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ぽちごや

FC東京のディケイドSOCIOです。今シーズンは丹羽ちゃんとともに闘います。

2019J1リーグ第20節清水エスパルスvsFC東京@アイスタ20190720

2019-07-21 15:13:21 | FC東京

どうやらようやく東京も夏を迎えそうです。

京都の痛ましい事件の被害にあった方々に謹んで哀悼を捧げます。事件に直面した皆さまとご遺族に少しでもこころの平穏が訪れますように。

たまが帰ってきました。おかえり、たま!

7月最後のリーグ戦は、ひさしぶりにアウェイ。清水です。ふらっと出掛けられて旅気分も味わえる、好きな遠征です。You'll Never Walk Alone♪

攻守のバランスの完成度の差がはっきり出た快勝です。

東京はサンホがおやすみ。シフトはスクウェアの4-4-2。GKは彰洋。CBはモリゲとつよし。SBは成と諒也。CMは洋次郎と拳人。メイヤは右に晃太郎左に慶悟。2トップはディエゴと謙佑です。

清水は前節と同じオーダーです。シフトはスクウェア型の4-4-2。GKは西部。CBは立田と二見。SBは右にエウソン左に后。CMは竹内とヘナト。メイヤは右に河井左に西澤。2トップは北川とドウグラスです。

シーズン途中での修正力に長けた篠田さんは、ここ清水でもやはり実力を発揮されています。復活のドウグラスが引っ張る形を作り上げ、中位におさまるほどにチームを押し上げてきました。東京時代は、端正に最小限のアジャストを施してチームの方向性を明確にすることで勢いをつけ、その勢いをしっかり掴んで放さないことに努めて成功した記憶です。さて清水はいかに。

清水での篠田さんの仕事も、やはり同様のように見えます。それは編成に素直に従うこと。清水は小柄ながらも高アジリティで技術も高いタレントを多く持っています。そしてなんといっても、超攻撃的なSBが特長。さらに最前線には、キープ力がありかつ結果も残せるリーグ屈指の2トップが屹立します。清水の下部組織を含む編成方針の成果でしょう。チームのビジョンが分かりやすく、かつシンプルですから、篠田さんの打ち手もこれに乗っかる策をとったと思います。

清水は超攻撃的なチームです。言い換えると、攻撃に光明を見いだすことに割りきったチームです。ドウグラスの成績が示すとおり、攻撃力はリーグで通用することご証明されています。つまり清水は、ひたすら攻めることで守備の不安を補おうとしているのだと思います。攻守の切り替えのはやさ、ゾーンの確保、フォアチェックなど、基本的な守備タスクをこなしているけど、攻撃力を補完するほどのクオリティはありません。残念ながら、少なくとも現時点では、そしておそらく今シーズン中は、守備力を水準以上にすることは難しいと思います。

清水の攻撃の特長を表すキーワードは、サイドアタック、スモールゾーン、スルーパス、そしてドウグラス。清水は左右のバランスが取れたチームです。攻撃的なSBを持つ多くのチームはアシンメトリーにするけど、清水はエウソンを加えることで両サイドの優位性を手に入れました。これにより、SBを非常に高く位置取らせる作戦を採用することができます。メイヤとトップを下げることなく、SBを交えたトライアングルを形成できますから、サイドのスモールゾーンを攻撃視点で活かせます。これにより、相手のSBを引っ張りだし、その背後のスペースにアタッカーを走らせ、スルーパスを通すのが清水の基本的な攻撃スタイルです。

これを実現する下地として、超攻撃的なSBを持つことは前述の通り。加えて、スモールゾーンのボールキープとバイタルエリアを経由するスルーパスにつながるチャンスメークでは、組織として洗練されたスペースメイクとワンタッチパスの技術が活きます。これこそ、サッカーを深く知る国静岡が生み出し続ける財産であり、清水の永続性を支える原動力だと思います。これに最高クラスのフィニッシャーであるドウグラスをターゲットに据えることで、清水の選手が信じ、頼みにするフレームワークができます。篠田さんの真骨頂。

清水はおそらく今日は、攻撃偏重の躁状態を90分間続け、どつきあい上等のカオスを望んでいたと思います。これは、清水の攻撃力が東京の守備力をどこかで上回ることができ、かつ東京のカウンターを越える有効攻撃回数を得られることが前提です。これは賭けではなく、あくまでも作戦。そして清水のもくろみはハズレます。

篠田清水の勝ち点計算のなかで東京をどうとらえていたのかは興味深いところです。もしかすると今日の結果は想定内かもしれません。と思えるほどに、清水の強みの要素はことごとく東京にくつがえされます。今日は、極端に絞ると、両チームの中央の守備力を対比した試合でした。清水は、たしかに自慢のサイドアタッカーと2列目の技術でチャンスメークをするまではできます。でも最終目的地の中央にチャンスがつながらないと意味がありません。清水のフィニッシュパターンは多彩で、ドウグラスに合わせる以外にも、カットインやミドルまで持っています。でもいすれにしろ、東京の中央のゾーンでフリーマンを作らないことにはゴールには結びつきません。清水はオープニングブローから攻撃権を持つことに成功しますけど、結局この開始から15分間で先制できなかったことが、統制をくつがえせなかった原因になりました。

もう一つは東京のカウンター。清水は攻撃時のキープ力で間接的に東京のカウンターを封じようとします。実際に15分間は一度も東京にカウンターの機会を与えませんでしたから、作戦としては正しかったと思います。清水にとって残念なのは、清水が願う以上に東京のカウンターの威力は凄まじいものだったことです。やがて東京の最初のカウンターの機会が訪れます。

16分。清水の攻撃から。北川のミドルショートが洋次郎に当たります。イーブンボールが前線へ。この時前線は、謙佑とディエゴに二見、ヘナト、立田の2on3。先に追いついたのは謙佑でした。二見とヘナトを引きつけた謙佑は、ダイレクトでディエゴに落とします。これにヘナトが反応しますけど追いつかず。ディエゴが抜け出し、カウンターの発動です。アタッキングサードに入ったディエゴは、右にはたいてクロスを待ちます。成が上がりますけど、后の戻りがはやく、チャンスがありません。成は晃太郎に戻します。晃太郎は竹内とマッチアップ。ここでいきなり晃太郎に積極性が発動。アタッカーにすべてマーカーがついたので自分でいくしかないと覚悟でしょう。大きくカットインして竹内を振り切り、左足を一閃。ゴール左隅に突き刺さりました。ゴラッソ。清水0-1東京。

文字通り一発で仕留めるのですから、カウンターに対する称賛は凄まじいの表現も大袈裟ではないでしょう。かつ、サンホの台頭にたまの帰還と、常にきびしい競争下におかれる晃太郎が決めたことが、チームに厚みを加える付加価値もあったゴールでした。

この一撃は清水を怯ませるに十分でした。清水はあろうことか、自らの信条に反しリトリートします。この判断が試合を決定しました。もし清水が変わらず攻撃権をもつ選択をしたらと思います。この判断のおかげで表面化したのが、東京と比較して顕著に脆弱な中央の守備力です。清水の序盤の攻勢は、ヘナトの圧倒的な制空権が支えていました。なので個の能力では清水もけして悲観するものではないと思います。でも組織的な守備クオリティはまだまだ未達。東京得意の縦の出し入れにあっさりバイタルエリアを明け渡してしまいます。

ここからの15分間は、最初の15分の真逆になります。東京が細かくクレバーな組織的スペースメイクを駆使して、攻撃権を掌握します。そして追加点が生まれます。

30分。慶悟の左ショートCKからはじまる、1分13秒間にわたるポゼッションから。この間清水は、東京のパス回しに一回もボールに触れませんでした。きっかけは洋次郎がディエゴにつけたポスト。ディエゴは二見を背負ってキープ。晃太郎に落とします。晃太郎は中央を上がった洋次郎にダイレクトで渡します。中央に集まる清水の陣形を見た洋次郎は、左サイドにスルー。追いついた諒也のクロスはゴールを跨ぎますけど、そこに成。成の折り返しの落下点にいたのはエウソンでしたけど、近くにいた謙佑がするするっとエウソンの前に出て、ボールを奪います。謙佑はフリーのディエゴに落とします。ディエゴには立田がついていたけど、左右に揺さぶられて一瞬マークを外したのがまさにこの時でした。ディエゴのシュートは西部が弾きます。こぼれたボールが謙佑のもとに転がりました。清水0-2東京。

前半の理想的な逆襲劇を演出したのは、清水の選択でした。やっぱりサッカーは攻守がフレキシブルに入れ替わるランニングスポーツですから、攻か守に偏る闘いかたは破綻するリスクを伴います。もちろん制限時間という正義がありますから必要条件ではないけど、今日のちから関係のなかでは、王道に勝るものはないといわざるを得ないでしょう。前半はリードして終了。

後半頭から篠田さんが動きます。西澤に代えて中村を同じく左メイヤに投入します。同時にリトリートをあらため、フォアチェック基調のアグレッシブな守備に戻します。互いに中盤できびしく守り合うクローズドな展開になります。

そこで篠田さんが動きます。竹内に代えて六平を同じくCMに投入します。中盤の守備力を高める意図だと思います。

同時に健太さんも動きます。ディエゴに代えてたまを右メイヤに投入します。慶悟がトップに上がります。ディエゴのコンディションを考慮しつつ、攻撃に躍動感を加える作戦でしょう。さらにはたまにはやくフィットしてもらいたい意図もあったと思います。

たまはまさに即戦力。約1ヶ月空いているから試合感覚が心配でしたけど、杞憂でしたね。たまらしい躍動をひさしぶりに堪能できました。はやく黄金の左足が観たいと期待が膨らみます。たまが加わる効果があってか、ここのところ感じた、終盤に向かって停滞していく感覚が今日はありませんでした。最後までチーム全体がアグレッシブだったと思います。

篠田さんが動きます。河井に代えて滝を投入します。同時にシフトを3-4-2-1に変更します。ヘナトがリベロに下がります。中村がCM、北川が左シャドウに回ります。滝は右シャドウに入ります。東京を囲いこむような陣形をとり、形から主導権を取りにいく作戦です。これが奏功し、後半の激しいつばぜり合いはようやく決着しました。でも時既に遅し。

健太さんが動きます。〆にかかります。謙佑に代えてジャエルを同じくトップに投入します。

さらに健太さんが動きます。足を痛めた慶悟に代えてアルをCMに投入します。洋次郎がトップに上がります。ジャエルを基点にしたカウンターで清水の背後に脅威を与え、試合の安定を取り戻しました。

このまま試合終了。清水0-2東京。眠らない街♪

相性もあるけど、仕留めるべき相手を確実にかつ安定的に仕留めることは案外難しいミッションです。実際、昨年までは毎年いくつか取りこぼしをした痛い記憶があります。今年それがないのは、やっぱり闘いかたが確立されてることが大きいのだと思います。

晃太郎が結果を残したこととたまが復帰してくれたことで、後半のキーポイントとなる第三の男にバリエーションが加わりました。サンホの推進力、晃太郎の守備力とミドル、たまの躍動感と左足。相手の布陣やマッチアップ、左右どちらを攻めたいかによっていろんな選択ができそうです。オプションも魅力的になりますしね。楽しみです。

一週間のミニ中断があります。先月のミニ中断後は三勝三敗。この期間は、上乗せというより失ったストロングポイントを再発見するための時間でした。振り替えると短期間で様々なオプションを獲得できましたから、連敗もしたけど、成果があったと思います。もしかすると、とてもポジティブな停滞だったかもしれません。次は、初黒星を喫したセレッソにリベンジの機会です。


2019J1リーグ第19節FC東京vs川崎フロンターレ@味スタ20190714

2019-07-15 15:36:55 | FC東京

フランス革命記念日の今日も、雨。ホーム四戦連続雨です。

今週も出会いと別れ。ヒョンスが移籍です。ヒョンスのたぶん一番しんどい時に東京に受け入れ、暖かく迎えられたことが嬉しいです。これからもがんばって。代わって、ジェソが加入です。これから来るであろうしんどい時に、助けてほしいと思います。

折り返し二戦目で、はやくも天王山です。なんだかもったいないようなクラシコ。You'll Never Walk Alone♪

チャンピオンに、完膚なきまでに叩かれました。

東京はベストメンバー。シフトはスクウェアの4-4-2。GKは彰洋。CBはモリゲと剛。SBは成と諒也。CMは洋次郎と拳人。メイヤは右に慶悟左にサンホ。2トップはディエゴと謙佑です。

川崎は僚太が怪我。入れ替わりのように憲剛が復帰です。シフトは4-2-3-1。GKはソンリョン。CBは彰悟とジェジエウ。SBは右にノボリ左に車屋。CMは碧と下田。WGは右に浩之左にまな。トップ下は憲剛。1トップは悠です。

ぼくらは、試合で表現される表面的な結果しか知ることができません。それでサッカーを理解しているかと言われると、はなはだ心もとない。できればもっと真実にたどりつけるようになりたいと思います。

東京は、通常あまり目立った相手対策をやらない印象があります。でも今日は、明確に川崎対策を用意してきました。アタッカー三人を中央に寄せます。この意図がよくわかりませんでした。推測するに、川崎の強力CBは横からの攻めによる高さ勝負には無類の防御力をもっているけど、もしかすると幾分スピードに弱点あるということなのかもしれません。川崎はいつの間にかリーグ最小の失点数を誇る、守備巧者になりましたけど、クロスからの失点は10%にも満たないのに対し、ショートパスの失点が50%近くに及ぶのが特長です。これはリーグのなかでも特異な傾向です。そういえば開幕戦も、ディエゴと謙佑のスピードを奈良が無理矢理止めていて、一見するとパワフルだけど危なっかしさを内在していた覚えがあります。

パスの供給源はやはり洋次郎。ここ数戦、ゴールシーンでの洋次郎の関与が目立っています。頼もしく思いつつ、パターン化がちょっと気になっています。サンホを主力にすることでカウンターの威力が増す一方、カウンター頼みになってしまう弊害にも対処しなければならないでしょう。

東京のもくろみは川崎に完封されます。川崎が東京の作戦を読んでいたというよりか、東京の本質そのものを絶ちきったといっても良いと思います。今日はおそらく、今週の過ごしかた、試合前の準備の段階で勝敗が決していたのではないかと思います。川崎はその点で東京を圧倒しました。

まずスカウティング。Jリーグはまだ、経済的な意味で科学的なスカウティングが十分ではないでしょう。それでも東京は、たとえば大分戦や先週のガンバ戦のように、リーグのなかでは比較的スカウティングが巧みな印象があります。なので、先に述べた作戦も、立案とトレーニング、そして実行に抜かりはなかったと思います。でも今日に限っては、準備の密度が川崎に比べて足りなかったかなと思います。

シーズンには山場があると思います。シーズンは長いし、物理的にはひとつ一つの試合の積み重ねに過ぎません。だからここが山場という試合は、正直わかりません。でもチャンピオンたちは、振り返りでかならずターニングポイントをあげます。結果的にターニングポイントとなる山場を勝ちきることがタイトルを引き寄せるのでしょう。川崎は今日が山場と踏み、普段以上に密度の高い準備をしてきたと思います。一方東京は、もしかしたら幾分作戦に頼り、普段通りの準備にとどまったかもしれません。

川崎の作戦は攻守で三つ。まず攻守の切り替えで極限まで集中を高めること。これにより、JリーグNo.1のクイックネスを誇る東京のトランジションを凌駕します。二点目は、東京のカウンターの出し手と受け手を封じること。出し手は、洋次郎以外はスペースを消すことで対処しますけど、洋次郎に対してはタイトに付き、判断とアクションが非常にはやい洋次郎の視界を奪います。洋次郎は判断のはやさゆえ、いくぶんアバウトな部分があり、それが結果的にミスに見えることがあります。川崎はそこを狙います。

受け手はもちろんディエゴと謙佑。東京はディエゴと謙佑がマークされる前提で第三の男を中央に寄せたのだけど、サンホにパスを出す基点をつぶされるとこの作戦は機能しないことを露呈しました。ただ、これはCBの能力が高くないと成立しません。川崎の土台は変幻自在な攻撃にあるにしろ、優勝できるクオリティを持ったのは、なんといっても彰悟を軸にするCBの充実に他なりません。

三つ目はカウンター。ACLの副産物として川崎はツープラトンシステムができるほど多彩な戦力を持っています。今日は左右にスピードウインガーを配置しました。これはカウンターを主武器にするイメージでしょう。結果論ですけど、先制することでこの作戦がいっそう有効になりました。

20分。下田の左CK。川崎は縦陣で、前から彰悟、悠、ジェジエウ。東京はハイブリッド。マーカーはモリゲ、慶悟、剛。下田のモーションと同時に、悠が細かい出入りを繰り返します。これでマーカーの慶悟が、ボールと悠の両方を見なければいけない難しい対応を迫られます。CKだけど実質、慶悟と悠の1on1。これが巧妙でした。下田の狙いは、慶悟の背後から入る悠をイメージし、そしてドンピシャでした。東京0-1川崎。

どの試合にも、いくつかのパラレルワールドがあります。もしもこのゴールが無かったら、川崎がはっきりとリトリートすることもなかったでしょう。そして川崎の作戦を裏付ける高い運動量が90分間維持できた保証もありません。もしかしたら、東京のいだてんトリオがワンチャン駆け抜けたかもしれません。今日は、悠のゴールがすべてを決しました。たぶんこのセットプレーも準備していたのでしょう。東京は今年まだセットプレーでの得点がない唯一のチームです。かつてはセットプレーに頼っていた頃もあったのに、すいぶん変わったなぁと思います。川崎もセットプレーの得点は少ないので、だからこそ今日は、先制点をもぎとりにきたのでしょう。その意味でも、準備の差が出た部分かもしれません。前半はビハインドで終了。

先制されてから東京は作戦を変えます。CBの背後を狙う基本線は変えず、配置に手を加えます。攻撃時に洋次郎を最前線に上げて基点にします。後半からは、洋次郎を最前線の真ん中に置くことで中央の数的優位を作り、三本の矢をすべてスペースに向かわせる体勢を作ります。

それでもなお、川崎の堅陣は崩せません。東京の数的優位の狙いに対し、下田と碧を加えたスクウェアで対応します。僚太不在のスクランブルに選ばれた下田は、おそらく守備力の高さを買われたのだと思います。さらにパートナーが脇坂ではなく碧だったのは、下田にないパワーを補うためでしょう。不動と思われた川崎の中盤が様々なゴタゴタで揺らぐなか、それでもなお逸材がポコポコ出てくるのですから、こんにちの川崎を支える編成力の高さにあらためて感服します。

最初に動いたのは健太さんでした。洋次郎に代えて晃太郎を左メイヤに投入します。慶悟がCMに回ります。

確認するまもなく、追加点を許します。

54分。諒也の自陣奥のスローインから。受けたサンホが、浩之と碧に囲まれながらターンして前方のディエゴにパス。これがホスピタル気味で、狙われます。ディエゴの戻しを碧がカット。碧はフリーの下田にパス。カウンターの発動です。下田が持った時点で、憲剛がバイタルエリアにするするっと入ります。憲剛は下田からの受け態勢だったのでしょうけど、これが効きます。下田は最前線の悠につけます。これで、憲剛が前を向いてフリーになり、活きます。悠は憲剛に落とします。ここから憲剛イリュージョン。左を上がるまなに出すとみせて切り返し。これで剛が止められます。さらにワンフェイク入れて、悠を見ていたモリゲの意識を一瞬引き寄せます。これでフリーになった悠にパス。このイリュージョンは、同時にまなのマーカーの拳人とディエゴも魅了します。本来のまなのマーカーの成の寄せが甘かったとはいえ、まながこれでフリー。これを悠が見逃しません。ダイレクトでまなにクロス。まなは流し込むだけでした。東京0-2川崎。

実に川崎らしい崩しのゴールです。でもこれで流れが変わります。川崎の出足のはやさにめんくらっていた東京は、テーマであるファストブレイクを機能させられませんでした。慶悟が中盤に入ってバイタルエリアがタイトになります。これをきっかけに、前線のプレッシングが効くようになります。セーフティリードに入った川崎がますます下がったことも相まって、前半とうって変わってペナルティエリアに入れるようになり、東京が攻勢をかけます。

一点返すと様相が変わるのになぁと思っていたら、追加点を浴びます。

69分。ソンリョンのGKから。悠がフリックして前方に。さらに憲剛がダイレクトに前方に流し、カウンターの発動です。抜け出したまなとの1on1は彰洋が防ぎますけど、そこから川崎の連続アタック。浮いたボールを拾ったモリゲが諒也に渡そうとしますけど、ハイプレスの浩之に拾われます。浩之は右を上がる悠にパス。再カウンター発動。東京が整える間際に川崎が困惑を誘います。悠、まな、下田とダイレクトパスをつなぎ、最後は下田のお膳立てパスを浩之が流し込みました。東京0-3川崎。

直後に健太さんが動きます。サンホに代えて輝一をトップに投入します。謙佑が右メイヤに回ります。現時点の東京はやはり、第三の男を止められると苦しいですね。サンホがよくなかったのではなく、サンホが仕掛けられる状況をほとんど作れませんでした。こういうとき、やっぱり独力で状況を作れる選手がいなくなった影響を思わざるをえません。今日もレアンドロとアキを温存した川崎のオプションの充実と比べると、逆説的に、東京はこの編成でよくまあ首位にいられるなと思います。

鬼木さんが動きます。先週ガンバ相手にみせた方程式を、今週は川崎に見せつけられます。まなに代えて竜也を同じく左WGに投入します。カウンターのコンディションをあげる意図です。

鬼木さんが続けます。悠に代えて知念を同じくトップに投入します。これも同じく。

同時に健太さんが動きます。謙佑に代えてうっちーを同じく右メイヤに投入します。うっちーの元気でチームを活性化する意図でしょう。

そして鬼木さんが〆ます。ノボリに代えて山村をCMに投入します。碧が右SBに回ります。マルチロールの山村をこんなに贅沢な使いかたができるのですから、川崎の編成がおそろしくすら思います。

なすすべなく、このまま試合終了。東京0-3川崎。

川崎は、この状況でクラシコを迎えるとは想像してなかったでしょうけど、もともと後半に向けてコンディションをあげるチームですから、当初からクラシコをピーク時期のターゲットとしていたかもしれません。今日は集中力も運動量も高く、アドレナリンがチーム全体からほとばしるようでした。これは毎試合できることではありません。その意味では、川崎が本気丸出しで臨んだことは、クラシコというイベントはさておき、優勝争いに向け最大のライバルとして東京を見ている現れと言えるでしょう。

だからこそ、今日は格別の悔しさを感じます。無関係の自分ですら、もし優勝しても川崎を越えてない気持ち悪さが残ると感じてしまいました。でも、この川崎は、優勝を経験したからこその姿なのだと思います。チャンピオンであろうがなんであろうが一試合には変わりありません。むしろ部が悪い相手との対戦を済ませたことを喜ぶべきかもしれません。ぼくらの山場は、まだまだ先にあるかもしれないから。

奇跡的に試合中は雨がほぼやんだけど、もういい加減雨は勘弁してほしいですね。太陽が似合う日本平はとくに。


2019J1リーグ第18節FC東京vsガンバ大阪@味スタ20190707

2019-07-11 22:59:09 | FC東京

七夕です。

曇天の向こうで、きっと年イチの逢瀬を喜んでいることでしょう。考えてみれば七夕は水にゆかりの物語ですから、雨がふさわしいのかもしれません。

なつぞらロケ地めぐりの旅で奥茨城に行って、返す刀で七夕マッチです。今節から後半戦。GWの記憶も新しいガンバ。You'll Never Walk Alone♪

宏介が移籍しました。宏介には感謝しかありません。名古屋でも頑張ってほしいです。

先制されるも、落ち着いてウィークポイントをついた快勝です。

東京はヒョンスがお休み。シフトはスクウェアの4-4-2。GKは彰洋。CBはモリゲと剛。SBは成と諒也。CMは洋次郎と拳人。メイヤは右に慶悟左にサンホ。2トップはディエゴと謙佑です。

ガンバは小野瀬が1ヶ月ぶりに復帰。今日はヤットは半ドンの日です。シフトは3-3-2-2。GKは東口。3CBは右から高尾、三浦、ヨングォン。WBは右に小野瀬左に敬斗。アンカーはヤジ。シャドウは右に高江左に秋。2トップはアデミウソンとウィジョです。

試合は開始早々動きます。

5分。諒也の自陣のスローインから。中盤の厳しい競り合いのこぼれを拾った洋次郎が縦につけます。センターライン付近で受けた謙佑にガンバ右サイドがトリプルチームでターンオーバー。拾った三浦が前方の秋につけます。ターンした秋はキープ。諒也を引きつけます。これが効きました。右ライン際で小野瀬がフリー。秋は小野瀬に渡します。カウンターの発動です。アタッキングサードに入った小野瀬は、アーリー気味にアデミウソンにクロス。これは剛がカット。流れたボールを敬斗が拾ってヤジに戻します。ヤジはルックアップ。ゴール前にウィジョとアデミウソンがはってますけど、マークがいます。この時右サイドに小野瀬がフリーでした。ペナルティエリアに走り出した小野瀬にヤジがロブスルー。抜け出した小野瀬は右足でトラップして、流れのまま左足を振り抜きました。東京0-1ガンバ。

結果的に、この先制がガンバからガンバらしさを奪いとることになります。今日は前半と後半で、立場を真逆にしながら、互いに似たような作戦を取ります。なので、東京とガンバのチームとしてのクオリティの差が如実に出る試合となりました。

ガンバはおそらく、東京の出足を東京を超えるプレスで抑える作戦で挑んだと思います。この時すでに、ガンバが自らガンバらしさを捨てる予兆のようなものがありました。ウィジョ、アデミウソンを含めた前線からのハードチェックで、東京のパス供給源を抑えるとともに、中盤の優位性を確保し、ショートカウンターを狙う意図です。これが、もしかするとガンバにとっても予想外にはやく結実し、先制ゴールが生まれます。そしてガンバはリトリートします。

なのでガンバのオリジナルスタイルは結局わからずしまいです。オープニングブローにいたるラッシュもいわゆるかましでしょうし、その後のリトリートも、クオリティを見るとセオリーをなぞった程度です。後半は一転、ボールを持たされることになるので、それはそれでガンバらしいシチュエーションではあったのですけど、有効な攻撃はついぞ見せることがなく。

垣間見られる範囲では、最終的にウィジョに取らせる前提は当然のこととして、型があるようでない、スペースメイクを基調としたスモールゾーンの連鎖によるギャップを活かす作戦だろうと思います。中央に四人の手練れ、もとい足練れを揃えていることからも伺えます。さらに、先制ゴールのシーンでも披露したように、小野瀬と敬斗、左右に魅力的なドリブラーアタッカーを備えていますから、現実的には、中央で作ってサイド深くにスペースを作るサイドアタックが、メインルートかなと思います。なので、ボールサイドにシャドウを寄せて基点とするオプションも用意しています。

この多彩な攻撃の可能性を仕切るのはアンカーのタスクです。前提としては、やはりヤット。ここ数年のガンバは、あきらかにヤットの存在感の大きさとの闘いを強いられていると思います。ガンバはヤットが主体である以上、日本伝統の攻撃的スタイルを基調とします。ポストヤットの選択肢として、ヤットが作りあげた北摂スタイルを継承するか、それとも近代的なディフェンスを前提とした型に変貌するか。チームスタッフのみならず、サポ、スポンサー、果ては北大阪の街をあげた大命題です。もしかするとぼくら外様サッカーファンにとっても、余計なお世話ではあるけど、議論を尽くしたいテーマでしょう。

残念ながらその権利はガンバサポに委ねるとして、とりあえず直面する恒様の選択は、ヤットモデルの継承です。その任は、タレント豊富なガンバユースではなく、ヤジが担うことはとても興味深いです。考えてみればほかならぬヤット自身がガンバ産ではないので、これもまたガンバの伝統なのかもしれません。非常に難しいポジションですので今日の一試合でヤジをはかるわけにはいきません。少なくとも、先制ゴールのアシストが示すことは、ヤジがその候補であることを確実に表していると思います。

さて、先制したガンバは、先にも述べたとおりリトリートします。ここで問題になるのが守備網です。守備を、幾ばくか重視するチームは、基本的にフリーゾーンを消すことを前提に守備網を作ります。ガンバのような3バックの場合、トレンドではトップを一枚残して中盤の横のバランスを保ちます。ところがガンバは、前線を二枚にしたままです。さらに中盤はボールサイドに片寄せしますから、おのずとフリースペースができ易くなります。この守りかたの効能をどなたかに解説してもらいたいところですけど、是非はともかくとてもユニークで、興味深いと思いました。サイドのフリースペースの処理は、WBがサイドチェンジに対しフォア気味に寄せることで予防しているようです。

ただこれだと、当然WBの背後に広大なスペースができます。昨今の3バックは、左右のCBが開いてこのウィークポイントを解消していますけど、ガンバはオーソドックスな3バックを採用しています。なのでサイドの処理は、最終的に左右のCBの個人守備力に依存します。

そういうわけで、今日のメインイベントは、成vsヨングォン、サンホvs高尾のスピード対パワーのバウトとなりました。このように、観戦する側にとってわかり易い構図を作ってくれるのもトップクラスのチームの特長です。やせてもガンバくれてもガンバ。

東京の選択は、いうまでもなくサンホです。もちろん成で挑む選択もあるのですけど、今年の最終成績の鍵を握る第三の男を早期に作るためにも、その最右翼であるサンホをとにかく立ち上げる絶好の機会でしたから、迷いはなかったでしょう。サンホは、高尾にマッチアップを仕掛けるジャブを執拗に送りながら、間合いを見極めます。そしてついに左ストレート一閃、倒しにかかります。

38分。成のスローインから。後方でチャンスを伺う東京。例によってガンバ中盤はボールサイドに寄ります。そして左サイドが空きます。モリゲは諒也にパス。ハブとして諒也はクイックに前方のサンホに渡します。これでサンホと高尾の1on1を成立させることに成功します。すでに何度かの仕掛けで高尾とのマッチアップ感をつかんだサンホは、ここが勝負と強引に縦を狙います。キープとみせるトラップを織り交ぜつつ、高尾を振り切ったサンホはフリーでペナルティエリアに侵入。この時ゴール前は、三浦、ヨングォン、敬斗が揃っていますけど、サンホの仕掛けでボールウォッチャーになっていて、事実上無防備になっていました。これを慶悟が逃しません。敬斗の背後から一気にゴール前に顔を出します。これを見たサンホが慶悟にクロス。これは三浦がカットしますけど、こぼれたボールが正面フリーの謙佑に渡ります。謙佑は左足ダイレクトで流し込みました。東京1-1ガンバ。

1ダウンを得たサンホは、ここが勝負処とみたのでしょう。一気にたたみかけます。

40分。ガンバの右サイドの攻撃から中盤の厳しい競り合いに。こぼれたボールを拾った洋次郎が、左サイドを上がっていくサンホにフィードを送ります。サンホはキープ。さっきのゴリゴリアタックが頭にあるのか、ガンバは無理せずセットします。結果フリーになったサンホはルックアップ。この時ゴール前は、謙佑、ディエゴ、慶悟に、ヨングォン、三浦、敬斗がついて3on3。サンホはワンチャン狙いのアーリークロスを選択します。狙いは真ん中。謙佑。ヨングォンの背後にいた謙佑は、落下点のヨングォンの前に出て、スタンディングジャンプのヨングォンより勢いで勝ります。ヘッドを振った謙佑のシュートはゴール右隅に吸い込まれました。東京2-1ガンバ。

先手を取られるアクシデントはありましたけど、それがむしろ誘導灯の役割を担ってくれました。シナリオに沿ったタスクを各選手がこなし、想定通りの物語をつむいでくれました。前半はリードして終了。

後半頭から恒様が動きます。高江に代えてヤットをアンカーに投入します。ヤジが右シャドウに回ります。当初からのプラン通りだと思います。

リードしたことで、今度は東京がリトリートします。作戦は同じでも、リトリートを基本プランとする東京とそうではないガンバというポリシーの違いが、試合展開の綾と相まってガンバに不利に働いてしまいます。とはいえ、ガンバの方向性を考えると、相手がスペースを用意するかしないかを問わず点を取れなければなりませんから、結局この試合はポリシーの真っ向勝負の末、東京が押しきったといっていいでしょう。ガンバは、後半を通じてむなしくボールを回すことに終始します。

一方東京は、ロングカウンターモードにスムーズに移行します。そして、順調に加点します。

60分。左ライン際のガンバのアタック。敬斗からのパスをアデミウソンが敬斗に戻すところを洋次郎がカット。拾った慶悟の落としを受けた洋次郎がドリブルで抜け出します。これが効きました。ボールウォッチャーになったガンバのラインの隙をつき、ヨングォンの背後を謙佑が抜け出します。洋次郎はスルー。フリーの謙佑は、ゴールラインで拾い、ダイレクトでマイナスに折り返します。おそらくガンバが一斉に下がるのを予見して、ゴール前にフリーゾーンができると踏んだのでしょう。これが当たります。そこにどフリーだったのはディエゴでした。ディエゴは左足で叩き込みます。東京3-1ガンバ。

2点差になったことを受け、先に恒様が動きます。小野瀬に代えて福田を同じく右WBに投入します。リフレッシュの意図だと思います。

恒様が続けます。ヤジに代えて食野をトップに投入します。アデミウソンが右シャドウに回ります。スペースを閉じられた状況ではガンバは打ち手を失います。ショートパスを通して打開する前提ですので、受け手になりことこそすれ、スペースメイクをしようという意思が皆無になります。かつ、ボールを持ったときのタッチ数が多く、東京に対応する時間を与えます。なので、打ち手は個の打開力のみ。楽しみにしていた食野ですけど、完璧に守備網を作られた状態では破壊力を見せる機会がありません。ガンバに閉塞感が漂います。

健太さんが動きます。サンホに代えて晃太郎を同じく左メイヤに投入します。案外はやく方程式の発動です。

さらに健太さんが動きます。謙佑に代えて輝一を同じくトップに投入します。順調にセットアップを重ねます。

そして健太さんが〆ます。ディエゴに代えてアルをCMに投入します。洋次郎がトップに回ります。後方の安定感を維持したままトップを単純スライドするかと思ってましたけど、ガンバの要、中央をパワーアップする手堅いクローズです。

このまま試合終了。東京3-1ガンバ。眠らない街♪

ガンバに先制の不利という矛盾があったとはいえ、シナリオをプラン通りに消化できた、シーズン中でもなかなか稀有な完勝でした。ハラハラしたのは、序盤雨量が多かった時間帯でフィードが走らず、自慢のロングカウンターが機能しなかったことくらい。ここも、主戦をサンホのドリブルに速やかに変更する、柔軟性で乗り切りました。You'll Never Walk Alone♪

サンホの活躍はまだまだ可能性が潜んでいます。今日はガンバゆえの部分が強く出たけど、直線的なオラオラタイプですから、対応されると苦しむスタイルではあります。それでもなお、補完というよりか、むしろ東京のスタイルに合っているのはサンホです。後半の楽しみが増えました。謙佑のシュワッチディエゴのシュワッチWE ARE TOKYO♪

次は、いよいよクラシコ。実質的な頂上対決です。この時期にきちゃうのがもったいないくらい。挑戦者としてチャンピオン越えを果てしたいですね。


2019J1リーグ第17節FC東京vs横浜F・マリノス@味スタ20190629

2019-06-30 15:47:31 | FC東京

後れ馳せながら、ようやく西日本が梅雨入りしたと思ったら、沖縄は梅雨明けとか。東京も、六月が終わろうという時期に梅雨本番の模様。

本日は、毎年楽しみな恒例のテディベアデー。最初から続いてるイベントって、もしかして三菱電機デーとこれだけかな。

ホーム2試合続けてレイニーデイになってしまいました。なんとなくマリノス戦はいつも天気に恵まれないですね。

マリノス戦といえば、玄人好みの地味なロースコアの印象が強いのですけど、ここ二年はすっかり雰囲気が変わりました。リーグ前半戦最後の試合はくしくも首位攻防の、前半戦のハイライトとなる楽しみな対戦です。You'll Never Walk Alone♪

試合後に、建英の壮行会がありました。偶然だけど、プロに関わった2チームで送り出すことができてよかったですね。スピーチ胴上げチャント

攻守ともにマリノスらしさがあふれた、マリノスの独り相撲になりました。ひさしぶりにゴレアーダ。

東京はベストメンバーです。シフトはスクウェアの4-4-2。GKは彰洋。CBはヒョンスとモリゲ。SBは成と諒也。CMは洋次郎と拳人。メイヤは今日は右に慶悟左にサンホ。これが効きます。2トップはディエゴと謙佑です。

マリノスもベストメンバーです。シフトは4-2-3-1。GKはパク・イルギュ。CBはチアゴ・マルチンスと慎之輔。SBは右に和田左にティーラトン。CMはあまじゅんときー坊。WGは右に仲川左に渓太。トップ下はマルコス・ジュニオール。1トップはエジガル・ジュニオです。

対戦時点で最小失点と最多得点という、首位攻防よりも楽しみの理由はむしろそっちですね。最も守備力の高いチームと最も攻撃力の高いチームとは、イデオロギーの対決ともいえます。ただし、試合の結果を分けるのは、光が当たる数字ではなく、その裏側の数字だと思います。東京の得失点差11に対しマリノスは7。リーグ全般で得点数が極端に少ない今年ですから、東京の数字は特筆すべきものでもないのですけど、マリノスは格別。得点数はACL参加ラインに匹敵するのに、得失点差だと中位クラス。それでも昨年の得失点差ゼロに比べれば格段の進歩です。いっぱい取っていっぱい取られるポリシーの成長の行く末が楽しみな2019年。おそらく、いつの時代劇でもそれなりのポジションを確保できる、東京のような堅実なポリシーと当たってみて、その真価が測れると思います。

ポステコグルーマリノスの闘いかたはいまさらなので省略します。昨年からの上積みだけをみてみます。編成上の変化は明白。ポステコグルーサッカーの象徴といえるSBにティーラトン。そして前線にエジガルとマルコス。チーム得点数は昨年と同程度だけど、アタッカーの得点比率が上がっています。まして二枚看板は目下リーグ一位と二位。チーム得点王のウーゴはかならずしもレギュラーだったわけではないのですけど、今年は明確にエースで取る方針であり、それが実現できているのでしょう。

作戦上の違いはそれほど顕著な差を感じません。無駄がなくなって、洗練された印象です。まずサイドアタックに特化していること。マリノスのフィニッシュパターンはほぼクロス。ビルドアップが変態なわりには、攻撃そのものはオーソドックスです。クロスに特化することで、クロスのバリエーションを増やそうという意図だと思います。二枚看板に取らせるポリシーだといいましたけど、クロスに合わせる役は二枚看板だけでなく、SBがほぼかならずゴール前に顔を出しています。このポジションギャップが、マリノスのテーマなのです。

もうひとつはスピード。おそらく攻撃開始からシュートまでの時間が昨年よりも速くなっていると思います。これもサイドアタックに特化した産物でしょう。ポゼッションスタイルですと、東京のようにリトリートする相手にスピードダウンせざるを得ないのですけど、マリノスはなんら迷うことなくサイドスペースにどんどんボールを運びます。

最後の差は、昨年より守備がタイトになっています。試合を通じて、二枚看板を含めボールホルダーへのチェックがはやく、運動量が高い。とくにマルコスは攻守に行動範囲が広く、かつスピードもあるので、得点力やチャンスメーク力だけでなく、献身性もなにしろ目立ちます。実際の身長よりも大きくみえるのが不思議ではないくらい。ルックスといいキャラクターといい、マリノスはエポックメイキングな外国人選手を得たと思います。

序盤は、その守備のギアをトップに入れ、前線から執拗に東京のボールホルダーを追います。いわゆるかましなのでしょうけど、マリノスのように取るけど取られるお祭りチームにとっては、お祭り状態を能動的に作る意味は他のチームよりもあり、効果が高いと思います。東京の試合では後半に見られるオープンなどつきあいを、マリノスの場合はオープニングから仕掛け、意図的にカオスを作るのです。

東京は、マリノスの、とくに最終ラインを狙ったフォアチェックを焦らずいなします。マリノスの狙いはたぶんもうひとつ。東京のカウンターの起点を予防する意図もあったと思います。とくに洋次郎、モリゲ、諒也がターゲットだったのでしょう。ともあれ、マリノスのオープニングラッシュを受け止めることができました。いつものように攻撃権を渡しつつ、中盤の支配力を徐々に高めようとした矢先、カウンター一閃をくらいます。

15分。自陣でボールを回すマリノス。和田がサイド低い位置でパス回しに参加していたのでチャンスとみたのでしょう。サンホがチャレンジします。これを見たきー坊がサンホの裏を取ります。和田はきー坊にパス。前方を確認しながらパスを受けたきー坊は、ダイレクトでさらに前方にロングスルーを送ります。これがラインギリギリでかつ遠かったので諒也の足が一瞬止まります。そこに走りこんでいたのは仲川だけ。ここで勝負ありました。一気にゴール前に押し寄せるマリノス攻撃陣は、スピードを保ったままアタック。仲川はドリブルインしながら間合いをはかります。狙いは、やや遅れて入ってくるマルコスでした。彰洋の手をかいくぐった仲川のクロスは、トップスピードで入って成の前に入ったマルコスに合いました。東京0-1マリノス。

数的不利ではなかったのですけど、あっという間だったので勢いまではコントロールできませんでした。結果的に先制パンチをくらったのでマリノスの思うつぼにはまっちゃったかなと心配になった矢先、杞憂にさせてくれる幸運な同点ゴールが生まれます。

17分。彰洋のGKから。彰洋のロングフィードを最前線で洋次郎がフリック。左奥に流します。洋次郎に和田がついていたので、フリックしたボールは広大なスペースに単独で転がります。そこに走りこんだのはサンホ。ドリブルでペナルティエリアに入ったサンホは、コースを確認して右足シュート。これをイルギュが後逸します。東京1-1マリノス。

チャレンジしないとなにも始まらないし結果も生まれないとは、まさにこのゴールなんでしょうね。サンホに求められることはシュートへの積極性。どういう形であれ、シュートすること。東京には2トップ+アルファがあることを印象づけることが、後半戦に向けたなによりのポイントです。今日はもとより明日のためにも、もしかするとターニングポイントになったゴールかもしれません。

このゴールによって、東京は今日の作戦の有効性を確認できました。なので、ここからは東京も能動的に仕掛けはじめます。イニシアチブが東京にわたり、試合のオーガナイザーが決定した瞬間でした。東京は今日、メイヤを左右入れ替えました。左サイドで仕掛ける意図です。和田を狙ったというよりか、サンホの右足のシュート力を重視したのだと思います。そして、サンホにディエゴを絡めます。ディエゴとサンホが入れ替わりでサイドにはり、基点を担います。ここに諒也が加わって、超高速でリズミカルな勢いを生み出します。後方から外連味のないロングフィードが左奥にどんどん送られ、ポゼッションのマリノスに対しカウンターの東京という構図が形成されました。

これが重要でした。マリノスの強みは、実は東京とベースが似ています。最先端のトレンドである、ハイラインからのチェックを根拠とした超高速のカウンターです。先制点が象徴するように、マリノスに、カウンターを仕掛ける形を作られることが東京には最も回避すべき状況でした。マリノスにボールを渡し、マリノスが気持ちよくマリノスのリズムで闘えば、マリノスらしくSBがポジションを開けてくれます。そして、またも左ロングカウンターが炸裂します。

38分。マルコスの左CKをセーブした彰洋のロングスローから。これを洋次郎がセンターライン付近で受けます。マリノスはいちおう四人いますけど、ラインもマネジメントもなく、カオス。そこに、オフサイドから戻るサンホと入れ替わるように、謙佑が逆サイドを長駆かけ上がっていました。洋次郎は謙佑にロブスルー。謙佑はこれをペナルティエリアやや外で受け、そのままロブシュート。これがイルギュの手をはじき、ゴールに吸い込まれました。東京2-1マリノス。

雨でハンドリングコントロールがききにくい状況だったのかもしれません。マリノスが圧倒的な強さを身につけるために重要なポジションは、だれがどうみてもGKとCBです。攻撃時のラインにCMを下げるなど、Jリーグのトレンドのセーフティネットを取りいれつつ、徐々に変態要素を薄めているのだと思いますけど、依然守備は個人任せであることには変わりありません。この路線でいくなら、補強の方向性は明確。早々、東京のオーガナイズが成立して、前半は逆転でリードしたまま終了。

こうなってしまうと、今日の結末はおおよその予想の範囲です。後半も流れは変わらず。てかマリノスの変態ポリシーに、今日の状況をアジャストする思想すらそもそもなく。マリノスの変態ビルドアップは、一見すると変態ですけど、目線を人ではなくゾーンに移せば案外オーソドックスです。たしかに数的優位なのだけど、マリノスが使えるゾーンを絞れば数的優位は局面でリセットされます。そうなると、あまじゅんが上がれず和田もティーラトンも中途半端で、さらにはマルコスも下がり、肝心の数的優位すら機能しません。もちろんマリノスは、本来はリトリート上等のチームだと思います。それを許さなかった東京守備網の堅さの勝利です。東京の守備力vsマリノスの攻撃力というテーマは、ここにおいて軍配が決しました。

55分。ティーラトンがタベーラのイメージで渓太に預けたところを成が狙います。イーブンになったボールを洋次郎が拾い、そのまま持ち上がってあまじゅんときー坊を引きつけます。二人とも振り切った洋次郎のパスコースは、右にディエゴ左に謙佑。洋次郎は謙佑を選択します。アタッキングサードに入ります。チアゴを引きつけた謙佑は、ゴールライン際から逆サイドにロブクロスを送ります。クロスが、ファアにいたあまじゅんの図上を越えた先にいたのはディエゴでした。東京3-1マリノス。

立て続けに。

62分。自陣ペナルティエリ付近で、仲川からトランジションした拳人がフリーのサンホにパス。サンホはドリブルで一気に加速します。カウンター発動です。アタッキングサードに入ったサンホは一度ディエゴに預けます。チアゴと和田を引きつけたディエゴはサンホをさらに走らせるスルー。ゴールライン際で拾ったサンホは、チャンス無しとみて諒也に戻します。ここから、珍しく華麗なショートパス回しで崩します。諒也、謙佑、サンホ、慶悟が絡むパス回しから、諒也が中央にスライド。この時、和田の背後から謙佑が抜けだそうとしていました。これを見た諒也がスルー。フリーになった謙佑のシュートはイルギュが弾きますけど、そこにつめたのはディエゴでした。東京4-1マリノス。

エースが戻ってきました。ディエゴを元気にするのは+アルファ役の活躍次第。ディエゴを、チャンスメーカーではなくゴール前で消せるようにしないといけない。あらためて実感できましたね。優勝の鍵は+アルファ。

セーフティリードに入ったので健太さんが動きます。洋次郎に代えてアルを同じくCMに投入します。現時点ではセカンドアタッカーがポイントだけど、健太さんは新たなパターンを作ろうとしています。アルは、これまでのパターンに比べて明らかに異質です。結果が伴えば加速しそうな予感がします。

状況を踏まえ、ポステコグルーさんも動きます。あまじゅんに代えて三好を同じくCMに投入します。マルコスが動き勝ちになったので、中央にアタッカーとして据える意図だと思います。ここは、三好のテクニックよりアルの存在感が勝りました。むしろリードしている東京の勢いが加速します。

そこで健太さんが動きます。謙佑に代えて晃太郎を左メイヤに投入します。サンホがトップに回ります。謙佑のコンディションを考慮しつつ、守備力の強化を狙いました。加えて、今日の勢いに晃太郎を乗っけることで、晃太郎の積極性を引き出そうという意図もあったと思います。

直後にポステコグルーさんも動きます。マルコスに代えて山谷を投入します。当時にシフトを4-4-2に変更します。山谷はトップに入ります。直進的な推進力を得たいという意図だと思います。直接的ではないけど、なお攻めよというメッセージが奏効します。

83分。マリノスのビルドアップから。きー坊のパスを受けた慎之輔がティーラトンにパス。ティーラトンはさらに前方ライン際の渓太に渡します。アタッキングサードに入ります。三好とのタベーラで抜け出した渓太は、アーリー気味にファアにロングクロス。彰洋の手を越えたところにいたのは仲川でした。仲川は右足ダイレクトで合わせます。これはポールに当たりますけど、跳ね返ったボールは彰洋に当たってゴールに吸い込まれました。東京4-2マリノス。

なんだかカオスになる恐れもあったので、健太さんが〆ます。ディエゴに代えて輝一を同じくトップに投入します。前線をフレッシュにしてマリノスに脅威を植え付ける意図でしょう。

結局カオスにはならずに済みました。このまま試合終了。東京4-2マリノス。You'll Never Walk Alone♪

シーズン折り返しを首位で通過することができました。いろいろあったので実感なく、後半戦のイメージが確たるものではないので不安いっぱいの折り返しです。ディエゴのいうとおりまだ何も成し遂げていません。でもまあ、落ちつかなさがありつつも、首位ターンの嬉し恥ずかしを満喫してます。WE ARE TOKYO♪

まずは、前半戦の闘いかたを踏襲できる目処が立ちました。当面の+アルファは、サンホで引っ張って晃太郎で〆る継投策でいくでしょう。新たにアルモードのチャレンジもしていますし、どうやら中断期間の積み上げはしっかりとできているようです。今年は小さな中断がいくつかある変則日程ですから、まだまだ積み上げるチャンスがありますし、そこをどう過ごすかが優勝への道程の鍵のような気がします。ディエゴのシュワッチサンホのシュワッチ

次は七夕。ユニ配布もあるし、いっぱい集まってほしいですね。


2019J1リーグ第15節FC東京vsヴィッセル神戸@味スタ20190615

2019-06-16 15:39:31 | FC東京

梅雨まっただなか。

今年の梅雨は、晴れと雨が周期的にめぐっているようで、直前まで快晴だったのに恨めしい雨模様です。

よりによって、大雨に当たってしまった今日は、ソールドアウトが伝えられた神戸。前節までイニエスタ不在で、おまけに雨で、客足がちょっと鈍っていたようですね。You'll Never Walk Alone♪

チャンスを作るも、イニエスタの一発に沈みました。今シーズン二敗目は、ホーム初敗戦でした。

東京はヒョンスがサスペンションから復帰。建英がコパ・アメリカ出張中。謙佑も代表帰りのお休みです。シフトはスクウェアの4-4-2。GKは彰洋。CBはヒョンスとモリゲ。SBは成と諒也。CMは洋次郎と拳人。メイヤは右に晃太郎左に慶悟。2トップはディエゴと輝一です。

トルステン・フィンクさん新体制の神戸は、今日が船出。注目の編成です。シフトは4-2-3-1。GKはスンギュ。CBは大崎と宮。SBは右に大伍左に初瀬。CMはイニエスタと蛍。WGは右にたま左に慶治朗。トップ下はウェリントン。1トップはビジャです。

イニエスタとビジャ、フィンクさんとポルディ、楽天のマネジメントなどなど、色眼鏡でみる要素がいっぱいある、脇のゆるい神戸。メディア的な価値はともかく、サッカーの内容が相手として闘うに足るものであれば、リスペクトの対象として十分だと思います。編成だけみれば、ちょっと前のワールドカップチャンピオンを足しただけの安易な模倣チームなのだけど、いろいろとめんどくさそうな条件がそろうなか、フィンクさんがどんなサッカーをするのか、最初に観られる幸運は嬉しいです。

さて、フィンクさんの初Jリーグのチャレンジは、極めて日本的なサッカーでスタートしました。ぼくらが子どものころから見慣れたサッカーですからとても馴染みやすく、プレーする側も見る側にとっても親和性が高いのではないかと思います。とても好意的に感じました。神戸のキーマンはやはりイニエスタとビジャ。誰がどうみてもこの本質はゆるぎない。問題はスタイルに準じるのか編成に準じるのか、です。フィンクさんはスタイル信奉者だと聞いていたのですけど、実見してみると編成に準じる、合理的なサッカーをされるようです。

日本的サッカーといえば、代名詞となるのはキャプテン翼。つまり司令塔とストライカー。試合を作れてチャンスも生み出し仕舞いにはゴールも決めちゃう大ヒーローと、個性的で存在感あるエース。この二人が際立つようなサッカーが、ぼくらの心のなかに典型的なスタイルとして根付いています。フィンクさんの最初のアプローチは、まさにそんなサッカーです。言い換えると、イニエスタの感性で試合を作り、最終的にビジャに点を取らせることから逆算したサッカーです。なので対極となるコレクティブなスタイルとは違って、とにかくイニエスタとビジャが目立ちます。イニエスタとビジャを見ていれば神戸の試合が分かる。とてもテレビ的、漫画的ですから、子どもたちにもあるいは普段サッカーをみない人にも分かり易い。バルサやスペイン代表のスタイルは、完成するまでの長い過程は複雑でストレスフルですから、ときとして見る側に忍耐を強います。その点、いまの神戸は、直感的に捉えることができるので、チーム作りの第一歩として、オーソドックスな良いアプローチだと思います。

初イニエスタの印象は、今日のイニエスタが、ベストを10イニエスタとして何イニエスタくらいなのかわからないけど、それほどの凄みは感じませんでした。たしかにプレーはエレガントなのだけど、既視感がある。なにしろ日本的な司令塔ですから、俊輔、ヤットあるいは憲剛とかぶります。イニエスタがやっているのでバイアスがかかるけど、本質的にはようするに翼くん。それでも一見して違いがあるのは、ミスがほとんどないこと。とくにパスするときのポジショニングとタイミングとアプローチのミスが皆無と言っていいほどのクオリティです。この差はたぶん、ぼくらにはほとんどわからないでしょうけど、確実に試合観戦に影響します。イニエスタのコントロール下にある試合は、イニエスタがつくる快適なリズムのおかげで小気味良いものになります。これもテレビ的に重要な要素のひとつ。イニエスタは、ぼくらにサッカーの分かりやすさを届けてくれる天使なのでしょう。

さて、試合。試合はそんなイニエスタ率いる神戸が最初だけ優勢をみせます。神戸のWGの処理は、二人ともなかに絞ります。ウェリントンをはさんで三人が中央に並びます。そのラインに大伍と初瀬も上がりますから、五本の攻撃ルートができます。これがイニエスタとビジャのハブの役を担います。リンクマンとして重要なのはアクセント。ビジャにラブリーな状況を作りだす能力です。そのためにはビジャとの調和が必要だと思います。これには時間がかかるでしょう。イニエスタのパスを引き出すプレーは機械的ですから、トレーニングを重ねれば割りと簡単に作れると思います。ビジャとのコンビネーションは、ビジャが細かい動き直しを信条としているようなので、つきつめると感性の共有ですから、難しいと思います。現時点では、たまとのラインはできつつあるけど、ウェリントンと慶治朗はまだまだ分断されてるようです。でもここにポルディが入ると、ちょっと脅威ですね。有り体に言えば、難しいサッカーをしなくても、質の高い選手たちがやり易いシンプルなサッカーをすれば、十分強いチームを作れるのです。

とはいえ発展未遂の神戸ですから、5分もすると東京のリズムになります。例によって堅陣で神戸の攻撃ルートを遮断した東京は、神戸にボールを持たせることに成功します。イニエスタの視野をしてパスコースがないのですから、逆説的に東京の守備力を証明したといえるでしょう。あっという間にリズムを引き寄せた東京は、今度は圧をかけはじめます。ターゲットはハブ。中盤のプレス強度で東京は神戸を圧倒します。

短いながらも、シーズンのターニングポイントとして注目していた中断期間は、とくにキャンプをはった様子もないので、上乗せのために特別なメニューを消化したわけではなさそうです。主力が出張という機会をポジティブに捉え、穴埋めのテストを重ねたのでしょう。まずはチームのベースである堅陣とプレッシングが後半も維持されていることに安心しました。前半はスコアレスのまま終了。

後半開始早々、試合が動きます。

49分。神戸の左サイドのアタックから。イニエスタのクロスはゴールを越えて右サイドに流れます。これをウェリントンが拾ってリセット。ウェリントンは上がっていた大伍に渡します。ペナルティエリア角で受けた大伍はルックアップ。大伍には慶悟がマーク。ペナルティエリア内は、ニアからたま、ビジャ、慶治朗。東京は最終ラインが揃っていて、両CMと晃太郎も戻っています。7on3の完全な数的優位です。ところがサイドチェンジがあったばかりなので、守備陣はボールとマークの確認中。この時大外では、フラフラとイニエスタがゴールラインから戻っていました。守備陣はチェックできなく完全にフリーです。成のミスといばそうだけど慶治朗を見ていたので難しいでしょう。これを見た大伍は、細かいステップで守備陣の注意を引きつけイニエスタを空けたままにした状態から大きくサイドチェンジのクロスを送ります。このプレーがスーパーでした。左45度の位置で受けたイニエスタは、トラップから右足シュートまで無駄なく流れるようでした。東京0-1神戸。

ちょうど角度的にイニエスタの真後ろから見ていたので、イニエスタと同じ視界でシュートコースが見えました。脳ではシュートすることはわかったのだけど、ほんの一瞬でカメラを向けようと反応する寸暇もなかったので、やっぱりサッカー選手の反射力ってすごいなと思いました。

いきなり先制しちゃったけど、神戸のアジャストは後半のプラン通りに実行されたと思います。これまたスパニッシュなスタイルとは真逆で、近年のJリーグのトレンドに沿った作戦です。フィンク神戸は、ますます日本的濃度を増していきます。まだ一試合だけど、もしかしたらフィンクさんはJリーグに合っているのかもしれませんね。神戸は中盤の強度を高めます。驚くべきことにイニエスタも含め、ウェリントン、たま、慶治朗、蛍、そしてイニエスタ(^_^)が、東京のプレッシングにガチ勝負を挑んできました。これで前半の東京のイニシアチブは、ふたたびイーブンに戻ります。

ここで健太さんが動きます。二枚同時代えです。輝一に代えてインスを同じくトップに投入します。

晃太郎に代えてサンホを同じく右メイヤに投入します。

おそらくプラン通りだと思います。スターターは試合を作るためにある程度コンサバティブなチョイスで、仕掛けところでギアアップのためにカードを投じる、継投策だと思います。これが主力の穴埋めの現時点の答えだと思います。インスとサンホの投入で、がぜん縦の推進力を得ます。

興味深いことに、神戸がこれに付き合います。試合のスピードは、とくにバルサメソッドにとっては違和感の塊だと思います。バルサメソッドに固執するとスピードに苦しむことは、ぼくらは体験済み。だからスピードアップすればするほど神戸は受け身になっていくだろうと思っていました。ところが、驚くべきことに、イニエスタ すらもハイスピードに身を投じていきます。サッカーの多様性の本質をみた想いです。メソッドに準じる象徴のようなバルサで育った選手も、サッカーの多様性を表現できる。ここにこそ、日本が学ぶべきことがあるような気がします。

神戸が東京のどつきあいに真っ向から挑んできたので、試合はオープンファイトに移行します。正直、これで東京にゴールがくると思いました。ガチ勝負になったら、カウンターのスピードと精度、それを裏付ける守備の安定で数段上回る東京が優位ですから。案の定、サンホとインスが生み出す超高速の躍動感が、ジワジワと神戸を圧倒していきます。終わってみれば、何度かあったスンギュとの1on 1のシチュエーションをすべて止められてしまったことが、もちろん拳人のバーに嫌われたヘッドやインスに合わなかったクロスなどもありながら、直接的な敗因だと思います。

東京は、東京の攻撃のかたちは作れていました。ようするに最後の仕事だけ足りなかった。常々思うようにサッカーは相対性のスポーツです。ゴールを決められなかったアタッカーの問題かスンギュがすごかったのかわからないけど、ぜんぶ止められちゃったのだから、今日ばかりはスンギュの軍門に下ったことを認めざるを得ないでしょう。東京は、編成に動きがあるとしても、まずはかたちを作ることが大切です。ゴールはもはや相性と運の問題。

オープンになった状況をフィンクさんがどう捉えるかなと思っていたら、乗っかるほうを選びます。たまに代えて古橋を同じく右WGに投入します。カウンターの威力を高める意図です。

これを受け、健太さんも真っ向勝負します。今日はベンチスタッフもアグレッシブでした。勝ちにこだわるという、再開初戦の重要性を表していると思います。洋次郎に代えて柊斗を同じくCMに投入します。柊斗は、洋次郎よりもプレーエリアは広くないですけど、その分中盤でのCMの存在感が増し、ハイスピード下のビルドアップに頻繁に絡みます。柊斗がチームにアグレッシブな流れを呼び寄せました。

対するフィンクさんも動きます。ビジャに代えて郷家を同じくトップに投入します。逃げ切りを視野にリフレッシュする意図でしょう。

最終盤にきて、健太さんがギャンブルです。どうしても負けず嫌いになっちゃうときに出るパワープレーです。モリゲを最前線に上げた、ダイヤモンド型の4-4-2です。インスがトップ下に回ります。ところがこれが裏目に出ます。中盤のハイプレスからカウンターというかたちで流れができていたのに、ターゲットに当てるという異なるやりかたを持ち込んだため、リズムが狂います。後方からモリゲめがけてフィードを送りますけど、これがことごとくミスになります。逆に神戸に拾われてカウンターを浴びるようになります。

この状況をみてフィンクさんが〆ます。イニエスタに代えて博文を投入します。同時にシフトを3-4-1-2に変更します。博文は右CB。郷家がCMに下がります。分かりやすく逃げ切りの意図です。

神戸に渡した流れを戻せず。このまま試合終了。東京0-1神戸。

昨年の反省を踏まえると大事な大事な再開初戦を落としました。内容は悪くはなかったとはいえ、これからは結果のプライオリティが高くなってくるので、気にならないわけではありません。まずは攻撃。ゴールに結びつけたかった狙いの通りのシーンを振り替えって、しっかり課題をみつけてほしいと思います。

やっぱり連戦の代償というか、怪我人が増えてきました。日替わりヒーローに期待するにはまだシーズンは長いので、これから本格的な夏場を迎えることもありますから、コンディションは十分にケアしてほしいですね。

ずいぶん濃いシーズンを送っていて贅沢な想いをしていますけど、まだ折り返しを迎えていません。次節は前半戦最後のアウェイ。日曜ナイターなので参戦はまだ決めてないけど、苦手シリーズのひとつユアスタの克服を期待したいと思います。