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EUとのEPA交渉 大枠合意
NHK NEWSWEB 7月6日 4時12分
EUにとっての意義
日本とEUのEPAが発効すれば、人口6億3000万余りの巨大市場での貿易がさらに活発になることが期待されます。
日本とEUの去年1年間の貿易額をあわせるとおよそ11兆7000億ドル、日本円でおよそ1330兆円と世界全体の貿易額のおよそ37%を占め、GDPの合計は世界全体の28%余りに当たります。
EUは日本とのEPAで日本への輸出が34%増え、EUのGDPを最大で0.76%押し上げる効果があると見込んでいます。
EUは活発な貿易が域内の企業の競争力を強化し、経済成長や雇用の拡大につながるとして、自由貿易の推進を掲げてきました。
歴史的に関係の深い中東やアフリカ各国をはじめ、韓国やカナダなど世界の91の国や地域との間で43の貿易協定を結んでいます。
現在もメキシコとの貿易協定の改定や、ブラジルやアルゼンチンなどで作るメルコスール=南米南部共同市場との間で協定の締結に向けた交渉を進めています。
先月開かれたEU首脳会議ではアメリカがTPP=環太平洋パートナーシップ協定から離脱するなど、保護主義的な姿勢を強める中、「保護主義と闘う」という文言を盛り込んだ文書を採択しています。
アメリカに次ぐ経済規模のEUは、4位の日本とのEPAで、自由貿易を推進する姿勢を改めて強調する狙いがあります。
EUは、日本との交渉では、一部でTPPの合意を上回る内容を求めてきました。EUとしてはより有利な条件を日本から引き出すことで、イギリスとの離脱交渉が続く中、加盟国に対しEUのメリットをアピールし、求心力を高めたいという思惑もあります。
EUの期待と懸念
EUは加盟国に農業国も多く、日本と大枠合意したEPAを通じて、食品や農産物の輸出が拡大することに期待しています。
ヨーロッパ産のワインやチーズ、スパゲッティ、チョコレートなどは日本でも人気が高い一方、EUによりますと、これらの品目の中には日本が30%前後の関税をかけているものもあるということです。EUとしては関税の撤廃や引き下げによって、日本市場でヨーロッパの農産品の価格競争力を強化したい考えです。
このうちチーズについて、EUは原則としてすべての関税を撤廃するよう求め、交渉の焦点の1つになってきました。EUのチーズの生産量は世界最大で、去年の輸出額は36億ユーロ、日本円にして4600億円余りと農産物ではワインなどに並ぶ主力の輸出品です。
ヨーロッパではおととし、チーズの原料にもなる牛乳について、EUが生産を調整して価格を維持する制度を廃止したことなどから牛乳は供給過剰となり、価格の下落に抗議した酪農家が各地で抗議活動を行いました。このためEUは、牛乳の需要を増やせるチーズの輸出拡大に取り組んでいて、日本とのEPAの交渉でも力を入れてきました。
一方、日本とのEPAをめぐってEU側は自動車産業への影響を特に懸念しています。ヨーロッパの自動車メーカーで作る業界団体によりますと、EU域内で自動車産業に従事する人はおよそ1260万人で、雇用総数のおよそ6%に当たり、EUの経済を支える主要産業だとしています。EUに輸入される乗用車の中では日本からのものが最も多く、業界団体によりますと、去年はおよそ900億ユーロ、日本円で11兆5000億円余りで、乗用車の輸入額のおよそ24%を占めています。
また台数では日本から輸入された乗用車は57万台余りで、EUから日本へ輸出される台数のおよそ2倍になっています。EUは日本の乗用車に10%の関税をかけてきましたが、7年で撤廃することで合意し、業界団体は日本からの乗用車の輸入がさらに増えることになると懸念を強めています。一方で、EU域内には日本の自動車メーカーの工場が14か所、研究・開発拠点は16か所あり、合わせて3万4000人が雇用されているということです。
このためEU側には、EPAが発効して貿易がさらに活発になれば、現地生産を行う日本メーカーの工場が増え、雇用も増える可能性があるという見方も出ています。
EUとのEPA交渉 大枠合意
NHK NEWSWEB 7月6日 4時12分
EUにとっての意義
日本とEUのEPAが発効すれば、人口6億3000万余りの巨大市場での貿易がさらに活発になることが期待されます。
日本とEUの去年1年間の貿易額をあわせるとおよそ11兆7000億ドル、日本円でおよそ1330兆円と世界全体の貿易額のおよそ37%を占め、GDPの合計は世界全体の28%余りに当たります。
EUは日本とのEPAで日本への輸出が34%増え、EUのGDPを最大で0.76%押し上げる効果があると見込んでいます。
EUは活発な貿易が域内の企業の競争力を強化し、経済成長や雇用の拡大につながるとして、自由貿易の推進を掲げてきました。
歴史的に関係の深い中東やアフリカ各国をはじめ、韓国やカナダなど世界の91の国や地域との間で43の貿易協定を結んでいます。
現在もメキシコとの貿易協定の改定や、ブラジルやアルゼンチンなどで作るメルコスール=南米南部共同市場との間で協定の締結に向けた交渉を進めています。
先月開かれたEU首脳会議ではアメリカがTPP=環太平洋パートナーシップ協定から離脱するなど、保護主義的な姿勢を強める中、「保護主義と闘う」という文言を盛り込んだ文書を採択しています。
アメリカに次ぐ経済規模のEUは、4位の日本とのEPAで、自由貿易を推進する姿勢を改めて強調する狙いがあります。
EUは、日本との交渉では、一部でTPPの合意を上回る内容を求めてきました。EUとしてはより有利な条件を日本から引き出すことで、イギリスとの離脱交渉が続く中、加盟国に対しEUのメリットをアピールし、求心力を高めたいという思惑もあります。
EUの期待と懸念
EUは加盟国に農業国も多く、日本と大枠合意したEPAを通じて、食品や農産物の輸出が拡大することに期待しています。
ヨーロッパ産のワインやチーズ、スパゲッティ、チョコレートなどは日本でも人気が高い一方、EUによりますと、これらの品目の中には日本が30%前後の関税をかけているものもあるということです。EUとしては関税の撤廃や引き下げによって、日本市場でヨーロッパの農産品の価格競争力を強化したい考えです。
このうちチーズについて、EUは原則としてすべての関税を撤廃するよう求め、交渉の焦点の1つになってきました。EUのチーズの生産量は世界最大で、去年の輸出額は36億ユーロ、日本円にして4600億円余りと農産物ではワインなどに並ぶ主力の輸出品です。
ヨーロッパではおととし、チーズの原料にもなる牛乳について、EUが生産を調整して価格を維持する制度を廃止したことなどから牛乳は供給過剰となり、価格の下落に抗議した酪農家が各地で抗議活動を行いました。このためEUは、牛乳の需要を増やせるチーズの輸出拡大に取り組んでいて、日本とのEPAの交渉でも力を入れてきました。
一方、日本とのEPAをめぐってEU側は自動車産業への影響を特に懸念しています。ヨーロッパの自動車メーカーで作る業界団体によりますと、EU域内で自動車産業に従事する人はおよそ1260万人で、雇用総数のおよそ6%に当たり、EUの経済を支える主要産業だとしています。EUに輸入される乗用車の中では日本からのものが最も多く、業界団体によりますと、去年はおよそ900億ユーロ、日本円で11兆5000億円余りで、乗用車の輸入額のおよそ24%を占めています。
また台数では日本から輸入された乗用車は57万台余りで、EUから日本へ輸出される台数のおよそ2倍になっています。EUは日本の乗用車に10%の関税をかけてきましたが、7年で撤廃することで合意し、業界団体は日本からの乗用車の輸入がさらに増えることになると懸念を強めています。一方で、EU域内には日本の自動車メーカーの工場が14か所、研究・開発拠点は16か所あり、合わせて3万4000人が雇用されているということです。
このためEU側には、EPAが発効して貿易がさらに活発になれば、現地生産を行う日本メーカーの工場が増え、雇用も増える可能性があるという見方も出ています。