フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

映画 Le Jour et la Nuit - ベルナール・アンリ・レヴィ

2006-03-10 23:28:45 | 映画・イメージ

一昨日に 「昼と夜」 について書いたので何気なくネットサーフをしていたら、"Le Jour et la nuit" という映画が作られていたことを知る。アラン・ドロン Alain Delon やローレン・バコール Lauren Bacall が出ている1997年の映画である。しかもその監督がベルナール・アンリ・レヴィ Bernard-Henri Lévy (BHL) (1948-) という人で、今週の LE POINT のアメリカについての特集に出てきている。

自らをアンドレ・マルロー Andre Malraux に重ねているらしい彼は、アメリカの雑誌 The Atlantic Monthly の依頼で、アメリカを9ヶ月に渡って旅して回る企て (le périple) をした。この1月にはその経験を "American Vertigo, Traveling America in the Footsteps of Tocqueville" (Random House) として発表し、その仏版が3月8日に発売された。丁度、1833年に Alexis de Tocqueville (1805–1859) がアメリカを旅し、その民主主義を観察して、"Du système parlementaire aux États-Unis et de son application en France" としてまとめたように。

今回のBHLの本を読む前に、書評やブログなどを調べてみた。アメリカ人から見ると、外国人がちょっとだけ来てアメリカの一部を見て批判的なことを書かれるのは耐えられないようだ。確かに外国人の利点はあらゆることが新鮮に見えることだが、それは逆にどうしてこんなことに注目するのかわからないという点を取り上げて論評することになる危険性も孕んでいる。さらにこの方、シャロン・ストーンやウォーレン・ビーティなど華やかな人との接触がお好きなようで、これでは本当のアメリカを見ることはできていないのではないか、Tocqueville の名前を出すのもおこがましいという反応である。

例えば、New York Times の書評 (by Garrison Keillor) は、かなり感情的になっている。とにかく、自分の国について論評されるのが気に障るという様子が溢れている。そして、「アメリカの状態は政治的にも社会的にも酷いのだが、このまま潰れることはないだろう、私は希望を持っている」 というBHLの言葉を受けて、こう結んでいる。おそらく、アメリカの平均的な反応ではないかとも思われるのだが、。

Thanks, pal. I don't imagine France collapsing anytime soon either. Thanks for coming. Don't let the door hit you on the way out. For your next book, tell us about those riots in France, the cars burning in the suburbs of Paris. What was that all about? Were fat people involved?

「ありがとう。私もフランスが直ちに崩れるとは想像していません。訪問ありがとう。お帰りは、静かにドアをお閉め下さい。あなたの次の本ではパリ郊外で車が焼かれたあのフランスの暴動について書いてください。あれは一体何だったんですか。肥満の人が関わっていたのですか。」(最後は、この本の中でアメリカの特徴を示すとして使われた "hyperobesity" という言葉に対するもの)

この反応の仕方を見て、以前ソルジェニーツィンがアメリカに亡命して少し経ったところでテレビに出て、アメリカ文化の軽薄さや底の浅さを痛烈に批判した時のことを思い出した。その後にアメリカの文化人のコメントが流れていた。具体的な発言内容は今思い出せないが、総じて言えば、彼は偉大な作家かもしれないが、ホテルに住んでテレビだけが情報源だとこの程度のアメリカ認識にしかなられないという軽い怒りと落胆と同情が綯い交ぜになったような反応であった。一般の人の反応はもう少し厳しいものであったはずである。

ところでこのBHLという方、"Le Siecle de Sartre" 「サルトルの世紀」 も著している。ひょんなところから目の前に開けた繋がりである。

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7 コメント

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Unknown (paul-ailleurs)
2006-03-21 21:58:27
NYTの原典は以下のページで読めます。そのような皮肉にも取れますが。どのように解釈されるのかお聞きしたいところです。



http://www.nytimes.com/2006/01/29/books/review/29keillor.html?ex=1296190800&en=f45b6b60925ee6f7&ei=5090&partner=rssuserland&emc=rss
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Unknown (さなえ)
2006-03-21 15:38:04
「肥満の人が関わっていたのですか。」のところですが、僭越ですし、間違っている可能性がありますが、「太ったアメリカ人のせいとでも?」と皮肉を効かせたいところですね。こうやって踏み込むとクレームが付いてしまうのですが…
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見てみました (paul-ailleurs)
2006-03-15 00:05:59
仰るように画面が絵画のような映画でした。記事を書いてみました。お暇の折にお立ち寄りいただければ幸いです。

http://blog.goo.ne.jp/paul-ailleurs/e/50c220af5757712db25efa8842128c20
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Unknown (paul-ailleurs)
2006-03-12 17:05:02
ありがとうございます。

早速見てみようと思います。
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Unknown (さなえ)
2006-03-12 16:44:50
ハイ、その映画です。色彩が素晴らしく美しい映画でしたよ。その頃はフランス映画の全盛時代だったのではないでしょうか。
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Unknown (paul-ailleurs)
2006-03-11 08:41:07
昨年のパリ郊外、ブルトゥイユの森の中を散策している時に突然現れた池のほとりでのことでした。夢の中を歩いているような感じでした。

http://blog.goo.ne.jp/paul-ailleurs/e/d2a4ad6d71340fb03b03818a3f5a2022



この写真は私のファイルで見ていた時にはそれほどの印象はありませんでしたが、ここに出してみると雰囲気があるものに変わっていました。この場所に出てくると写真も緊張してよくなるのでしょうか。



ところで「幸福」というフランス映画、今調べたところアニエス・ヴァルダ監督のものが出てきましたが、これでしょうか。見てみたくなりました。ご紹介ありがとうございます。
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Unknown (さなえ)
2006-03-11 07:12:06
実に誘われる写真ですね。まるで昔のフランス映画「幸福」の1シーンのよう。あの映画はなぜだか反芻するようにときどき意識の表面に浮かんできます。クリックしたのですが大きくならず残念。
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