おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「BOX!」 百田直樹

2009年01月01日 | は行の作家
「BOX!」 百田直樹著  太田出版 (09/01/01読了)

 「箱?」ではありません。「BOX!」は「ボクシング」の動詞。私のイメージの中では、レフェリーが掛ける合図は「ファイト!」なのですが、最近では「ボックス!」と言うそうです。

 「一瞬の風になれ」(佐藤多佳子著 講談社刊)のボクシング版-って感じです。大阪の高校のボクシング部を舞台に、天性の才能を持つカブちゃんと、中学生までは苛められっ子だった優紀の成長物語。優紀は特進クラスで上位5番に入る優等生。街で行き会った中学時代の同級生にボッコボコにされた屈辱に耐えかねて、周囲の反対をよそにボクシング部に入部する。優紀にとっては、見た目も性格も好対照だけれども、子どもの頃からウマがあったカブちゃんが憧れの的。カブちゃんのように強くなりたくて、愚直なほどに努力を重ねる。野生のカブちゃん、理論の優紀はタイプが違うのだけれども、それぞれが刺激しあい、かけがえのない存在となっていく。

 マドンナ役は顧問の高津耀子先生。ひょんなきっかけで顧問を引き受けることになった高津先生はボクシング素人。なので、彼女が部員や監督に問いかける素朴な質問が、読者にとっての適切なガイダンスとなって、自然とアマチュアボクシングのルールを理解しつつ、物語に入りこんでいけます。

 ディープ大阪の高校ボクシング部が舞台となれば、さぞや暑苦しいストーリーかと思いきや、意外とサラリした語り口です。試合風景ばかりではなく、ほのかな恋物語あり、友情物語ありで、分厚いわりには、読者を飽きさせません。そして、実は、高校生以上に、顧問の高津先生が成長していく様が、女性読者にも共感しやすいのではないかと思いました。

 若干、冗漫な感は無きにしもあらず。50ページ圧縮したら、もっと、濃い~く、ずっしりとした読後感だったかもしれません。少なくとも3カ所の誤植というか、校正漏れ(耀子が輝子になっていたりとか…)があったのが気になりましたが、新年第一冊目としては、大変、気持ちよく、清清しい読後感でした。


2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今年もよろしくです(^○^) (latifa)
2009-01-02 16:31:43
おりおんさん~こんにちは!!
去年は色々お話できて、とてもうれしかったです。今年もまたどうぞよろしくお願いします☆

>冗漫な感は無きにしもあらず
うん。恐れながら私もそれは感じましたです(^^ゞ
でもおもしろく読めて、なかなか良い本だな~と思いました。
で、王様のブランチに作者の方が出演されていた時に「女性作家の方々がが書く男性スポーツ小説は、違う~!違うんだよ~男はこうじゃないよ~、もっとあっさりしてるんだよ~と思っていたので、自分が書きたかった」みたいなことを言っていたんですね。
 まあ私は女性だし、男性じゃないから、当然本当のところは解らないし、、、そうかもしれないけど・・。でも、それを堂々と言っちゃうなんて、結構なんていうか、、すごい自信がある人なのね・・?というのが印象に残りました。

で、この本の校正もれを発見されたのですねーー^^
すごい~~!!私はそういうの全然見つけられないのです・・。うちの娘が新聞や雑誌の文字間違いを発見するのが好きで?よくここ違うよ~と見せてくれては、「うぬ~~全然気がつかんかった・・・悔しい・・」と思っているんです。

ところで、「一瞬の風になれ」は、ちょうど今1巻を読んでいるところなんです。朝は箱根駅伝をやっていて、しをんさんの本を読んだ後では、ちょっと見てもいいかなあ・・と思う様に気持ち的に変化はあったんですが、長いので、結局出かけてしまいました(^▽^)
返信する
一瞬の風になれ (おりおん。)
2009-01-03 11:06:05
latifaさん。

コメントありがとうございます!
「箱根駅伝」1日目、私は、ついつい見ちゃいました。東洋大の1年生が箱根の山で5分差を詰めて往路優勝。1年生というだけあって、まだあどけなくて、カラダも細いのに、勝負オーラがでまくっていて、とってもドラマチックでした。コースは車では何度も通ったことがある道で、歩いて上るのすら気が遠くなりそうなのに、そこを走って、しかも5分の差を縮めるなんて…タダモノではありません。

私も、これまで箱根駅伝って、積極的に興味持ったことなんてなかったけれど、しおんさんの小説読んだ後なので、面白かったです。

ではでは、また。
今年もよろしくお願い申し上げまする。 

「一瞬の風になれ」なかなか良かったですよ。
返信する

コメントを投稿