99年、初めてこの街を訪れた時のこと。
その日、花の街フィレンツェは、初秋の爽やかな光の中にあった。
まずは、ノヴェッラ駅の近くウニタ・イタリア広場から10分ほど、サン・ロレンツォ教会の裏手、メディチ家礼拝堂(写真上)から、中世の面影を色濃く残す旧市街を歩いてみた。
礼拝堂の入口には既に何人かが並んでいたが、待つこともなくチケットを買うことができた。
この建物の2階に、メディチ家の歴代君主の礼拝堂がある。
さらに、廊下を進むと、ルネッサンスの三大巨人のひとり、ミケランジェロ・ブオナローティが設計した新聖具室がある。
ところで、この街は、メディチ家を抜きにして語れない。
メディチ家の紋章は丸薬を模したものだが、その紋様から先祖は薬屋か医師であったのではないか、とされているらしい。
その後、金貸しとして財を成し政冶にも手を広げたという。
やがて、この街の実質的な支配者として君臨、後に、トスカーナ大公国の君主にまで登りつめた一族である。
話は戻って、新聖具室にはそのメディチ家のロレンツォ2世とジュリアーノの墓があり、ミケランジェロの傑作、「寓意像」がある。
1520年、ミケランジェロが、メディチ家出身の教皇・レオⅩ世の依頼を受け制作をしたといわれている。
夭折したふたりの若者に、ミケランジェロは、“ 一日の時間が早く巡って人生を短くしてしまった ” と、ソネット・詩を書いてこの擬人像を彫ったとされている。
ジュリアーノの肖像(写真中)の下には、「昼=男性像 と 夜=女性像」が、ロレンツォ2世の肖像(写真下)の下には、「曙=女性像 と 夕暮=男性像」が配置されている。
ひっそりと息づくこの四体の像は、“人生の始まりと老い ” を表現しているのだそうだ。
像をとっくりと眺めていると、この作品のテーマを考える前に、構想の壮大さと横たわる像の力強さ、そして何よりも「そのマッチョ振り?」に圧倒されてしまったのだが、「傑作のどこを見てるの?」と笑われてしまった。
まずは、花の街で最初に目撃したルネッサンス芸術の傑作、それは、巨人・ミケランジェロの圧倒する擬人像でありました。