ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

覆水盆に返らず ‐ 言葉

2010年10月06日 | 人/仲間

 10月1日の朝日、一面ピンク色に染まった全面広告が際立った。この日から「乳がん月間」なのだそうだ。

 

 三人に一人はがんになる時代という。
 標準的な家庭に一人ということだが、医学の進歩により、検診などをきちんと受け早期に発見さえすれば怖い病気ではないと聞く。

 

 Photo_4話は戻って、“ ピンクリボン運動 ” という言葉を耳にする度に、忸怩たる思いが心をよぎる。
 5、6年も前のことだったろうか、軽く一杯と居酒屋の暖簾を潜った。

 

 その席で、少し元気がないように見えたらしく、Aさんから、体調が悪いの?」と訊かれ、「うん、がんやねん」と、冗談にもならない馬鹿な答えをしてしまった。

 

 そして、Bさんが、「がんと言えばこの間、神戸でピンクリボン運動の大会が開かれたみたいだね」と言った。

 

 皆がその話をしていると、Cさんが、「その運動、余り好きじゃないんだ」と、静かに言った。

 

 Photo_5そして、「なんか、同情してと言っているように聞こえるから」という意味の言葉が続き、もっと、素直にとればいいんじゃないかなあ?」と言ったら、「私もそうだから、そんな風に感じてしまうのかなあ?」と、からっと言った。

 

 息を呑んだようになった場を、解きほぐすように明るく笑いながら、「温泉で家族風呂と気を使ってくれるのん嫌やねん。皆さんと一緒のお風呂でちっとも構わないのに」と続けた。

 

 彼女の勁さに感心すると同時に、軽率な言葉を口にした己を内心で罵った。
 私の言葉で傷ついた風はなかったのがせめてもの救いだったが、“ 覆水盆に返らず ” と言う。
 一時の感情や思い付きで口にした言葉は、思いも寄らず人を傷つけてしまう。

 

 ピンク色に染まった広告を前に、遠い日の出来事に、改めて、忸怩として非礼を謝したいと思う。

コメント (2)
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