おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「一弦の琴」 宮尾登美子

2008年08月03日 | ま行の作家
「一弦の琴」 宮尾登美子著 講談社文庫 (08/08/02読了)

 1979年(29年も前だ!)の直木賞受賞作です。先々週、青森出張のお供に最新刊の「錦」を買うつもりが、羽田空港内の書店には未入荷。でも、宮尾登美子が読みたい気分だったので、「一弦の琴」を買ったのでした。言葉遣いも若干難しく、決して、スラスラと読める本ではないけれど、でも、読み応え十分!現在、NHKの大河ドラマで宮尾登美子原作の「篤姫」が放送されていますが…なるほどと頷けます。最近の作家の作品でも「映画化したら面白そう」とか「スペシャルドラマでいけるんじゃないの?」と思う作品はたくさんありますが、でも、大河ドラマを書く筆力がある人は少ないような気がします。

 「一弦の琴」をめぐる女の戦いの物語。子どもの頃に聞いた「一弦琴」の音色に魅せられた苗は、その道を極めるべく、青春時代を琴に捧げ、ひたすら練習に励む。まだまだ自由な恋愛や結婚が許されない時代であり、女はひたすらに婚家に仕える存在だったものの、子に恵まれなかった苗は夫の支援を得て一弦琴の教室を興す。一弦琴の教室は、夫婦にとっては子どもに代わる存在であり、大切に育てているうちに、やがて、土佐の良家の子女の集う大教室へと成長していく。その大勢の弟子たちの中でも、実力に秀でた蘭子との壮絶なバトルが物語の主軸。蘭子は周囲から、苗の後継者と目され、本人も実力ナンバーワンの自覚を持ち練習に打ち込む。しかし、ひたすら「一弦琴」の音色を愛する苗にとっては、ナンバーワンの弾き手であること、人から実力者と認められることにこだわる蘭子は、違和感のある存在。そして、ついに、蘭子外しの奇策に出たのでした。失意の蘭子は、一旦は、一弦琴から離れるものの、苗の死後、改めて、苗を超えるための蘭子の復讐バトルが始まる。ひたすらビュアに琴を愛する苗に、ついつい感情移入してしまいますが、でも、誰の心の中にも、蘭子のように「人に認められたい」「私こそ第一番の存在」という気持ちがあるのではないでしょうか。苗とは違う意味で、蘭子もまたピュアなだけに、二人の戦いは苛烈を極めるのかもしれません。

 しかし、それにしても重い。「錦」は是非、読んでみたかったけれど…続けて読む元気はありません。次は、軽めの作品で頭をほぐしたいと思います。



2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
一弦の琴で感動しました。 (おとやん)
2008-08-31 22:25:21
 私もつい最近、一弦の琴を読み終わりました。
本当に難しい本で、辞書がないと読めない厳しさがありましたが、とにかく内容が濃く、女性の人物描写がとても繊細で、読むほどに引き込まれて行きました。
 宮尾登美子さんの本を読んだ事がなかったので、次も読みたいのですが、何を読んだらいいか迷ってるところです。
 今は「一弦の琴」をドラマで見たくなってNHKドラマのDVDを購入して見ています。主役は田中美里さんで、とてもいいですよ。
返信する
コメントありがとうございます。 (おりおん。)
2008-09-01 00:18:50
 おとやんさん、初めまして。コメント&TB有難うございました。「一弦の琴」確かに、難しかったですが、読み応えもあり、よかっですよね。

 「一弦の琴」は、私にとっても、「初・宮尾登美子」でした。最新作の「錦」も面白そうだけど…文庫化されていないので、通勤途中で読むのは重いし…。というわけで、いかにも流行り物っぽい感じですが、大河でやっている「篤姫」を読もうかなぁと思っています。

 吹石一恵さん、最近、一段とお綺麗ですよね。資生堂の美白化粧品のCMが流れていると、ついつい、手を止めてみてしまいます。

 
返信する

コメントを投稿