「すいかの匂い」 江國香織著 新潮文庫
ああ、この人、私と同世代の人なんだ―と強く実感する作品。多分、昭和30年代、40年代生まれの人であれば、「あの頃、そんなことがあった」「私の夏休みもこんなふうだったな」と必ず感じてしまうようなフレーズに溢れている。すっかり忘れていた幼稚園時代のちょっとした日常の光景がフラッシュバックしてくる。
音楽で言えば、シューマンの「子供の情景」のような作品。当たり前の日常を切り取りながら、そこには、当たり前ではない切なさとか、悲しさとか、残酷さが潜んでいる。
この人の一瞬を切り取る才能って、スゴイと思う。
でも、小説としては、私の好みでないな。一瞬、一瞬の光景が強烈すぎて、ストーリーが印象に残らなかった。
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