぎたので、あまり脅威には感じませんでした。直後に片野坂さんが動きます。シフトを4-2-3-1に変更します。松本が下がって左SBに入ります。トップ下は小塚。これが今日のターニングポイントになりました。直前の時間帯にオナイウにボールを集めることで攻撃のかたちができていました。その意味ではオナイウのゴールは必然で、順目を取るならもっとオナイウを活かしてもよかったと思います。ところがシフト変更によって、オナイウのポジションが下がるとともに、チームの勢いも止まります。結果論ですけど、以降、試合がすっかり落ち着いてしまったので、自滅といってもいいと思います。

健太さんは、流れが逆流しないことを確認して動きます。謙佑に代えてインスを同じくトップに投入します。今日はあくまでも、積極的に守備からイニシアチブを握る作戦で徹底します。インスの変わらない熱量がチームを引っ張ります。

それでも片野坂さんは作戦を戻しませんでした。岩田に代えて三竿を投入しますけど、シフトはそのまま。三竿は左SB、松本が右SBに回ります。本職のSBにチェンジしてサイドアタックの可能性を探る意図だと思います。

当時に健太さんが動きますけど、アクシデントからのコンディションの考慮です。足を痛めたディエゴに代えて輝一を同じくトップに投入します。

すぐ後に、またもやアクシデントです。同じく足を痛めた慶悟に代えてサンホを同じく左メイヤに投入します。連戦最終戦にきて、やっぱり疲労がたまっているのでしょう。二人とも大事がないことを願います。

勝敗は、大分が自ら落ち着いちゃった時点で決まった感がありましたけど、最後の最後におまけのような追加点が入ります。

後半アディショナルタイム+1分。後藤の右CKを東京がクリアした、小塚のスローインから。小塚はバックパスのイメージでティティパンに渡します。これに建英がチャレンジ。あわてたティティパンは高木にホスピタル。これを建英が拾います。建英は飛び出していた高木を振り切り、無人のゴールにコロコロコミック。東京3-1大分。

建英の代表初選出を祝う機会になりましたね。このまま試合終了。東京3-1大分。眠らない街♪

リトリートすることで東京のフォアチェックとカウンターを無力化し、クロスカウンターを狙う大分の作戦を正攻法でねじ伏せました。まさに横綱相撲。なによりも、初敗戦直後の試合だったにもかかわらずベストパフォーマンスを示せたことが良かったと思います。WE ARE TOKYO♪

それを裏付ける心身のリフレッシュが十分だったようですね。先週の大阪よりいくぶん過ごしよかったとはいえ、梅雨にかかりつつある湿気がありました。チームのリカバリー力の高さがうかがえます。拳人のシュワッチ建英のシュワッチ

今シーズンの鍵は6月だと思っています。例年、6月の中断期間を濃密に過ごしたチームが優勝に辿りつくことが多く、昨年の川崎が典型でしょう。後半延びてくるチームに対し、東京はまだ伸び代があるのか。もちろんアドバンテージがありますからまずは現状のチーム状態の維持が優先だと思いますけど、さらなるステップアップのため、チャレンジを続けてほしいと思います。


2019J1リーグ第12節FC東京vs北海道コンサドーレ札幌@味スタ20190518

2019-05-18 23:05:18 | FC東京

風のなかに湿気を感じるようになりました。そろそろ春もおわりですね。

長かった長かった連戦も、好調のままに過ごしていると、気づいたらあと三戦。ただラスト3ハロンは苦手が続きます。

最初の対戦は札幌。苦手ミシャサッカーの現在地です。北海道にはなつぞらでシンパシーを感じる2019年ですけど、今日ばかりはさにあらず。You'll Never Walk Alone♪

前後半でまったく違うチームになり、最後は横綱相撲で快勝です。

東京はベストメンバーが戻ります。シフトはダイヤモンドの4-4-2。GKは彰洋。CBはヒョンスとモリゲ。SBは成と諒也。CMは洋次郎と拳人。メイヤは右に建英左に慶悟。2トップはディエゴと謙佑です。

前線に怪我人がたてこんでいる札幌は、チャナが戻りました。シフトは3-4-2-1。GKはソンユン。3CBは右から進藤、ミンテ、福森。WBは右にルーカス・フェルナンデス左に菅。CMは宮澤と深井。2シャドウは右に荒野左にチャナ。1トップは武蔵です。

前半と後半でまったく異なるチームになることは時々目にすることですけど、それがその場の想いつきではなく、ぼくらファンが分かるほどに監督の明確な意志によるものであることはめったにないことです。それも、シーズンイン、いや編成時点からの意志であればなおさら。今日は、健太さんが描いた2019年東京の理想形を示すことができた、エポックメイキングな試合だったのではないかと思います。

というわけで、今日は前半と後半の対比をしてみたいと思います。いつもは相手チームから観ていくのですけど、今日は札幌。もはや見慣れたミシャサッカーですからあえて省きます。とはいえサッカーはいうまでもなく相対的なスポーツ。今日の東京の成果は、相手がミシャ札幌なればこそです。そういう意味でも、まずはミシャと札幌に敬意を払いたいと思います。

前半と後半をあえて特長付けすると、前半は受動的なサッカー、後半は能動的なサッカーです。受動的という表現はなんとなくネガティブな響きがしますけど、サッカーにおいてはけしてそんなことはありません。まだまだ能動的なサッカーを良しとする傾向がありますけど、サッカーが本質的に相対的であればこそ、実は受動的なサッカーのほうがおもしろさの密度が高いと見ることもできます。受動的サッカーの国内第一人者の東京サポであれば、いわずもがな既知の通り。

東京は通常通りの闘いかたで臨みます。ディエゴと謙佑を走らせるロングカウンターモードです。ミシャサッカーが本来はポゼッションスタイルであることもあり、札幌に攻撃権を渡しつつ、そうして作られたスペースを狙う作戦です。ところが札幌は、これは札幌のオリジナルでもあるのですけど、二つの点でミシャらしくありません。ひとつ目はハイラインです。ふたつ目は縦に急ぐ攻撃。そう札幌は、ミシャなのにハイプレスからのショートカウンターを主武器とするスタイルなのです。

札幌がコンパクトな5+4の守備陣形を敷きつつフォアチェックは控えるため、自ずと東京も攻撃権を持たざるを得ません。互いにカウンターを伺いながらポゼッションを強いられるジレンマに入っていきます。でもこの展開を望んだ札幌にとっては思うつぼだったでしょう。ポゼッションの相四つとなるとそもそもポゼッションスタイルも作戦として持ち合わせる札幌のほうに分があります。CMを一枚下げることでサイドCBを上げ、そのままWBを最前線まで押し上げるミシャ独特の攻撃陣形が機能し、攻撃方向を左右に散らすことで東京のプレッシングを避け、ボールを保持し続けます。これで試合のイニシアチブは札幌に渡ります。

札幌の調子のバロメーターはサイドCBです。ともに超攻撃的な進藤と福森が基点ではなく最終局面でシュートに絡む仕事ができているときは完全に札幌のリズムです。とくに福森のタスクはさらに進化しています。ときにゴール前でトップ下のような役割を担います。どうやら東京は、札幌に上手くふるまわれ、ネガティブな意味で引かされることになります。受動性があだとなります。

この時間帯に失点しなくて良かったと思います。失点しなかったのは、ミシャサッカーの負の癖が働いていたこともひと役かいました。札幌は攻めこむ割にシュートを打ちません。もちろん例によって東京の守備陣形に隙がなく、ペナルティエリアに効果的に入れないことも起因しているのですけど、ペナルティエリアに入ることを目的とするあまり、シュートへの積極性を見失ったような攻撃が繰り返されます。なまじプラン通りに進められたもので確実性を優先したのか分かりませんけど、多少遠目からでもフリーで狙われたほうがよほど怖かったと思います。

一方東京は、ディエゴと謙佑のコンビ、あるいは建英と成のコンビでなんとか高い位置に進入し、攻撃のアプローチを試みます。このチャレンジのおかげで、札幌にイニシアチブを渡しつつも、いつでも一矢報いられる態勢を作ります。前半は、緊張感あふれるつばぜり合いのなか、それでも札幌が望むサッカーを見せながらもスコアレスのまま終了。

後半も、スタート時点は互いに前半を踏襲します。東京もとくに押し込まれ続けたわけでもなく、有効な攻撃を見せていましたから。まずは無敗の流れを尊重したというところでしょう。

きっかけは謙佑が負傷したことです。健太さんが動きます。謙佑に代えてサンホを、いつもよりちょっとはやめに投入します。同時にシフトを4-2-3-1に変更します。サンホは右WG。建英がトップ下に入ります。謙佑に深刻な影響があるようには見えませんでしたので、直接的には大事をとって交代させたのだと思います。連戦も終盤ですし。

ところが、この交代で試合展開はガラッと劇的に変わります。あれほど堅調を保っていた札幌守備陣が、まるで別チームのように不安定になります。理由はもちろん東京の作戦変更です。まずサンホ。建英と違って、アグレッシブに縦に仕掛けるスピアタイプのサンホが狙ったのは菅の背後のスペース。これによって、菅をフォローすべく福森が本業のDFの仕事に専念することを強いられます。たったこれひとつで、札幌得意の包囲網型攻撃陣形の一画が崩れます。同様にディエゴがルーカスの背後にダイアゴナルに入ることを繰り返すことで進藤の位置を下げます。さらにディエゴとサンホは撹乱だけでなく、ポスト役もこなします。こうして東京は、左右のサイドの高い位置で基点を作ることができるようになりました。

このことは副産物を生みます。いやむしろ、健太さんのホントの狙いはこちらだったのでしょう。札幌の堅陣の中央にスペースができるようになります。もちろんミンテと両CMがいるのですけど、東京の攻撃が左右にワイドになることで、三人のポジショニングにもズレが生じ易くなります。そしてそこには建英がいます。建英はまさに水を得た魚の如しでした。次々とフリースペースでパスを受け、仕掛けます。建英が中央で時間を作れるようになることで、ディエゴとサンホも仕掛けられるようになるポジティブスパイラルが生まれました。

こうして東京は、前半とは真逆で自ら能動的にペースを握りにいき、成功します。この影には、ディエゴを引き留め、建英を呼び戻し、サンホにラブコールした、編成時点からの今シーズンの長い積み上げがあります。きっと健太さんは、受動から能動に切り替えられる、二枚腰を持つチームを作りたかったのだと思います。どちらがメインというわけではなく、相手や状況によってスタンスを変えられる、そんな懐の深いチームの姿を垣間見ることができました。そしてすぐに結果として結実します。

59分。アタッキングサードに入った辺りの成のスローインから。これを受けたサンホの落としからの建英の仕掛けはミンテに防がれます。ミンテは宮澤に渡してクリアを願いますけど、コントロールミス。宮澤のトゥに当たってイーブンになったボールにディエゴが仕掛けます。あわてた宮澤は荒野にホスピタル。これが、荒野の前に入った諒也へのパスになりました。諒也はソンユンを見て、丁寧に左足で流し込みました。東京1-0札幌。

かたちは札幌のミスによる自滅ですけど、チーム全体が縦に仕掛ける意欲がパワーアップしたことにより、札幌のミスを誘引したのでしょう。そして、勢いのまま一気に突き放します。

69分。ミンテのFKから福森が一気にアタッキングサードの菅を狙ってフィードを送ります。菅はサイドを変えようとルーカスに送ります。ルーカスは慶悟と競り合いながら落としますけど、コントロールミス。イーブンボールになります。これを拾ったのはディエゴでした。カウンターが発動します。3on3。ディエゴは素直に前方を走る建英に渡します。ペナルティエリアでパスを受けた建英はもはや完全に時を独占していました。進藤が対峙していたのですけど、建英がボールを持った瞬間、ゴールが予見できました。東京2-0札幌。

なんとなく建英は一本でたら量産態勢に入るんじゃないかと思っています。これまでは、ポジションも影響してちょっと難易度が高いシュートが多かったのですけど、それがポストやバーに当てていた原因だと思います。最前線に入ることが増えると、今日のようなイージーなシチュエーションも増えると思います。

これまでさんざ苦しんできたミシャスタイルですけど、壁を越えてみると案外壁は薄かったですね。ミシャスタイルには能動的なサッカーで立ち向かったほうが良いということなのでしょう。それでもやっぱり、ブレイクスルーを果たしたのは、作戦に選手のクオリティがシンクロしたおかげです。これまで苦しんできた分、逆に得意にして取り返したいですね。

もちろん札幌には、駒井もアンデルソン・ロペスもジェイもいないというエクスキューズがありますし、札幌ドームの魔物という最大の味方もあります。アウェイが楽しみです。さて、ビハインドを追ってミシャが動きます。菅に代えて中野を同じく左WBに投入します。サイドアタッカーのコンディションを考慮するミシャの常套です。

ミシャが続けます。荒野に代えて金子を同じく右シャドウに投入します。これもシャドウのクオリティ維持のため。常套。

さらにミシャが重ねます。ルーカスに代えて白井を同じく右WBに投入します。これもいわずもがな。作戦の幅の狭さは、ミシャの不得手な部分です。極端にポリシーに準じる信条ゆえですから、いたしかたないでしょう。

同時に健太さんが動きます。建英に代えてマコをCMに投入します。同時にシフトを4-4-2に戻します。洋次郎がトップに回ります。ちょっとはやいのですけど、クロージングの意図です。

札幌が縦に急ぐようになります。カウンター偏重になってくると札幌は、チャナにボールを集め、状況打開を託します。チャナのドリブルは十分脅威なのですけど、あまりにもチャナに集め過ぎるとさすがにチャナも困るでしょう。それにしてもチャナに対峙し続けた拳人の粘り強さは、今日の勝利を引き寄せたポイントでした。そもそも札幌がペナルティエリアに入れなかったのは、拳人をはじめとする中盤の守備が強固に安定していたためです。

そして、健太さんが〆ます。ディエゴに代えて輝一を同じくトップに投入します。試合は安定していたのですけど、輝一の気迫を感じたんじゃないかと思います。

輝一の引っ張りもあり、引きすぎることもなく、安定のまま試合終了。東京2-0札幌。眠らない街♪

ミシャを撃破した感慨は、東京の強さ、逞しさのむこうにあまり感じませんでした。好調のなかにあっても、やっぱりレギュラーに頼らざるをえず、去年のことがありますからどこかしら先行きへの不安をそこはかとなく感じていました。でも、どうやらようやく、去年とはちょっと違うんじゃないかと実感できるようになりました。You'll Never Walk Alone♪

無敗であることも忘れるほど、連戦疲れで落ちるどころか、チーム状態は上がっているように思えます。お休みしていた諒也がリフレッシュできたのか、活き活きしていました。諒也に限らず、やりくりのなかチームのコンディションとモチベーションの調整が上手くまわっていることがうかがえます。彰洋と諒也と建英のシュワッチ。

さて、いよいよ因縁のヤンスタです。


2019J1リーグ第11節FC東京vsジュビロ磐田@味スタ20190512

2019-05-13 22:42:56 | FC東京

梅雨のまえの初夏は、街がいちばん華やぐ季節。

母の日です。青赤のお母さんにとって幸せな一日になりますように。

休み明けのせいか、ひさびさの長期出張のせいか、つかれが抜けない週末。でも、週末にたのしみが待ってるっていいですね。

五月のホーム初戦は、磐田。You'll Never Walk Alone♪

建英の建英による建英のための試合!

東京は洋次郎がサスペンション。ヒョンスがふたたびお休みです。さらに諒也もお休み。連戦の影響がそろそろ心配になってきました。シフトはダイヤモンドの4-4-2。GKは彰洋。CBはモリゲと剛。SBは成と宏介。CMは慶悟と拳人。メイヤは右に建英左に晃太郎。2トップはディエゴと謙佑です。

磐田は前節と同じオーダーです。シフトは3-4-2-1。GKはカミンスキー。3CBは右から祥平、健太郎、新里。WBは右に松本左に大記。CMは田口と上原。2シャドウは右にアダイウトン左に大貴。1トップは中山です。

時として、サッカーをことばで表すことはナンセンスになります。そんな試合が数年に一度くらいあるのですけど、今日はそんな試合でした。それも嬉しいことに。

いちおう、サッカーをことばにすることが主旨のブログなので、レゾンデートルのために建英がゴールするまでのお膳立てを振り返ります(^_^;)

現状の磐田にはイメージがありません。あまり過去を引きずっても意味がないのだけど、王者であったころの闘いかたは今は微塵も感じられません。もともと当時も選手ありきのスタイルでしたから、型があるようで無いのが、いまとなっては磐田のスタイルだったのでしょう。現実問題としてJ1に留まることが目標でしょうから、持てる編成と状況に合わせてアジャストしていくことがマネジメントの仕事になると思います。

そういう事情もあり、名波さんはリアリストなイメージがあります。今シーズンもなかなか編成が揃わず、調子が上向かなかったけど、前節満員のアウェイでドラマチックに勝ったことを受け、ようやく2019年の本来のスタイルで闘うことができるようになったと思います。

磐田の基本は、サイド基調のポゼッションスタイルですけど、2ndオプションとしてカウンターも持つ、ハイブリッドスタイルです。1stオプションの特長は、CMの使いかたです。田口と上原は役割分担します。しかもダイナミックにポジション変更をするので、運動量が豊富です。基本的には上原が最終ラインに入ってオーガナイズするのに対し、田口は前に出て積極的に攻撃に絡みます。でも上原も頻繁に攻撃参加するので、必ずしも攻守で役割分担しているわけではないのでしょう。

本来の磐田は、超攻撃的な志向にあると思います。象徴的なポジションがCBです。祥平も新里も攻撃時には中盤までポジションを上げてポゼッションの基点になるとともに、最終局面に顔を出しことも度々あります。このあたりはミシャスタイルを彷彿とさせます。サイドCBを上げる意図は、もちろんサイドでスモールゾーンの数的優位をつくることと、WBの可動域を広げるためです。松本と大記はインサイドに絞って位置取ることがあります。攻撃参加するCMを絡めて中央で数的優位を作って、ポゼッションの効率を上げようという意図です。

磐田がよくある勇敢さのないポゼッションサッカーであれば、今日はいくぶんかくみし易かったでしょう。磐田が東京を苦しめた理由はむしろ、磐田のオリジナルスタイルにはないかもしれません。磐田が繰り出した東京対策はふたつ。ひとつは、密集度の高い囲い込みを基調とした守備です。ディエゴ、謙佑、建英は完全なるフリーを得にくくなっています。ディエゴと謙佑はスペース、建英はドリブルコースを消され、チームは縦への推進力を失いつつあります。むしろ磐田の矜持はここにあるでしょう。東京が誇るトリデンテが揃っていても各個に封じられる守備技術が備わっているわけですから。

もうひとつはカウンターです。磐田は攻撃にダブルスタンダードを持つチームです。おそらくアダイウトンがいて、かつ嘉人を使わなければ十分武器になる作戦だと思います。東京は、引けばポゼッション上げればカウンターという、多少機械的ではあっても判じ物のように繰り返す磐田のダブルスタンダードに苦しみ、流れを掴んではまた放すという、あまり見かけない展開に陥っていきます。前半はスコアレスのまま終了。

後半も前半の流れを踏襲します。磐田が繰り出すダブルスタンダードの対応はクリーンシートという結果や見た目以上に大変だったと思います。リーグ戦二回目のモリゲと剛のコンビは、終始安定していました。剛の対人防御技術は、前回のスターターの印象を翻すことなく、むしろ安心感すら覚えました。試合後にディエゴが剛に熱心に話しかけていた理由を、機会があったらぜひどなたか、ディエゴか剛に聞いてほしいと思います。もしもディエゴが自分と同じ気持ちであれば、称賛と感謝と、次は攻撃陣が頑張るぞという宣言を話していたのでしょう。

さて、先に動いたのは健太さんです。謙佑に代えて輝一を同じくトップに投入します。そろそろレギュラーアタッカーのコンディションを考慮しないといけませんし、これから暑くなってくると、バックアップからもヒーローを期待したいですから。

さらに健太さんが続けます。晃太郎に代えてサンホを同じく左メイヤに投入します。一段高い位置にメイヤを置く、攻撃的布陣で点を取りにいったのだと思います。それでも磐田の守備は崩れず、試合が動く気配が起こりません。

そこで名波さんが動きます。上原に代えて荒木を左シャドウに投入します。大貴がCM、アダイウトンが右シャドウにそれぞれ回ります。攻撃陣をリフレッシュする意図だと思います。

直後にアクシデントが起こり、名波さんが対応します。松本に代えて嘉人を左シャドウに投入します。荒木が右WBに回ります。嘉人投入は予定通りだったと思います。でもホントは最前線に嘉人を置いて、アダイウトンを走らせた後のセカンドアタッカーを期待したのでしょうし、そうであれば怖かったですね。中盤に下がる嘉人が空回りするシーンは、我々はさんざ見てきましたから。

さらに名波さんが重ねます。中山に代えて航基を同じくトップに投入します。磐田の攻撃は、アダイウトンもしくは中山におさまったときに機能していました。中山は泥臭く体をはってポストに徹し続け、十分に機能していたと思います。航基への交代はリフレッシュのためでしょう。

と、ここまでは、いちおうサッカーは22人+最大6人、90分間でやるスポーツとレギュレーションで決まっていることですから、形式上必要なレトリックに過ぎません。アクターたちもマネージャーも、懸命かつ真摯に長い長いプロローグを演じました。玄人好みの味わい深いアペリティフは、それはそれで十分美味だったのですけど、ゴールデンウィーク明けの日曜日という微妙なタイミングで、かつ話題性が少ない磐田相手にもかかわらず、多くのお客さん、とくに子どもたちやニューカマーのかたがいらしたのは、ただただ東京の新エースをみたいため。サッカーはひとりでやるスポーツではないけど、試合を決めるのはたったひとりのエースの仕事。

84分。宏介のCKからモリゲのシュートをカミンスキーに止められた直後の、もう一度宏介の左CK。ファアに上げた宏介のクロスを今度は剛がシュート。これは航基にクリアされますけど、ロブになります。最初に落下点についた大記がヘッドでクリア。このボールがフリーの建英の前に落ちます。建英はバウンドを合わせ、左足ダイレクトボレー。これがゴール右隅につきささります。ゴラッソ。東京1-0磐田。

歓喜。

健太さんが粋に〆ます。建英に代えて怜を同じく右メイヤに投入します。建英に喝采を贈る時間をつくるとともに、もうひとりの秘蔵っ子、怜を披露しつつ、怜に刺激を送る意図でしょう。建英がブレイクスルーを果たしましたから、次は怜の番。

もはやエンドロールが流れるなか、ただただ喜びの時間が流れます。このまま試合終了。東京1-0磐田。眠らない街♪

ついに建英が東京でJ1リーグ戦初ゴールです。建英をみんなで祝福する様子を見ても、チーム状態のよさという表現を越えたあたたかさすら感じさせられました。東京にもファミリーができた瞬間だったかもしれませんね。建英のシュワッチ

磐田には申し訳ないけど、首位攻防から続く難敵、さらに札幌、セレッソと苦手を迎える谷間のような節は、それはそれで難しい試合になるかなと思っていました。東京は伝統的に五月の下位相手に苦労しますから。まして前節ドローの後で連続スコアレスは、さすがにバイオリズムの低下を言われても抗えない状況になりかねませんでした。建英のひとふりが、いろんな意味でチームを救ってくれました。

以前無敗ですけど、案外勝ち点差は開かず。さらに名古屋と川崎という実力者が追撃態勢を整えて狙ってきてます。記録なんか意識してられない緊張感はもちろんはじめての経験。ドキドキの週末がまたきます。


2019J1リーグ第10節ガンバ大阪vsFC東京@パナスタ20190504

2019-05-04 23:32:12 | FC東京

ゴールデンウィークも終盤です。楽しいとときがたつのははやいてすね。

短期間でいろいろやっているとメインがなにかわからなくなってしまうのですけど、連休の最初と最後は本業に戻ります。

最後に訪れますは、大阪。春の北海道から、空路一気に初夏の関西に。本日はガンバとのアンブロダービーです。You'll Never Walk Alone♪

ガンバイズム全開のらしいサッカーに終始主導権を握られ続けましたけど、終わってみればドロー。

東京は今日も成がおやすみ。シフトはスクウェアの4-4-2。GKは彰洋。CBはヒョンスとモリゲ。SBは諒也と宏介。CMは洋次郎と拳人。メイヤは右に建英左に慶悟。2トップはディエゴと謙佑です。

調子がなかなか上がらないガンバは今日も日替りオーダーです。シフトは4-2-3-1。GKは東口。CBはヨングォンと菅沼。SBは右に米倉左にジェソク。CMは秋と高。WGは右に小野瀬左にアデミウソン。トップ下はヤット。1トップはウィジョです。

ガンバが問題を露呈してくれれば、多少なりとも現状の課題をみることができるのですけど、変ないいかただけど弱いガンバがまったく垣間見られません。今日は実に強かった。

恒様の選択はヤットシステムへの回帰でしょう。ガンバは長年、ヤットを作戦の主軸に据えたサッカーで闘ってきました。主軸という表現も生易しく思えるほど、ヤットが生み出すリズムが試合そのものを作ります。いわばヤットは創造主。ヤットはガンバそのものです。結果がともなわなければ単なるお山の大将なのですけど、ガンバの実績は既知の通り。このようなプレイヤーはホントに稀有だと思います。近年は、スピードやパワー、局面のテクニックが売れる選手の定義ですから、ヤットのようなスタイルは、もはやクラシカルといっていいでしょう。その意味でも、ヤット時代を直に目撃できるぼくらは、後年に誇れる経験をしていると思います。

とはいえ、ヤットは全知全能の神ではありません。そもそもゴールが唯一の目標であるサッカーのなかにあって、ゴールゲッターではありません。ヤットとはいえ行動と視野、読める手の数に限りがある、と思います。たぶん。このため歴代の監督は、ヤットをどこで使うかが悩みであり、作戦のすべてといってもそれほど大きくはずれていないと思います。

もちろんヤットも年齢を重ねましたから、その視点でガンバの問題を語ることもできるでしょう。でも少なくとも今日のヤットには、フィジカルと判断に衰えをまったく感じませんでしたから、ここではあえて封印します。第一、ヤットのプレイヤーとしての季節の曲がり角を証明するものがなにもありませんから。

ヤットの選択肢は三つ。CM、トップ下、トップ。チームがイニシアチブを握りたいのであればトップ下。ディフェンスをハードにしたいのであればCM、直接的な効果として点を取りたいのであればトップ。つまり今日は、選択は簡単だけど結果も想定の範囲内という、ヤットシステムの象徴のような試合でした。

今日の恒様の選択は、前節の敗戦を受け、試合を安定させることを優先すべきでしたし、実際にそういう選択をします。ヤットをトップ下で使います。トップ下のヤットは行動範囲を広くとり、スペースにちょこちょこ顔を出してはパスのハブとなります。これによりガンバのパス回しは持続性を持ちます。ようするにボールロストがほとんどありません。ただ単にネガティヴトランジションを回避するのであれば、不得手なチームはバックパスを多用します。ガンバは違います。前提としてすべての選手の技術が高いので、高い位置でパスを回すことができます。今日はこれが重要なポイントでした。

東京は、フォアチェックが効きません。トライしても、ガンバの巧みなスペースメイクとパスの前に空振りになります。否そもそもチャレンジができません。そして安易にリスクを犯せないので、自然発生的にリトリートすることになります。東京の重心が下がればトランジションポイントが下がります。このためカウンターの基点が下がります。さらにガンバは中盤以外のポジションを大きく崩しませんから、カウンターの芽が出てもはやめに潰すことができます。

もちろん作戦として成就するには、ソフトである選手がよくなければなりません。その点でも、ガンバは完璧でした。おそらくファーストミッションは、東京の攻撃の起点を潰すことだったのでしょう。このためディエゴも謙佑も建英も、ダブルチームを常態としたガンバの厳しい局面守備の前に、なかなか東京らしいカウンターのチャンスを作り出せません。

一方ガンバは、一方的に攻撃権を持つわりに、ゴールができません。アタッキングサードでフリーマンを作るところまではできるのですけど、ペナルティエリアに良いかたちで進入できません。つまるところ、東京守備陣を混乱させるクオリティをアタッカーが生み出せなかったということです。ここに、ガンバ独特のジレンマがあります。ガンバは宇佐美や井手口、堂安など、次代を担う逸材を間隔をあけず育ててきました。でも結局海外に送り出すことになってしまいます。小野瀬は前に進める魅力的なアタッカーですけど、ガンバの普遍的な武器にはまだ成り得ていません。加えて、アデミウソンの推進力もまだまだ不足していますから、これではただでさえJリーグ屈指の堅固を誇る東京守備陣を脅かすことはできません。

見かたを変えると、今日は王者だったころの迫力を取り戻していたガンバを向こうに回し、イニシアチブこそ明け渡しながらも、あくまでも掌中にとどめていた東京守備陣の安定感を想うのですけども、そこはもはや、なんていうか当たり前。つまりは、王者だったころのガンバをも屈服させる圧倒的な守備力を東京は身につけたということだと思います。

ただし、それで万事よしという判断は健太さんにはなかったようで、受け身姿勢を変える要求をなんどもベンチから出していました。後半のアジャストはいかに。前半はスコアレスのまま終了。

さて、先にアジャストしたのは意外にも恒様でした。後半頭から動きます。高に代えて今野を同じくCMに投入します。中盤の支配力を上げ、なおかつ事実上枚数を減らして、攻撃の厚みをさらに増す、超攻撃的作戦です。

これが大いに奏効します。今野が圧倒的な存在感をみせ、東京のチャンスの芽を摘み続けると、守備陣も前に出て守ることができます。ヨングォンと菅沼のコンタクトが激しくなってきたようにみえたのはこのため。守備で優位にたてた分、秋を前目で使うことができ、SBも前半以上に高めの位置取りができるようになります。

ただし、当然リスクが伴います。逆に、東京のカウンターのかかりが良くなります。ガンバの守備の枚数が実質減ったため、ディエゴ、建英のがんばりが効くようになります。このため東京の重心がようやく上がります。恒様もこれで良しと踏んだのでしょう。試合は少しばかりオープンになるとともに、局面のコンタクトが激しくなっていきます。もしかしたら、どちらかでもゴールをこじあけていれば、点の取り合いになったかもしれませんね。

さて、健太さんが動きます。洋次郎に代えて晃太郎を左メイヤに投入します。慶悟がCMに回ります。むしろ健太さんのほうがオープンファイトを嫌ったかもしれません。中盤のポジションの流動性がなくなる変わりに、ポストの目標が増えます。

さらに健太さんが動きます。謙佑に代えてサンホを右メイヤに投入します。建英がトップに上がります。健太さんが建英システムを発動します。オープンな流れのなかで建英が存在感を高めていたので、エースに勝ち点3を託したのでしょう。やや右寄りの定位置に構える建英にボールを集め、そこを基点にアタッカーが裏を狙いはじめます。

それでもガンバはファイティングポーズを崩しません。東京とガンバ。お互いの高いレベルでの攻撃的な硬直化は、両監督にバランスを揺さぶる冒険的選択を許容させませんでした。以降、作戦変更はなし。このまま試合終了。ガンバ0-0東京。

なるほど点は入らなかったけど、両チームとも持てる魅力を出したので、随所でスタジアムが沸きました。見た目にも内容的にも好マッチだったといっていいでしょう。

依然、無敗は進行中です。妙な作戦もなく真っ向勝負の力比べで負け劣勢にたたされたわりには、覚悟が必要な危険なシーンもなく、安定していたと思います。ますます信頼感が増しました。

まだ夏前だけど、ゴールデンウィークでこの暑さだと夏場が大変そうです。デーゲームも多い今年ですから、しっかりと準備してほしいと思います。


2019J1リーグ第9節FC東京vs松本山雅@味スタ20190428

2019-04-29 21:05:56 | FC東京

ゴールデンウィークでございます。

平成と令和をまたがる10日間。

個人的に11連休は、またたびの予定。さっそく熊本、福岡とめぐったその足で、いったんただいま東京のホーム味スタ。

平成最後のJリーグ、味スタに迎えますは、山雅。You'll Never Walk Alone♪

山雅の作戦にはまりかけましたけど、ハヤブサの一撃で終わってみれば快勝です。

カメラが壊れまして、今節と次節は画像の質がよくないと思います。ご容赦ください。

東京はヒョンスがおやすみ中。さらに成がミッドウィークに怪我をして、大事をとっておやすみです。シフトはスクウェアの4-4-2。GKは彰洋。CBはモリゲと剛。SBは右に諒也左に宏介。CMは洋次郎と拳人。メイヤは右に建英左に慶悟。2トップは謙佑とディエゴです。

山雅は前節を踏襲。シフトは3-4-1-2。GKは村山。3CBは右から今井、飯田、橋内。WBは右にはゆま左に諒。CMはパウリーニョと宮阪。トップ下は中美。2トップはレアンドロ・ペレイラと大然です。

山雅は、山雅らしさをあえて捨てて臨みます。今日の東京は、今シーズンはじめて、昇格チームと対戦します。近年、Jリーグのカテゴリー間の格差が少しずつ開きつつあってとても興味深く思ってます。なんとなくカテゴリーごとにサッカーのポリシーのようなものができあがっている気がします。もともとJ2はその存在から得意なカテゴリーなのですけど、魔の時代から復活したJ1への投資が活発になって、J1の質量が大きく上がっていることが格差の要因ではないかと思います。

ただ、J1でもエレベータークラブはまだ投資の対象になっておらず、J1のなかでも格差ができつつあります。それでも同カテゴリーにいるため、格差ではなく個性として消化できているのですけど、今後、投資の範囲が広がるのか、バブルが収束するのか、あるいは逆に特定クラブに集中するのか、Jリーグの進化を見守りたいと思います。とはいえ、まだまだローカルクラブの寄り集まり感が残っていますから、どこかしら運動会めいたテイストがするのはこの国のプロサッカーの有り様として、継承すべき文化のような気がします。

さて、山雅は投資の先端にいる神戸を撃破した、ジャイアントキリングがたのしみなローカルクラブの象徴のような存在です。山雅の規模においてなおJ1で闘えることは、100年構想の目指す姿のひとつなのではないかと思います。それはサッカースタイルにおいても。

山雅は、松本の街の清廉さとホスピタリティーのあたたかさと反比例したスタイルをもっています。多くのチームは、とくにアルウィンでそのギャップに苦しめられてきたわけですけど、さすがにそろそろ、慣れてきました。東京が今シーズンここまで対戦してきたチームにはJ1の暗黙知のようなものがあるわけですけど、山雅はさりあらず。サッカースタイルというよりか、レゾンデートルそのもののガチのぶつかり合いを今シーズンはじめて経験します。伝統的にこのような対戦に苦労してきましたから、今後を占ううえで、最重要な試合だと思っていました。

ところが。かたすかしのように山雅は引きます。山雅といえば言わずもがなのガテン系スタイルです。いまさらなので詳細は省きますけど、フォアチェック基調という意味では同調する同士のどつきあいを期待していただけに、ちょっと、あれ?という感じでした。反町さんがリトリートを選んだ理由は、コートを変えたこともふくめよくわかりません。過去のどつきあいは案外東京に分があるので、どつきあい巧者同士の真っ向勝負は不利とふんだのかもしれません。

あるいは、山雅のサッカー自体が変質しているのかもしれません。山雅はどちらかというとソリッドなチームカラーでした。個のクオリティで勝負できる選手がいなかったからですけど、今年の山雅はそこが例年とちょっと違います。もちろんペレイラと大然。これまでの山雅は、それほど高さやスピードにこだわっていなかったと思います。そういう選手を得られなかったのかもしれないけど、それを補う工夫のエネルギーが強かったので、フィジカルの優位性を求める必要がないのかと思ってました。ところが、今年は圧倒的な高さをもつペレイラとスピードマンである大然がいます。それだけでも前回の昇格時よりJ1クオリティへのアジャストは整ったといっていいでしょう。

山雅のリトリートの理由が2トップだとすると、合理的ではあるけれど、まだ足りないものがあることは、同じくフィジカルをストロングポイントにしている東京を見続けてきたからこそいえることだと思います。強力2トップは一日にしてならず。ただ速い高い強い上手いを組み合わせただけでは脅威にはならない。そこには相性と運と作戦のハーモニーがかならず必要なのです。

東京が、スピードと高さに対し不安要素があるとしたら、ヒョンスがいないこと。でもその不安はまったくの杞憂でした。今日は激称すべき若者が二人います。いうまでもなく一人は建英なのですけど、もはやエースに対し称賛は失礼になるので控えます。もう一人は剛。東京のCBデビューでこれほど安定していた選手は史上初かもしれません。すでに経験があった加賀や丹羽はともかく、ヒョンスもカズもまるもヨングンも、それのみならずモリゲすらも、どこかしら荒削りな危なっかしさがありました。剛は高さとパワーでペレイラ、スピードでも売り出し中の大然を向こうに回し、まったく引けをとらないばかりか、むしろ凌駕してさえいました。個人的にスピード系のDFが大好きなことは、以前からご覧いただいているかたはご存知の通りですけど、剛のしなやかでスタイリッシュなスプリントは、ひさしぶりにぞくっとさせられました。局面のフィジカルのみならず、チャレンジングなインターセプトも東京の伝統芸を受け継いでいます。ぼくらは、ポストヒョンス、モリゲの担い手として非常に魅力的な選手を得ました。

山雅のリトリートは、結果的に裏目に出ます。あくまでも結果論として。理由はいざしらず、いずれ後半勝負の作戦だろうと思います。その意味で、前半でビハインドを追ったことは誤算だったでしょう。東京は攻撃権を持つ状況に手を焼きます。積極的に縦に仕掛けますし、サイドチェンジを多用してゆさぶります。それでも最終局面で山雅山脈を越えることができません。

そこで東京は、山雅を引っ張り出す作戦に変更します。きっかけは30分あたりの、山雅の三人のアタッカーが絡んだカウンターが決まったこと。東京は、これを好機と利用します。山雅に攻撃権をわたします。

山雅の印象が変わった理由のひとつはCMコンビのチョイスでしょう。質の高いコントローラーを二枚並べています。とくにパウリーニョは、山雅のほとんどの攻撃に絡んでいて、攻撃ルートの設定役です。中盤でボールをさばけるので、両WBが積極的に高く位置取ることができます。山雅の重心が上がります。

ところが、山雅が重心を上げることは東京の術中です。山雅の守備網にスペースができることを意味しますから。ややオープン気味になってきたところで、東京がカウンターを仕掛けるようになります。おそらく仕留める時間は長くはかけられなかったでしょう。山雅がふたたびリトリートすることが予想されましたから。そして、この難しいミッションをコンプリートします。

44分。宮阪が自陣でトランジション。カットしたボールを一気にペレイラにつけようとします。カウンターの発動です。追いついたペレイラは、脇を抜け出そうとする大然に渡そうとしますけど、これに剛がチャレンジ。カットに成功します。次にこのイーブンボールにチャレンジしたのは洋次郎とパウリーニョ。もつれながらかき出したのは洋次郎でした。これを拾ったのが建英です。建英は宮阪の寄せをあっさり振り切り、ドリブル。クロスカウンターが発動します。この時前線は、右から慶悟、ディエゴ、謙佑に山雅は3CBが揃ってますので3on3。ただ、建英がボールをもったのを見た謙佑がスワーブしながら抜け出そうとしているのを、マーカーの今井が見逃す大ミスをおかします。謙佑はあっさりフリーでゴールに向かいます。これをみた建英は謙佑にスルー。完全に抜け出した謙佑は左足で流し込むだけでした。東京1-0山雅。

建英は、おやすみが良かったですね。リフレッシュして、さらにキレと判断がパワーアップしています。どうか、日本中のサッカーファンに旬の建英を観にきてほしいと思います。神戸なんぞより格段にフレッシュで、驚きに満ちたエンターテイメントがここにはありますから。それでもちょっと不安なのは、リーグ戦の初ゴールまでまだ届かないこと。あと一歩が続きますから、一本出たら一気に量産しそうな雰囲気はあります。ゴールハンターとしての結果が残れば、名実ともにエース、大先生の呼称を得られるでしょう。

正直、勝ちに等しい先制ゴールを得て、前半はリードのまま終了。

後半に入り、さすがに山雅はリトリートを選択せず、攻撃姿勢で臨みます。先制点の状況とおなじく、オープンな様相を維持します。それでも肝心の2トップの個性が封じられていますから、なかなか有効な攻撃を打ち出せません。

そこで反町さんが動きます。二枚同時代えです。大然に代えて龍を同じくトップに投入します。

中美に代えて杉本を同じくトップ下に投入します。前線のテイストを変える意図だと思います。ここにきてようやく、山雅らしいアグレッシブを全面に押し出します。

これを受け、健太さんが動きます。謙佑に代えてジャエルを同じくトップに投入します。もはや説明不要。そしてさっそく奏効します。

77分。建英が橋内に倒されて得たPKを、ディエゴが落ち着いて決めました。東京2-0山雅。

今年は作戦変更が当たってる気がしますね。PKを取ったのは建英ですけど、直前のジャエルとディエゴのタベーラが効いていました。

PK直前に反町さんが動いてました。宮阪に代えてセルジーニョをトップ下に投入します。杉本がCMに回ります。アグレッシブ度合いをさらに高める意図でしょう。ビハインドが広がったけど、攻めないといけない状況は変わらないので。

それにしても今日の東京は、山雅の遮二無二な攻撃をあっさりいなす度量の深さがありました。ヒョンス、成不在のスクランブルながら、守備陣はまったくそれを感じさせません。守備のバックアップも整ってきているということだと思います。

ここからは逃げ切りの時間。健太さんが動きます。洋次郎に代えてサンホを左メイヤに投入します。慶悟がCMに回ります。中盤をリフレッシュする意図です。

そして健太さんが〆ます。今日のクローザーは、ディエゴに代えてお誕生日の晃太郎を同じくトップに投入します。

このまま試合終了。東京2-0山雅。

なんとなくソワソワしてきました。当面の山場を終えていまだに無敗。しかもフロック感は皆無。まったくもって強いとしか言いようがありません。充実の前半戦を送っています。眠らない街♪

平成最後、令和最初の首位にまあ意味はないけど、首位は首位。無敗もどこまで延びるか、楽しみです。不安は開幕当初から変わらず、レギュラーの離脱です。カップ戦もグループステージでいい位置につけたので、ステージクリアのために全力で臨むでしょう。連戦が続きますから、コンディションが心配でなりません。杞憂でありますように。謙佑のシュワッチ剛のシュワッチWE ARE TOKYO♪

令和最初の次節はガンバ。調子が上がらないのが逆に不気味です。変わらない安定でゴールデンウィークを締めくくってほしいと思います。