おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「扉は閉ざされたまま」 石持浅海

2008年03月13日 | あ行の作家
「扉は閉ざされたまま」 石持浅海 祥伝社文庫 (08/03/13読了)

 解説によると、これは「倒叙ミステリー(読み方はトウジョ?)」というものに分類されるらしい。要するに、物語の冒頭の方で殺人シーンの描写があるのです。読者は犯人も殺害方法も知った上で、別の登場人物が犯人と駆け引きをしながら、トリックを解き明かしていく様子を高みの見物できます。これも、解説の受け売りですが…古畑任三郎方式と言えば、わかりやすいかもしれません。

 またまた解説によると、単行本が出版された時点で、既に「そんな理由で、人は、人を殺すのか?」という疑問の声が上がったそうです。読者は犯人も殺害方法も知っていますが、殺人の動機だけは、物語の終盤でようやく明らかになります。私も、正直なところ「おいおい、そんなことで殺人はしないでしょ」と突っ込みを入れてしまいました。斬新なアイデアではあるけれど、でも、あまりにも非現実的です。あとになってみれば、「ああ、あれも伏線だったわけね」と思い当たる部分が幾つもあり、物語としてはちゃんと成立しています。でも、動機としてはバカバカしい。

 しかし、それ以上に、私が違和感を持ったのは、登場人物のセリフが回りくど過ぎる、情景描写が説明的過ぎる-ということです。セリフや情景描写は伏線を張るための重要なパーツであるのでやむを得ない面もあるとは思うのですが…それにしても、読みづらい。本来なら、スピードに乗って読みたいところなのに、文章のリズムが悪くて、何度も引っかかってしまう-そんな感じでした。

 帯に「WOWWOWでドラマ化(黒木メイサ主演)」と書いてありました。確かに、テレビの方がしっくり来るような気がします。可視的にすることで、過剰に説明的すぎるセリフ回しをシンプルにできるだろうし…。でも、やっばり、動機がイマイチかなぁ。


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