おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「責任に時効なし」 嶋田賢三郎

2008年12月20日 | さ行の作家
「責任に時効なし」 嶋田賢三郎著 アートデイズ (08/12/19読了)

 小説の中では、「トウボウ(東京紡績)」「住倉五井銀行」とかなっていますが…そのものズバリ、カネボウの粉飾事件です。著者はカネボウの常務を務めた方で、思いっきりインサイダー。1カ月くらい前の日経の水曜夕刊の本コーナーで紹介されていて、確か、最高の5つ★だったような…。その他、サラリーマン系週刊誌等で絶賛されている模様。

 「会社ぐるみの粉飾」とは、いったいなぜ起こるのか、善意の人がいてもそれを食い止めることができないのか-著者はそれを問いたかったのだと思います。主人公の番匠(恐らく、著者本人がモデル)は、トウボウの粉飾事件で逮捕された経営陣の一人。でも、実際には、番匠は粉飾にはずっと反対し続けていたし、そもそも、粉飾は歴代の経営者が先送りにし続けた結果、雪だるま式に膨れ上がったもので、原因を作ったり、問題を大きくした過去の経営者の責任が問われず、たまたま、外部に発覚した時にボードにいた役員ばかりが責任を問われなければならないのはなぜなのか-著者にはそうした義憤があったのでしょう。

 粉飾事件の背景や、その後の、カネボウ崩壊の過程がかなり詳細に掛かれていて、大変、興味深い資料でした。「暴露本」としては、かなり面白いと思います。でも、純粋に、「小説」として読むと、あまり、楽しめないかなぁ。というのも、あまりに最近のデキゴトなので、生々しすぎるのです。読み手を楽しませるというよりも…過去の経営者たちに向かって「お前ら、ただで済むと思うなよ」とすごむようなマイナスのオーラを感じるのです。

 話の筋とは関係ありませんが、番匠はイケてるオヤジとして描かれていて、ハンサムでファッションセンスもナイスで、しかも、飛行機で隣り合わせた年若い美人の芸術家と恋に落ちるのです。で、恐らくモデルであるご本人さまもお写真を拝見すると、本当に、イケてるオヤジって感じなのですが… そのナルシストな感じが、ちょっと恐いと思ってしまいました。


2 コメント

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僕も読みました (3news)
2009-01-05 11:18:33
おもしろかったけど、
たしかに、ナルシスですね。
笑ってしまいました。

オリオンさんの文章、おもしろい!
またきます。
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お待ちしてます。 (おりおん。)
2009-01-05 13:35:15
3newsさん。
初めまして。コメントありがとうございました。 この人、こんなに暴露しまくって、元カネボウ関係者から嫌がらせとかされないのかな…とか、小説の筋とは関係ないことが気になって仕方ありませんでした。

よかったら、また、いらして下さいまし。

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