おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「母」 三浦綾子

2008年07月13日 | ま行の作家
「母」 三浦綾子著 角川文庫 (08/07/12読了)

 今、話題の「蟹工船」の著者である小林多喜二の母「セキ」さんの人生をフィーチャーした作品。「セキ」さんを語り手として、素朴な秋田弁で貧しさの中でも、温かく、思いやりにあふれた小林家の様子が伝わってきます。「蟹工船」-気にはなるものの、なんとなく、ヘビーそうな予感がして手に取るのを躊躇してしまっていましたが、母の目を通して、ほんの少しだけ、小林多喜二という人の人生を垣間見られたような気がします。

 セキさんは極貧の家庭に生まれ、13歳で小林家の嫁に。嫁いだ先も決して裕福ではなく、苦労の連続。義兄を頼って北海道に渡り、小樽でパン屋を営むものの、貧乏から抜け出すことはできない。多喜二がようやく、銀行員となり、安定した収入を得られるようになった矢先、もともと病弱だった夫は死んでしまう。決して、幸せとも思えない人生なのに、セキさんの強さ、明るさに心打たれます。小さなことに幸せを見出し、感謝の心を忘れない。セキさんの語る話の中で、多喜二の切ないほどの純愛物語が展開されるのですが…こういう強い母親があってこそ、多喜二は強い愛を貫いたのではないかと思わされました。

 さっき、有隣堂に寄った時に見たら、相変わらず「蟹工船」は文庫本ランキングの上位に食い込んでいました。ワーキングプアが社会問題化しているとはいえ、日本は世界第二位の経済大国。世界的に見れば、豊かさに満ちた国の一つ。私は、共産党支持者ではありませんが…でも、セキさんの優しい言葉を聴いていると、働いた人が報われる社会であってほしいし、そのために、正しく利益の配分が行われてほしいなという気持ちになりました。


1 コメント

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Unknown (latifa)
2008-07-13 20:34:22
おりおんさん~こんばんは!
さっきも自分のところで書きましたが、おりおんさんの三浦さんがあとがきに書いた言葉や、セキさんに対して感じた事、そのまんま私も同じ風に思ったのです。

別にキリスト教やクリスチャンに対して偏見とか全然持ってないのですが、ああいう風に堂々と書いちゃう三浦さんには、ちょっとビックリしてしまいましたよ・・・。

前に「少年H」妹尾河童さん の本を読んだ時に、妹尾さんのお母様が敬虔なクリスチャンで、息子の妹尾さんは、そのお母様の宗教心からの優しさに、時として、とてもついて行けず衝突しちゃうエピソードが書かれていたんです。その衝突した部分は、私も妹尾さんよりの考えだったのです・・。

あらら~なにか、話しがソレてすいませんでした!
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